月桂樹
朝、目覚ましの音で目をました私は、まだ数回しか袖を通してない制服を着る。
「まさか、この歳になって着ることになるとは……」
学園には十五歳で通してあるが、実際には私は成人している。これも、仕事のための潜入調査になる。他の世界の人物は、そう簡単にこの学園には入れない。だけど、私と母とで記録を書き換えた。この世界は魔法が発達している分、機械があまり進んでいない。なので、書き換えは簡単だった。しかし、それも私が仕事を終わらせるまでの間のこと。仕事が終われば、私たち家族のことはこの世界の記録、人の記憶から抹消される。そして、私たちが来る前の世界に戻るだろう。
「カノン、起きてるの?」
「起きてるよ、今行く」
ドアの向こうの母の声にそう答え、私は部屋を出た。リビングでは父と母が座って待っていて、母の隣に私も座って朝食を食べ始めた。
「カノンの制服姿を見るの久しぶりね」
「そんなこと言っても、昨日も見たでしょ」
「そうだけど、いつも私服か仕事の上着を着てるじゃない」
「仕方ないでしょう。学校は何年も前に卒業しましたし。それより、聞くことがあるんじゃなくて?」
「わかってたんだね。それじゃあ聞くけど、早く終わりそう?」
母の問いに対して私は首を横に振る。
「そう……」
「まあ、焦らなくていいからな。カノン」
「わかってるよ、父さん。そろそろ時間だから行ってくるね」
席を立ち、仕事の藍色の上着を鞄に入れて靴を履く。
「いってらっしゃい」
両親に見送られて、学園への道を歩く。昼間は、学園の一人の生徒として。夜は代々受け継がれている役目、十六代目の死神として私は今日もこの道を歩く。