八重桜
昔、この世界では魔法を中心とした世界大戦があった。その戦争では、それぞれの国がそれぞれの魔法で戦っていたと聞く。自分たちの伝統を守るためなのか、それともまた別の理由か。その真意は今の私たちには知るすべはなかった。ただ一つ言えるのは、そういった歴史があったからこそ今があるということだ。そして、今生きている私たちもいつかはそういった歴史の一部になるのだろう。
始まりは、大戦が終わり半世紀が過ぎた地球とはまた別の世界。そこでは機械よりも魔法のほうが栄えており、それぞれの国にしかない魔法を今でも使うという。そして各国には騎士団のように国を保守する団があり、そこに入るための学園もある。団には国ごとに花の名前が付けられていて、同じ名前の団は存在しない。さらに、各団の先鋭を集めたところがある。それはどこの国でも行ける国境の無い団で、通称「白木蓮」と呼ばれる。白木蓮になれるのはほんの一握りの人達だけだが、学園の生徒はその一員になりたくて必死で勉強や運動に励んでいる。私もその一人になるだろう。
春。期待と不安を胸に抱き、春竜胆学園に入学した私は教師の長い話を聞きながらそんなことを考えてた。私、水橋佳音はこの学園に入学したが元々はこの世界の住人じゃない。正確に言えば、少し前まではこの世界にいなかった。「時空間を移動していたらここに辿り着いた」と言っても誰も信じてくれないでしょう。そんなことで私は数年前からこの世界に住んでいる。というより、仕事で来ているのだが。