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9/23

第7話 日々の生活と魔術修行の交渉

----改定履歴----

2013.09.17 誤字脱字を修正しました。

2017.02.18 話数の表記方法を変更しました。

 暑い。


 今年は暑い。


 いや、去年の夏の記憶はほとんど無いけど。

 生前に比べると暑いです。

 クーラーが無いからかもしれない。


 生まれてもう1年と少しが経っているようだ。

 どうやら、毎年誕生日を祝うという風習は無いようだ。

 サプライズか、と思ってずっとそ知らぬ振りして待ってたんだが、そもそもそんな感じが無い。


 むしろ、話題は異母兄弟であるネリス姉ちゃんの誕生日祝いの贈り物の話になってきている。



 軽くへこむ。

 どうして僕ではなく、ネリス姉ちゃんなのだろうか。


「フィルちゃんはどうする~?あまり凝った物は面倒だから~、お花でも摘んでみようか~?」

「ネリスお姉ちゃんの誕生日をお祝いするの~?」

「あれ~?ネリスちゃんはもうすぐ5歳なのよ~?おめでたいでしょう~?」


 うーん。説明になってない。

 つまり、5歳から祝うという事か?


「ヴァロム君も今年で10歳よね~」

「そうです」

「冬は物がないから~、工夫が必要よね~」


 うん?

 これまた異母兄弟のヴァロム兄さんもお祝いがあるのか。

 あれか。

 誕生日というのは、5歳ごとに祝うのか。

 そういう風習か。

 という事は、元服の制度があるのかな~。

 まぁ、式典や儀式があるようには思えないが。

 元服までなら、人生で3回しか祝ってもらえないという事か。

 うーん。

 コレはコレで貧乏人に優しい風習だな。



 何よりも、これはそれなりに重要なイベントらしい。

 まぁ、5年に1回だしな。

 それに5年生き残るのは難しいらしい。

 生前の日本に比べ、病死することが異常に多い。

 文化レベルが低いし、薬などもないだろうから、しょうがない。

 だから子供は多いに越したことはないという風習なんだろう。

 なんて良い風習だろう。

 でも子供が多いと養うのが大変だから、コレはコレで難しいな。

 まぁ、この田舎なら畑もあるし、食料には困らないだろう。

 塩と仕事先が大変そうだけど・・・。



 んでだ。

 ネリスお姉ちゃんがどんな娘か僕は知らない。

 顔を見ることも少ない。

 というか他の兄弟のことも知らないわけだが。


 まぁ、まだ1歳だし普通に会話するのはまだ早いだろうしな。

 本妻の子供より出来がよすぎるのも面倒なことになるから母さんも避けているんだろうな。

 もう少し大きくなれば良いだろうけど。


 兄弟のことで唯一分るのは、長男のウィレムは父親と一緒にいることが多い。

 毎朝、次男のヴァロムと一緒に木剣の稽古をしているみたいだ。

 たぶんヴァロムは独りでいることが多いから、勉強しているのだろう。

 ネリス姉とメアリ姉と、4歳と3歳だし一緒に遊んでいるのだろう。


 ネリス姉とメアリ姉は将来どうなるのだろうか。

 長男のウィレム兄は爵位を継承するのだろう。

 次男のヴァロム兄はどこかに就職するはずだ。

 もしかしたら、ウィレム兄の息子ができるまでは、もしものために領地から出られないとか制約があるのかな。

 江戸自体とかにはそういうのがあったっぽいしな。

 まぁ、知らんけど。


 ネリス姉とメアリ姉は爵位は無い訳で。

 政略結婚とかあるのかな。

 だけど、こんな田舎貴族というか吹けば消えるような貴族を嫁に貰う必要がある貴族なんていなさそうだが。

 そうなると領地内で分家となるのかな。

 分家って女子でもいいのか?

