釣鐘水仙
つまらない授業も終わって、昼休み。屋上でわたしは、母が持たせてくれたお弁当を食べる。クラスの人には「天才」と言われるが、それは勘違い。彼等が受けている授業も魔法も、私はもう既にやったこと。だから、もう一度やってるだけのことであり、私は天才なんかではない。そう思われてるせいで、クラスからは浮いた存在になっている。そのおかげで、この時間は誰の目を気にすることなく人探しをすることができるのだけど。
今回の標的は「K」という人。相手について分かってるのは、この学園の卒業生であり白木蓮に所属しているということのみ。だけど、白木蓮は魔法での警備が厚くてなかなか侵入できずにいる。なので、まずはこの学園の情報から探してみようと思う。しかし、そう思った矢先に誰かが屋上にやって来た。
「あれ、先客がいたんだ」
扉の向こうから顔を出したのは、同じ学年と思われる男子生徒だった。
「僕も一緒に食べてもいいかな?」
「いいですよ」
「ありがとう。僕は一年C組の樫野晴樹。君は?」
「私は一年A組の水橋佳音です。よろしくお願いします」
「よろしくね、佳音さん」
そして彼は私の向かいに座り、昼食を食べ始めた。しばらくしてから食べ終わり、彼の方から話しかけてきた。
「ねえ、佳音さん。また、明日も来ていいかな?」
「何で私に聞くんですか。ここは私の場所じゃないですよ」
「それはそうなんだけどね」
「それより、そろそろ行きましょう。次の授業が始まりますよ」
言い終わると同時くらいに、予鈴のチャイムが鳴った。
「本当だ、行かないと。それじゃあ、またね。佳音さん」
手を振り走っていく彼を見送り、私もクラスへと向かう。残り二限。長くて面倒と思いつつ、私は足を進める。
「授業中に、この学園の情報を集めようかな」
そんなことを呟き、無演唱で魔法を発動させる。そして、手の平に乗るほどの小さな子猫を何匹か出して、学園の中に放つ。特殊な魔法なのでただの生物にしか見えないが、子猫が見たり聞いたりしたことは直接私のところへ来るようになってる。あとは、普通に授業を受ければ良い。私は止めた足を動かして、再びクラスへと向かった。