【登場人物一覧・解説】
【主人公】
■竹丘友慈
……主人公。(ストーリー開始当初)14歳、男。東京都清瀬市内に住み、市内の中学校に通っていた。後に東久留米市内の都立高校に、部活仲間たちとともに進学している。
運動ができて勉強の苦手な、割とステレオタイプな男子中学生。所属する陸上部では短距離走でエリートクラスの成績を出し、監督をして『エースのお前がいなければリレーで関東大会には行けない』と言わしめる実力を誇っていたものの、治療の過程で様々な機能障害を抱えてしまい続投が厳しくなったため、のちに退部している。部活仲間の山田や中西、畑は、普段の生活の中で最も仲のいい友達でもある。苦手な勉強の科目は理科だが、入院中に少しずつ勉強の癖がついたおかげで、今では人並みに問題が解けるようになった。料理の腕はあまり良くないことが、母親の美結によって明かされている。
表面的には前向きで楽観的な言動が多い。知らないことや知りたくないことにも懸命に立ち向かうなど、相応以上の勇気を持ってもいるが、本当はかなりの怖がりで、その恐怖を払うためについ無理をして頑張りすぎてしまう性格。理性的な自分と感情的な自分の間で葛藤することも多く、悪夢にうなされて夜中に目を覚ますことも珍しくない。初めて経験する孤独な病院生活の中で、冷静になってものを考えたり向き合う機会が格段に増えたせいか、退院する頃には入院前と比べてかなり大人びた性格に変わってきている。
恋愛経験が乏しく、同年代の女子との付き合い方が不器用なのを気にしている。同室患者の愛にすっかり惚れ込み、その境涯に同情の念を抱いて寄り添おうとする健気な一面もある一方で、夢の中で現れる愛の裏の姿にたびたび怯えていて、愛に対する感情は安定しなかった。最終的には自分の想いを伝え、また愛からの想いを受け止め、相思相愛の関係になっている。
愛とともに何度もトラブルや事件を起こしているおかげで病棟内での知名度は高く、特に看護助手たちからは慕われている存在。母親や部活仲間が頻繁に面会に訪れるので、友慈の病室だけが際立って賑やかであることも多い。主治医の伏見からは、愛との同室患者が友慈でよかったと感謝されている。
悪性脳腫瘍の疑いのある患者として東都病院に入院、二度の手術や放射線治療などを経て三か月後に退院。現在は複数の機能障害を抱えているものの、腫瘍そのものは寛解している。
■野塩愛
……ヒロイン。(ストーリー開始当初)14歳、女。
友慈のルームメイトの少女。脳腫瘍の治療のため、すでに一年半にわたって入院を続けており、病院内の散策中に警備員に発見されそうになった友慈を救出したことで親しくなる。病人にあるまじき昼夜逆転の生活、極端に少ない食事量、不自然なほど病院内の事情に通じていることなど、不思議な特徴を多く持っていたために友慈の関心を集めた。作業小屋同然に使用されていた病院敷地内の外気舎を『秘密の場所』と呼んでいて、深夜に忍び込んで遊んだり写真を撮ったり、夜空を見上げることが唯一の楽しみ。
小学生の時の交通事故で肉親と記憶を失ってしまった、父子家庭育ちの子供である。両親の不倫の結果として出生したため、祖父母からは疎んじられており、事故後には武蔵野市内の児童福祉施設に預けられていた。事故以前の記憶がほとんど欠損してしまった上、進学して間もなく脳腫瘍を発症して入院の流れになったので、中学校にはほとんど通っていない。写り込んだ人の“生きる力”が可視化される不思議なカメラを、父親の形見として大切に持ち続けているほか、自分自身も他人や自分の“生きる力”を目で見る能力がある。
