待宵草
季節は移り変わって夏になった。夏休みになるまで晴樹は、昼になると屋上にいる私のところに来ていた。ターゲットについての情報は一向に集まらないが。
夏休みの半ば頃。私は、家族と一緒に家の屋上で流星群を見ていた。
「綺麗だね、準さん」
「そうだな。こうやって見るのもたまにはいいな」
隣でそんな声を聞きながら、私は流れる星を眺めていた。久しぶりの家族でのこういった時間。依頼の件で忙しくしてたり、学園に通ってたりでなかなか出来ずにいた。
「まったく…… いい歳なのに相変わらず仲が良いね」
「いいじゃない。カノンは誰か相手はいないの?」
「カノンはいないよな? いたら、俺が……」
そこまで言って母に叱られる父。だけど、今のところ私にはそんな相手はいない。晴樹は仲は良いと言っていいのかわからないけど、よく私と話していたりする。そんなことを考えていると、母が話しかけて来た。
「準さんの言ってることは、気にしなくていいからね。だけど、いつかカノンにもそういう人ができるといいと僕は思ってるからね」
「ありがとう、母さん。いつかできるといいな。父さんみたいな人以外で」
父が落ち込んだ気がするが、あまり見ないことにする。
「そんなこと言っちゃって。本当は父さんみたいな人がいいんじゃないの?」
「母さんには敵わないな」
「あなたの母親ですからね」
母はそう言って父のそばに行く。二人の背中は、私には大きくて頼もしく見える。まだ届かないけど、いつかはきっと。
家族でそうやって過ごしていると、空から何かが向かってくるのを感じた。だけど、それは敵ではなく、いつも感じていた魔力だった。
「何でこんな時に」
私は刀を空間から取り出して構える。それに合わせたかのように、相手が降ってきた。辺りに響く、金属がぶつかる音。私は自分の背後に壁を作り、なんとか相手を抑えることができた。相手は引いて、被っていたフードを外す。そこには、いつも通りの表情をした少女がいた。
「久しぶりね、カノン」