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『どうして? ってそりゃ俺の命が…… 』
シュンッ
「あれ? 消えた」
小夏は辺りを見渡したが半透明の涼太の姿はなかった。
「言い忘れておったわい」
「あれ? 閻魔大王、ってことはあの世に戻ってきたのか? 」
「言い忘れておったが、お前の使命や彼女の寿命の事を誰かに話すのはナシじゃからな」
「は? なんでだよ」
「そうでなきゃ面白くなかろう? 」
「面白くある必要ねえだろうが! 他人の命で遊ぶんじゃねえよ! 」
「つべこべ言わずにとっとと行け! それっ! 」
「きゃっ! また出た! 」
『ったくよー! あの野郎』
「ちょっとどういうつもり? まだ付きまとう訳? 」
『 " まだ " ってそりゃ俺の用事が済んでないから』
「だったら早くその用事とやらを済ませて成仏して下さい! 」
小夏は周囲に居る人達が自分のことを奇異な目で見ていることに気付き、顔を赤くして急ぎ足でその場を立ち去った。
黙って小夏の自宅アパートの前まで着いてきた涼太だったが、ふと事故後の自分の身体のことが心配になり、一度様子を見に行くことにした。
『おい、今日は帰るけど明日からヨロシクな、俺田上涼太』
「ヨロシクって全然ヨロシクないです! 出来れば二度と現れないで下さい!」
『日前宮小夏! 』
「な、何よ?…… 」
『君は30分後に首を吊る、そして40分後には火あぶりに! 』
「な、何? 脅してんの!? 」
『冗談だよ、これは未来から来たネコ型ロボットのお話、まあとにかくこれからヨロシクな! じゃあな、シュンッ…… あれっ? えいっ! あれ? なんだよ瞬間移動とか出来ねえのかよ! このっ! えいっ! 』
「あのぅ…… 私帰りますので…… 」
『えいっ! そりゃっ! ニンニンッ! ドロンッ! ちっくしょーーー! 』
『はぁ…… はぁ…… 結局歩いてるのと同じだけ疲れるのかよ…… まあ電車はタダで乗れたからラッキーだったけど…… やっと着いた』
事故現場まで戻って来た涼太だったが現場にはすでに四時間程前にあった事故の形跡などはほとんど無く、事故があったことも知らない人や車がいつもと変わらぬように往来していた。
涼太が実家に帰ろうかと迷っているちょうどその時、パトカーがやって来て警察官と一緒に一人の男がそのパトカーから降りてきた。
『あっ! アイツ俺を轢いた運転手だ! 』
涼太は一瞬にして事故の瞬間の記憶が甦った。
『自転車でバイトに向かってる時、たしか電話が鳴ったんだよな…… で、ポケットからスマホを取り出そうとして…… 自転車がフラフラとよろけて…… 車道に大きくはみ出して…… ドーン…… って俺が悪いよな? あちゃーー…… 運転手さんゴメンよ俺のせいで…… ところで…… 』
現場検証が始まったようで涼太は警察官の後ろに回り手元のバインダーに挟んである資料を覗き見た。
『被害者田上涼太アルバイト…… 天の川総合病院…… ここに運ばれているんだな』