 でも、領地内の家格では一番高いはずだし。

 うーん、よう分らん。


 まぁ、今は兄弟と入っても異母兄弟だし顔はほとんど見ないし。

 ほぼ他人。

 あまり身内としての感覚がない。

 ようは割とどうでも良い。

 隣の建物に住んでいるのは事実だけど、付き合いがないと疎遠になるよね~。



 ◇◇◇◇



 今年の夏は暑い。

 そして雨が降らないらしい。


「こうも雨が降らないとね~、実りに影響が出てくるわね~」

「どうします?」

「溜池も干上がってるしね~」

「母さん、上水の水道管から水を溜池に流してどうでしょぅか」

「水量がまったく足りないわね~。無いよりはましだけど~。そもそも上水の貯水池も水がほとんど無いのよね~」


 え。飲み水まで無いのかよ~。


「今まではどうしてたの?」

「こんなに雨が降らないのは~、もう長いこと無かったみたいよ~」

「そのときの人口はもっと少なかったはずです。飲み水は川から汲んでいましたし、作付面積や家畜も少なかったでしょうから、川から汲んでいたのでしょう」

「そうよね~。川の水はまだあるから~、飲み水はなんとかなるとしても~、畑が問題よね~」


 たしかにな~。

 どうしたもんだろう。


「魔法で水を作ったらどうですか?」

「魔力で水などの物質を生成することを『具現化』や『実体化』と言うんですけど、術式への魔力供給が切れた時点で具現化された物質はなくなってしまいます」

「つまり~、魔力でお水を作って植物を育てても~、魔力が切れた時点で植物も枯れちゃうのよ~。正しくはもう植物として構成できない得体の知れないものになっていくのよ~」

「少量であれば、ほとんど影響はありません」

「簡単に言うと~、魔力で生成したお水を飲んでると~、病気になるのよ~」

「これは禁忌の1つです」


 禁忌ッスか。

 うーん。分らんでもない。

 魔力100%のレンガで家を造って、魔力が切れたらレンガが消えて、家が壊れちゃうっていうニュアンスでしょ。

 たぶん、これが分子とかそういう話になってくるんかな~?

 H2Oを生物が吸収して、化学反応で別の物質になってたけど、突然分子構造が壊れるわけだな。

 これは癌だな。

 ちがうか。


 こういうのがあるから、積極的に魔力を活用しようとしないわけだな、この世界は。


「昔は~、これが分ってなくて~、大量に奇病が発生して沢山人が亡くなったのよ~」

「これは今では暗殺の1つの手段となってます」


 おお、貴族の世界怖いな。


「まぁ~、教会の術じゃ~、そんなことは出来ないけどね~」

「母さん達なら出来るの?」

「私は大量には無理です」

「母さんは~、出来るわよ~。水を作り出すだけでしょ~。洪水になるぐらい作れるわよ~」


 やっぱり母さんはすごいな。

 なんか難しそうなことを簡単に言うし。


 まてまて。

 今は雨が少ないことへの対処だ。

 こういうのは人工的に雨を降らせればいいんでしょ。

 たしか、雲は下から暖めて、暖めた蒸気を冷やせば雲になるはず。


 下は直射日光で暑いからいいだろう。

 あとは上空を冷やせば・・・。


「母さん、物を冷やすことは出来る?」

「冷やす~?出来るわよ~」

「それって難しい?」

「物の大きさによるわ~。物に合わせて術式を考えないと~」

「術式って暖房に使ってたやつ?」

「そうよ~。でも~、それがどうかしたの~?」

「雨を降らそうと思ったんですが、無駄でした」


 空に魔方陣かけないし、書けても魔力流せないじゃん。


 後は、直接雲を作るか。

 そういえば、雲は粒子と水分と冷気が必要で、マイナス15度かマイナス20度ぐらいの温度が必要だったような気がする。

 人工降雨の原理ってたしかこんなんだよな~。

 あぁ、どのみち空を冷やすのか。

 無理だな。


 どうやって雨を降らすか。

 雨を降らして畑に水を。


 うーん。

 分りません。



 ◇◇◇◇



 うーん、と唸りながら、いつもの訓練をして過ごす。

 暑いだけで今まで通りに過ごしている。

 だけど、どうやって雨を話降らすか考察中。


 なかなか難しい。

 というよりも、これは本当に実現させて大丈夫な技術なのであろか。

 生前も人工降雨ってどっかのオリンピックで、事前に雨を降らせて当日は晴天にしたとか噂があった。

 つまり、人工降雨なんてすると状況は悪化するのではないだろうか。

 そう思うと、真剣に考えることが出来ない。


 やはり、別の手段を考える必要があると思う。


 今、直面している問題は何か。

 雨が降らないことによる水不足。

 溜池も干上がって収穫できない危機。


 つまり、アレだね。

 収穫できる程度に畑に水があればいいという事だ。

 じゃあ、単純に川から水を引けばいいんじゃないか?