余命を大幅に過ぎて生存しており、かつて同室だった患者が一人残らず命を落としてきたことから、『他の人の“生きる力”を吸い取って生きてきた』と自認している。見知らぬ友慈に大きな興味を抱き、仲良く接しようと振る舞うが、実際は自分の周囲で不幸ばかりが連続することに絶望し、自尊心が低く、周囲の人と仲良くなることで必死に安寧を得ようとする寂しがり屋な性格。寝惚けていると甘えん坊な部分も垣間見える。それまでは嫌なことから逃げ出し、顔を背けがちだったが、自分の腕で受け止めようとする友慈の姿にやがて胸を打たれ、友慈の危機に瀕して『自分自身で立ち向かおう』と姿勢を切り替えてゆく。その一方で行動力は人一倍あり、深夜の出歩きをものともせず、友慈に対しても愛情表現をあまり躊躇わない。
愛情を注がれてこなかった反動もあってか、友慈への信頼と好意は人一倍厚い。中盤では友慈の気持ちを聞かされ、そこで初めて自分の気持ちを整理し、自分が友慈のことをずっと前から好きだったことに気が付く。周囲の入院患者からは恐れられたものの、七病棟勤務の医師や看護師・看護助手の間では『余命破りの野塩愛』として名が通っており、それなりに愛される存在である。長年の付き合いである看護師の松山や、話の弾む友慈の母とは仲がいいが、苦痛の元凶である食事を運んでくる看護助手の室田のことは少し苦手。
脳腫瘍患者として入院、その後は全身に転移したガンと闘い続け、入院期間が三年近くに及んでようやく退院した。途中脳幹出血で半年間の昏睡を経ており、その際に一部の記憶に障害を負ってしまったほか、脳腫瘍の治療の過程で複数の機能障害を抱えている。
【病院関係者】
■伏見豊
……東都病院勤務の脳外科医。40代、男。
友慈と愛を担当する主治医。西東京市内の病院勤務後、渡米してカリフォルニア大学ロサンゼルス校の医科大学院で研鑽を積んでおり、病院内でも有数の確かな腕の持ち主である。専門は脳外科であるが、脳腫瘍を中心として多くの悪性腫瘍の患者を診てきた。勤務先の東都病院の経緯や過去についても、一定以上の知識を持っている。
患者に対する姿勢は真摯で、また友慈に対しては『昨日はたっぷりお叱りを受けたろ』として夜間の脱走のことを咎めないなど、非常に優しい接し方をする。患者を信頼することを大切にしており、時には愛の無茶な要求にも応じている。かつて自身の判断ミスで脳腫瘍患者を死なせてしまった過去があり、そのことを今でも激しく悔いていて、それゆえになりふり構わない手段を使ってでも『患者を生存させること』にこだわってしまう部分がある。
愛のことを最もよく理解する人物の一人であり、愛と友慈の関係についても薄々ながら察している上、外気舎での二人の交遊も容認している節がある。愛の持つ『“生きる力”が見える能力』『“生きる力”を他人から吸い取る能力』についても、当初は困惑したものの、現在では自分なりの解釈を持つに至っている。
■松山由実子
……七病棟勤務の看護師。40代、女。
愛と友慈を担当するプライマリーナース。そのため、二人が病室を移動になっても基本的には担当を外れることがない。他の看護師によって実施された健康状態の確認・管理を、一手に引き受けている。
難関大学の医学部保健学科出身のエリートで、二人の子供を持つ母親でもある。プライマリーナースという立場もあって、優しい性格の伏見とは対照的に規則に厳格で真面目な性格。ルールをたびたび破る愛や友慈にそのつど説教を加え、本気で怒っている時の顔は友慈をして『思い返すだけでも心臓が弱りそうになるほど怖かった』と言わしめた。しかしそうした姿勢は友慈たち患者を思うがゆえのことであり、友慈が自殺未遂事件を起こした時は自身の向き合い方に不足があったと深く責任を感じ続け、意識を回復させた友慈の前で思わず涙を見せた。同室患者が次々と命を落としていくことに胸を痛める愛を慈しむ姿も見せ、愛からの提案を受けた伏見が計画の実現に奔走している際には、その脇に立って様々な手助けをしている。
