白雲木
次の日のお昼。昨日と同じように屋上で食べていると、また彼が来た。
「こんにちは。今日もいいかな?」
「どうぞ」
そして、昨日と同じように向かいに座って食べ始めた。
「ねえ、佳音さんは何でみんなとお昼を食べないの?」
「別にいいじゃない」
仕事が終われば、みんな私のことを忘れる。なら、必要以上に仲良くなることはしたくない。
「そんなことを言ってるあなたはどうなの?」
「俺は……」
そこで彼は黙ってしまう。私は、聞いてはいけないことを聞いた気がした。
「まだ入学したばかりだから、そんなに気にしなくても良いと思うけどね。私はこれからもここでお昼を食べるつもりだから、来たかったら来ればいいと思う」
素っ気なくそう伝える。だけど、一人が寂しいのは私もよくわかる。私も昔、学校で孤独だったから。
「ありがとう、佳音さん。また明日も来るよ」
「好きにすればいいでしょ」
そう答えて、残っていたお弁当を食べきり、そして手を合わせてから片付ける。
「ほら、あなたも早くしないと授業に遅刻するよ」
「今やるよ。佳音さん、俺のこと名前で呼んだことないね。俺にも名前があるんだけどな」
昨日会ったばかりの人を、名前で呼ぶのも無理がある。だけど、ここは呼んだ方があとで面倒にならない気がする。気は進まないけどやるしないかな。
「晴樹さん。これでいいでしょ?」
「うん、よろしくね。佳音さん」
そして、彼は教室へと向かった。残った私は、彼のことをこう思った。
「面倒」
嫌いではないけど、私は苦手なタイプの人だ。悪い人ではないと思うけど。そう思いつつ、私も教室に向かう。その間に昨日放った子猫たちがどうなっているのか、魔法で調査する。情報が私のところに来るとはいえ、どこにいるかまでは把握しづらい。なので、こうやって調べるしかないのだが。調査も終わり、特に問題もなさそうだった。そして、残りのつまらない授業が始まった。
次の日から毎日のようにお昼の時間になると、彼がやってくるようになったのは言うまでもない。