 ここにも問題があるな。

 川の水量が非常に減っていること。

 川の水位がそもそも低いこと。


 そう考えると、溜池に水が合っても畑に撒けるのか?

 そこまで溜池はでかいのか?

 生前なら、散水する設備があるから問題ないけど。

 まぁ、そこはいいや。

 散水方法は別問題。

 まずは水量の確保だ。



 基本方針は、人工降雨ではなくて川から水量を確保する、という方向で。

 こうなるともう単純な科学知識でなんとかなりそうだな。

 いや、解決できるかは別問題だが。


 まずは、川の水源調査だな~。

 湧き水とか泉がどれくらいの数とその水量がどの程度か。

 あとは、自然ダムなどが出来ちゃっていないか。


 水量が分れば、川の水量と水源の水量くらべてどの程度減っているか、かな。

 減っていないのであれば、わからん。

 雪が降る地域だから、水源は安定していると思うんだけどな~。


 きっと減っているだろうから、その原因を探れば良いわけだ。

 蒸発量のほうが多いという結論であれば、日当たりが良いところとか目星をつけてレンガかなにかで風通し悪くして日光をさえぎればなんとか持ち直すでしょう。

 材料と手間が問題だが。



 調査を勧めにあたって、母さんになんと言えばよいだろうか。

 一応、まだ1歳の幼児なんで、言い方が難しい。

 あんまり言い過ぎると、ちょっと距離置かれそう。

 暖かい家族生活が崩れてしまう可能性が。

 探知能力の探知範囲が広すぎてで、すでにカノンが引き始めてる。


 あと、同行できるようにしなければ。

 実際に自分で見てみないと判断が出来ない。

 そもそも水量も計測機なんて無いだろうし。

 ここは生前の科学の知識と発想で対処するしかない、はずだ。



 素直に「水源を調べに行ってきてもいいですか」と言ってみようか。

 普通に許可が得られるかもしれない。いや、無いな。1歳児だし。

 あ、「一人で行けないので連れてってください」と言えばいいか。

 なんか上手く行くような気がする。



 ◇◇◇◇



 朝起きたら雨が降っていた。

 ものすごい大雨だ。

 あんなに考えたのが無駄になったじゃないか。

 雨降るなら事前に連絡してくれよ。

 考えた時間を返せ!


「これで水不足が解消されるわ~」

「そうですね」


 たしかに、そうなんだけどこの雨の量は大丈夫なのか。


「大雨だけど大丈夫なの?」

「大丈夫だと思うわ~。水不足なのて暫く無かったから~、貯水池よりも貯水堰堤でも考えたほうが良いのかからしね~」

「人口や動物とが増えると水の確保は必要ですし、安定した水の確保もした方が良いでしょう。井戸とかも考えてみてはどうでしょう」

「飲み水なら~、もっと井戸掘ったいいかもしれないけど~、ここは水源があるから~、井戸よりも川からとったほうが良いわよ~」


 堰堤(えんてい)って、要はダムでしょ。

 堰堤賛成。

 かっこいいじゃん。

 堰堤といえば、魚釣りじゃない?