伏見同様、愛とはすでに知り合って長く、愛との扱いの差を友慈が感じる場面もある。
■室田侑
……七病棟南区スタッフステーション勤務の看護助手。50代、女。
甲高いおばさん笑いが特徴的な、七病棟南区の名物看護助手。七〇五病室には食事の配膳係として訪れるほか、友慈に説教を加えていた松山を通りがかりになだめたことで友慈と仲良くなってからは、何の用もないのに頻繁に病室に現れるようになっている。
七病棟北区の看護助手仲間である鴇田や公野とは特に親しく、彼女らから『南区スタッフステーションの元気のバロメーター』と目されている。担当区域内の患者たちを愛しており、元気に接することが楽しみな女性である。友慈からは慕われているが、食事が苦痛である愛からは恐怖の権化のような目を向けられており、本人もそれを自覚して愛にちょっかいを出している。自分の知っている患者に何かがあるとひどく落ち込み、場合によっては管轄外の病室であっても駆けつけようとしたりするなど、伏見たちとは違った意味で患者思いの人物である。
■下宿朋紀
……七病棟勤務の医師。30代、男。
様々な症状に対応することが可能な医師であり、重症の疾患を抱える患者が多い七病棟において頻繁に夜間当直医を務めている。昼間の勤務の際には、伏見のような主治医たちの補助的役割も果たしている。
外気舎崩落時の救出作戦後に友慈の健康状態の確認を担当したほか、早朝の頭痛で倒れた際にも友慈の容態を診断した。患者を気遣う発言を欠かさない、柔和な性格。
■鴇田成美
……七病棟北区スタッフステーション勤務の看護助手。50代、女。
病棟北区を対象に、配膳などの業務を担当している。室田を『侑ちゃん』と呼ぶなど仲が良く、入院して間もない頃から友慈とも顔見知りの仲である。室田と比較すれば賑やかではないが、患者のことを慮った言葉をかけてくれる人物である。
■公野桂子
……七病棟北区スタッフステーション勤務の看護助手。40代、女。
室田、鴇田と仲が良く、賑やかな看護助手のグループを形成している。そのかどで友慈とも知り合い、仲良くなっている。
■清戸英広
……七病棟北区スタッフステーション勤務の看護師。40代、男。
北区唯一の男性看護師。深夜時間帯の患者の容態急変への対応など、主に夜間の当直勤務に当たっている。
ルールの遵守を求める真面目な人物だが、寝付けずに起き出してきた友慈や愛に談話室での時間潰しを認めるなど、大目に見てくれる部分もある。眠れない人に対してたびたびホットミルクを薦めようとするのが特徴。
【家族・友人】
■竹丘美結
……友慈の母親。40代、女。
何かと心配性な主婦。友慈のもとへかなりの頻度で見舞いに来るほか、手術や治療の説明がある時にも必ず出向いており、後に愛とも仲良く話す仲になっている。
息子を心配する気持ちのあまり、何度も説明を要求したり確認を求めては、友慈の呆れや伏見の苦笑を買っている。もっとも、それは友慈に対する愛情の証でもあり、友慈が外気舎で命を落としかけた時や自殺未遂事件を起こした時などは、時には感情的になりながらも『自分の命を大切にしなさい』と懸命に言い聞かせている。
一方では回復の希望を捨てようとしない友慈の心境を察し、余命が告げられていることをいつまでも話すことができず、それがかえって友慈を傷付けてしまう結果となったことをひどく後悔してもいたが、後に『担当医をはぐらかして手術を行う』という伏見の提案に応じ、葛藤を抱えながらも友慈に真実を告げない道を選んだ。
