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「閻魔大王? この地蔵が?」
「バカッ! 失礼だろ! 」
「奪衣婆よ、まあ良い、ワシは心が広いでな」
「さて、田上涼太よ」
「なんだよ」
ポカッ
「痛っ!」
「だから失礼だと言ってるだろう」
「まあ良いまあ良い、さて田上涼太よ、そなたは本来なら今日死ぬ予定ではなかったようじゃが、何かの手違いでここに来てしまったらしい、まあそれが何かは分からんし、別にどうでもいいことじゃ」
「は? 手違い? 手違いで死ぬの? 俺? 冗談じゃねえよ! だったらすぐに元の身体に戻してくれよ! 」
涼太は閻魔大王の化身であるお地蔵様に詰め寄った。
ポカッ
「だからやめんか!この罰あたりが! 」
奪衣婆と総務課の男性は興奮する涼太をなんとか二人掛りでお地蔵様から引き離した。
「ゼェ…… ゼェ…… コイツこのまま地獄に叩き落としてやろうか」
「閻魔大王様、私怨はお止めください」
総務課の男性が事務的に止めに入った。
「田上涼太よ! 魂を元の身体に戻すことは簡単なことではないのじゃ、余程の功績でも無い限りな! …… ん? そうじゃそう言えば、おい奪衣婆よ、ちょいとこのバッグからノートを出してくれんか? 」
閻魔大王であるお地蔵様は肩から下げていた赤いバッグの中を動かないその石の身体でアピールし、奪衣婆に指示をした。
「今日は14日じゃな、どれ14ページじゃ、開いてくれ」
奪衣婆はノートをパラパラとめくり閻魔大王に言われた14ページを開いて見せた。
「こちらですね」
「どれ、日前宮小夏…… よし! 田上涼太よ、これを見よ」
閻魔大王は目の前の空間にモニターを作りだし、そこにどこか見知らぬ街を映した。
どこにあるのかは分からないが閻魔大王の意志で動くそのカメラはだんだんとズームアップして行き一人の女性を捉えた。
「この娘じゃ、田上涼太よ! この日前宮小夏と言う娘は可哀想じゃが半年後に死ぬことになっておるのじゃ」
「…… 」
「そなたは今から下界へ行き、半年のうちに見事この娘の命を救ってみせるがよい! さすればそなたの魂を元の身体に戻してやろう! さあ行くのじゃ! 」
「…… 」
「ん? どうした早く行くのじゃ」
「何が「さあ行くのじゃ! 」だよ、勝手なことばかり言いやがって! なんか都合の良いこと言ってるけど自分達のミスを無かったことにしようとしてるだろ! 」
「ギクリ…… そ、そんな事はないぞ! さあ田上涼太よ行くのか? 行かないのか? 」
「ったくよー! 行くしかねえんだろう? 行くよ! その代わり何か特殊能力の一つでも付けてくれよな、何かねえのか? 時間を止めるだとか」
「ん? そなたのその目に見えない、壁でも何でも通り抜けることの出来る透けた身体、十分に特殊能力ではないか」
「は? この幽霊みたいなまんまで行くのか? 」
「当たり前じゃ」
「こんな格好で会いに行ったら皆恐がるだろうよ! 」
「ええい!やかましいさっさと行け、それ!」
痺れを切らした閻魔大王は目から光線のようなモノを放つと涼太を下界へと追いやってしまった。