 魚釣りの趣味は無かったけど。

 魚といえば、堰堤にも魚道がない生態系が崩れるから、と僕としては譲れないポイントだよ。


「堰堤作るなら、魚道作って欲しいです」

「魚道、ですか?」

「よく知っているわね~。さすがフィルちゃん~。魚道って言うのは~、魚が遡上するための道っていう意味よ~」


 危ない。

 不用意に単語を使うべきではないな。

 つーか、母さんは一体何者なんだ・・・。

 何でも知ってるよな。



 ◇◇◇◇



 暑いので地下で過ごすことが多い。

 だって涼しいから。


 でも、暇だから例の暖房の術式をずっと眺めている。

 少しでも術式の理解が出来ないか、と。


 もう1歳とちょっと。

 そろそろ魔法?魔術?を教えてくれないだろうか。

 そもそもなぜ魔力向上と魔力制御のみなのだろうか。

 こっそりと自己流の身体能力の強化的なモノは練習している訳だが。

 聞いてもいいものだろうか。

 うーん。

 藪をつついて蛇がでてこないかな。

 なにか言質が欲しい。

 6歳から教えてくれる、とか。

 まぁ、あと5年も待てるかという問題はあるが。


 もう少し様子を見ますか。


 とは言っても、自己流ながら暖房の術式を解析している。

 解析とは言いつつ、ほとんど分っていない。

 魔力が流れて、円を形成しないと動かなかった。

 円の中心部の文様まで行くと術式が発動した感覚があった。

 魔力を「熱」に変換しているであろう中心部の文様。

 中心部からレンガに対して熱移動しているように感じた。

 コレぐらいは分っている。


 魔力から熱に変換していること。

 熱が移動していること。

 この2つがポイントですね。

 他の文様意味は分らない。

 意味は無いのか、元々のペースとなった文様のままなのか。


 魔法って火の精霊が・・・というイメージなんだが、これは違うのかな。

 属性とかっていうのは無いのかな。

 漫画の読みすぎか・・・。


 まぁそれはそれとして。

 いつまで様子見ていいか分らんからな~。

 タイミングを見計らって聞いてみるかな~。



 ◇◇◇◇



「母さん、術を教えてください」

「どうしたの~、急に~」

「そろそろ基礎から学ぶ良い時期じゃないかと思うんですけど」

「普通は6歳に魔力を判定してから学ぶものです」

「でも、魔力があることは確定しているし、魔力量も制御もそれなりに向上している気がします。術の基礎を学ぶには良い時期になったんじゃないかと思います」

「そうね~」

「何か問題がありますか?」

「問題ね~。あるといえばあるけど~。時間が解決するのか~、と言われるとそうではないのだけど~」

「では、教えてください。母さん」

「う~ん。コレだけは言わせてね~。」

「はい」

「母さんやカノンが使うのは~、『魔法』じゃなくて『魔術』なのよ~」

「はい」

「世間では~、全員と言ってもいいほど~、みんなが『魔法』を使って~、『魔術』は『邪法』とされているのよ~」

「ほ、ほぉ」

「簡単に言うと~、迫害されている術って事なのよ~」

「どうして?」

「『魔法』って言うのは~、基本的には聖十字教が定めた法典に則った術を示すのよ~。聖十字教は~、自分達以外は邪教とか異端者として~、排除する考えがあってね~。それに賛同する人が沢山いるのよ~。だから~、この術を学ぶのは覚悟がいるのよ~」

「『魔法』と『魔術』は両方使えたりしないの?人前では『魔法』で、独りのときは『魔術』とかして使え分けたり・・・」

「出来ないわね~。少なくても母さん達では誰一人できなかったわ~。たぶんね~、『魔法』は聖十字教が考える『魔法理論』に則って術が発動するわけだけど~、『魔術』は全く異なる『魔導理論』で術が発動してね~、どうもこの2つの考え方は共存できないのよ~」

「う~ん?」

「例えばね~。分りやすいのは~、『魔法』では四大元素の『火の元素』を魔力で変換するのだけど~、母さんの『魔術』では~、色々方法があるんだけど~、簡単なのは魔力を『熱』と『可燃物』の2つに変換するのよ~、そうすると火が起きるのよ~」

「なるほど?」

「母さんも最初は~、『火の元素』を使ってたんだけど~、すぐに限界を感じてね~。師匠から『魔術』を教えてもらってね~。『魔術』では、『火の元素』という考えが無いのよ~。そうすると~、もう『火の元素』が変換できなくなったのよ~」

「あぁ、なんとなく分りました」

「だからね~。『魔法』と『魔術』は共存できなくて~、そして『魔術』は相当な覚悟が要るのよ~。だから~、それが理解できる年齢まで教えたくなかったのよ~」

「母さんはなぜ『魔法』から『魔術』に勉強しなおしたんですか?」

「そうね~。迷宮で兄弟子と一緒に戦っていると~、戦い方の幅が~、どうして『魔術』のほうが優れている様に感じるのよ~。『魔法』は使いやすいけど~、どうも母さんの戦い方に合わないに感じるのよ~」