愛に対する友慈の想いを早い段階から見抜いていた。愛が友慈のことを外気舎に連れ出した張本人であることは、最後の最後まで知らされていない。
■竹丘勇真
……友慈の父親。50代、男。
誠実さを大事にする会社員。自宅最寄りの清瀬駅から西武池袋線で都心に通勤しているサラリーマンで、それゆえ平日はほとんど面会に来ることができない。後に友慈が危篤に転じ、自殺未遂事件を企てるまでに至ってからは、有給休暇を取ってなるべく病室を訪れようとするようになった。
誤魔化すことを快く思わない性格。すでに中学二年生の終わりに差し掛かっている友慈のことを、母親の美結と違ってそれなりに大人扱いしている。そのため、友慈には『現実を知って、受け入れて、それをもとにして未来を決める権利がある』と主張し、余命のことを知らせるのを拒む美結と、友慈の知らないところで対立してきた。
食後はビールを煽るのが習慣。帰ってきて一番に頭をぽんぽんと叩かれることは、友慈の長年のお気に入りでもあった。
■山田昌広
……友慈の部活仲間。(ストーリー開始当初)14歳、男。
友慈と同じ中学・高校に通い、陸上部では投てき競技に挑む選手。大柄な体格の持ち主で、友慈からは『小太り』『ちょっと肥えた』と表現されている。
友慈の親友の一人。おっとりした優しい性格で、真っ先に友慈のことを慮る言葉を投げかけるのは大抵が山田である。しかしその性格が災いし、本人への相談を抜きにして友慈をリレーメンバーから外したことで、一度は友慈と対立してしまったこともあった。三人の中では涙もろい方でもある。
■中西孝介
……友慈の部活仲間。(ストーリー開始当初)14歳、男。
友慈と同じ中学・高校に通い、陸上部では跳躍競技に臨んでいる。友慈を含めた四人の中で最も容貌がよく、友慈からはもっぱら『イケメン』と評されているが、現時点で彼女はいない。最も勉学に長けている方でもあり、高校受験の際は一人だけハイレベルな学校を受験したものの落ちたため、結果的に同じ都立高校へと進学した。
クールで少しキザな性格の持ち主。四人でいる時にはブレーキ役のような立ち位置になるが、過度に冷静さを求めたことで友慈と仲違いをしてしまうこともある。
■畑亨則
……友慈の部活仲間。(ストーリー開始当初)14歳、男。
友慈と同じ中学・高校に通い、陸上部では長距離種目の選手として友慈の隣を走っている。
深刻な空気の中でも平然とくだらない発言のできる、マイペースな性格。友慈曰く『空気の読めない』『お気楽主義』であり、周囲から遅刻魔と認識されている上、部活中に遊んでばかりいて監督に怒られることが多々ある。しかしその空気の読めない性格が、時に対立しがちな他の三人の関係の緩衝材となっていることは、友慈本人が認めていることでもある。
『友慈に貸すため』と称し、病室に大量の漫画を持ち込んでいる。
■野塩仁
……愛の父親。50代、男。
両親に設定されていた許嫁と結ばれることを望まず、不倫の相手との間に愛を設けたものの、その相手に見捨てられてしまったため、愛を男手ひとつで11歳まで育て上げた。愛とともに交通事故に巻き込まれ、脳に重大な意識障害を負っており、事故から四年の歳月が経過した現在も植物状態にある。
本人が意識喪失の状態であり、かつ愛も父子家庭時代の記憶を失ってしまっているため、今となってはどのような人物だったのかを知ることはできない。愛の持っている一眼レフカメラは、もとは仁の持ち物である。
■野塩信
……愛の祖父。80代、男。
昏睡中の息子・仁と、脳腫瘍の療養中である孫娘・愛の入院費を負担している人物。一族の血を穢す存在である愛のことを『小賢しい小娘』と呼ぶなど嫌悪しており、愛からも来院時には必ず居留守を使われるなど、両者の関係は極めて険悪な状態にある。




