悪魔:金を…
お読みいただきありがとうございます。
ふむ…
金が必要、ですか。
ええ、分かります。
金はいくらあっても足りないものです。
ブランド、株式、先物取引、為替、ギャンブル。
昔ながらの、異性、酒。
お大尽に遊べばいくらあっても足りません。
金を寄こせ、ですか?
あるように見えますか?
ああ、失敬。
金は私が欲しいくらいですよ。
実はね、先だっても金策に走り回ってましてね。
二丁目のお屋敷のご主人とお話したんですよ。
けんもほろろに断られましたがね。
その時ですよ。
まあ金はあるところにはあるんだと知りましたね!
あそこのご主人、書斎じゃなくて、床の間の掛け軸の裏に隠しておられたみたいですが、キラキラ輝いてましたよ。
何がって、ゴールドですよ。
金が積まれてましてね、見せつけられました。
うらやましいですな。
え?
息子さん?
ありゃ、これは余計なことを言ってしまいましたか?
ええ?
いや、感謝されてもねぇ。
息子さん、何とか金融ってところの社長さんでしょう?
え?
ご存じなかった?
何かね、電話をかけさせた後、人を使って振り込み先から集金するだけだとか。
羽振りがよくて、もう街の実業家って感じで。
襟に金バッジなんか付けてねぇ。
え?
用事ですか?
はあ、お気を付けて。
刃物は剥き出しで持っちゃ危ないですよ。
って、速いな。
もうあんなとこだ。
聞こえてないでしょうけど、全部使っちゃうと組への上納金がなくなるから、あなた方追い込みかけられて…
どうでもいいか。
私は悪魔なんだし。
いたるところに闇はありますね。