「じゃあ、僕も『魔術』が使いたいです」

「『魔術』は難しいし~、覚えても~、世間からの評判は悪いわよ~」

「それで問題ないです。世間の目は大して気にしません。というより、堂々としていればいいのです。堂々と出来るだけの実績があればいいのです」

「そうだけど~」

「母さんが書いている本や、地下室の術式などはそういう目的もあるのでしょう?」

「まぁ~、そうだけど~」

「僕は迷宮で戦ってみたいです。それに死にたくないですから、強くなっておかなければなりません。強くなるためには母さんが修めた『魔術』が良いです。それに、母さん達の生活が少しでも楽になる様にお金も稼ぎたいんです。そのためには『魔術』で何か作りたいんです」


 魔力で動く飛行機とかいいよね~。

 ロボットとか、地味にあこがれるな~。

 後はどうにかして貴族にでもなって、一夫多妻制に参加したいです!

 言わないけど。

 あと一押しいるか?


「それに、世界をもっと知りたいです。そのためにも強さと知識が必要です」

「フィル坊ちゃん」

「はい?」

「本当にいいんですか?フィル坊ちゃんはまだ1歳ですし、外の世界を知らないはずです。外の世界を知ってからでもよいのではないでしょうか?」

「では、逆に聞きます。外の世界を知ることが出来るのはいつですか?そこから『魔術』を修めるのに必要な時間はどれくらいでしょうか?僕は遥か高みを目指したいと思っています。それには長い時間が必要だと思うのです。あまり不用意な時間を過ごすのは効率で気ではないと思います」

「それは・・・」

「カノンの負け~」

「はい」

「では、教えてください」

「わかったわ~。その前に~、今後のことも考えましょう~」

「はい」

「6歳まで~、母さんがすべて教えてあげるわ~」

「はい」

「もう少し体が大きくなったら、私が剣術を教えます」

「はい」

「それから~、ルートヴィルト辺境伯のところの学校に行きなさい~」

「学校ですか?」

「もっと世界を知りたいのよね~?」

「はい」

「迷宮に行くにも、他の知識を学ぶにしろ、もっと多人数で学ぶべきだと私は思います」

「そうね~。母さんには師匠と兄弟弟子が沢山いたから~、色んなことを学んだり教えたわ~。フィルちゃんには、師匠がいない代わりに学校で学ぶべきよ~」

「親元で学べないものが沢山学べるはずです」

「分りました」


 なるほど、義務教育はなくて自主的に学校に行くのか。

 ここには教会が無いけど、子供は教会で学ぶのかな。

 まあ、学校自体に入ってみたかったし、問題ない。

 学年トップくらいを目指してやるぜ!



「ルートヴィルト辺境伯には、私から連絡しておくわ~。だから~、お金のことはや父上のことは気にしなくていいわ~」

「長男や次男でなくてよかったですね、フィル坊ちゃん」

「え?」

「長男は~、爵位の継承があるから~、それほど自由に行動できないのよ~。次男は可哀想よ~。ここは継承する爵位がないけど~、不測の事態に備えて領内で生活することになるから~、有力者と政略結婚しかないからね~」

「有力者?」

「農業組合長のところか~、酪農組合長のところかな~。あぁ~、ダイアーク・マイヤのところかもね~」

「ダイアーク・マイヤ?」

「昔から領主の補佐をしている家の家長です」

「何かと策をめぐらせる~、何を考えているかよくわからない男なのよね~」


 そうだよね~。そんな気はしていたよ。

 兄さん達も大変だな~。


「じゃあ~、これからは、朝と夜は今までと同じで、昼間に術を教えるわ~」

「分りました。ありがとうございます」

「厳しく行くわよ~」



 うむ。

 無事に交渉が成立した。

 これならもっと早くから交渉しておけばよかったな。

 ただ、迫害ですか。

 そんな覚悟は実は無かったりするけど、ここではそれ以外は学べないし、しょうがない。

 覚悟の程は実家を出るまでにつけよう。

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