【余談編】
風呂井の手記:
またも天職探偵に助けられた。
ただし、彼にそのつもりはなかったのだろう。ただ近所の公園を散歩中、忘れ物を見つけて持ち主に届けたに過ぎない。
しかも、その持ち主の携帯電話からは私の声が聞こえてくるし、何故かスーツケースは受け取ってくれないし、そうやって押し問答しているうちに巡回中の捜査員が押し寄せてくるしと、彼にとっては混乱の極致だっただろう。
まあ犯人も犯人で、偶然通りかかった人物が私と知り合いだったり、爆弾の入ったスーツケースを手元に返されそうになったりと、パニックに陥っただろうが。
しかし、今回の一件で改めて分かったことがある。
もしも完全犯罪を成そうとするならば、絶対に天職探偵の目の届かないところで行わなければならない。
もちろん私には、それを生かす機会は今後も一生無いだろうが。
尚、今回捕まった犯人だが、目的はとある代議士への復讐。爆弾や爆破予告などは、全てそのための目くらましだったようだ。
ただし事が事だけに、詳細については捜査が進み次第、追って書き込むとする。
以上、『通行人Aの場合』でした。
しれっと街中に何かを仕掛けるとか、意外と難しいと思うんですよね。
誰がいつどこから見てるかなんて、確認してるつもりでも、案外分からないものですから。