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  閑話 リリビアの修行時代1(2)

「土の結界」


「助かったよ」

「どういたしまして~」

「なんでこんな事に・・・」

「ドドリム兄さんが言うのが遅いからです~」

「いや、そういう事ではなくて・・・」


 先ほど、巨人族らしい手が横穴から出てきて私たちを捕まえようと手が伸びてきて、床を叩いたんです~。

 その勢いで、床が壊れて二人そろって落下しちゃいました~。

 落下の衝撃は障壁で多少は緩和されたんですけどね~。

 流石にゼロには出来ないので、意識が飛びそうでした~。

 でも、意識があるので結界で落下物から身を守ってます~。


「まさか2重苦になっていたとはな」

「あぁ~、シアバーンと床の崩壊ですか~」

「他の連中も全部コレでやられてたんだろうな」

「でしょうね~」

「という事は・・・」

「ゾンビとか~、グールとか~?」

「スケルトンとかもな」

「レイスもですかね~」

「レイスは珍しいし、今の俺たちではどうしようもないから無視だ」

「ですね~」

「結界の外の具合はわかるか?」

「瓦礫のことなら少なそうですわ~」

「当面の安全を確保しよう。結界の一部だけを解除できるか」

「どうぞ~」


 意識して、結界の前部分の4分の1を解除してみました~。

「器用だな」

「そうですか~。ドドリム兄さんの方が器用に思えますけど~」

「今のところ敵は確認できないな。静かなものだ。暗いけど」


「こんにちは」

「!!?」

「!!?」


「驚かしてごめんなさい。僕のアルトという魔法使いのゾンビです」

「はぁ~??」

「・・・あなたはまだ意識があるんですね?」

「はい。そこそこの魔法使いなので何とか意識を保っています」

「そうですか~。すごいですね~」

「うーん、そうなんですけど、驚かないんですね~」

「知識として、そういう人がいることは知ってます」

「いや、『魔法使いアルト』ってそれなりに知名度があるんですけどね・・・」

「魔法使いってことは教会の術を使う方ですね?」

「そうですけど。という事は、それは魔術のほうですか?」

「そうですよ~」

「なるほど、合点がいきました。道理で知らないわけだ。ってことはもしかして・・・」

「神聖魔法は使えませんね~。ごめんなさい~」

「うーん。そうか、期待したけどしょうがないですね」

「自力で成仏してください~」

「それが出来たら彼はもう成仏しているわけですけどね・・・」

「では、僕はコレで失礼します」

「はい~、お元気で~」

「ちょ、ちょっと待ってください」

「何でしょうか?」

「少しお話聞かせてくれませんか?」

「あぁ、此処から出たいんですね」

「はい~、そうなんですよ~」

「道はご存じないですか?」

「出口までの道は知りません。落ちてから外に出たこと無いので」

「そうですか・・・」

「どこまでの道なら知っていますか~?」

「上の広場に戻る場所までなら知っていますよ。なんなら案内しましょうか?」

「お願いします」



 なんかいい人ですね~。ほとんど臭わないですし~。


「こんなこと聞くのも何なんですけど、死んでからどれくらい経過しているんですか?」

「さぁ。ここにいると時間の無いんですよね。ただ、仲間はみな意識が保てず『死にました』ので、半年はたっているはずです」

「ありがとうございます」

「他の人たちは皆供養しましたのでゾンビとかは出ないですよ」

「あら~?神聖魔法が使えるんですか~?」

「使えますよ。ただし残りの魔力では自分は浄化厳しいですね。そもそも自分を浄化できるのかわかりませんけど」

「確かに実証された方はいませんね、記録上は」

「そもそも今すぐの浄化は望んでいません」

「そうですよね~。そうでなければこんなに意識保っていられませんよね~」

「不躾ですが、願いをかなえることは私たちに可能であれば、かなえたいと思います」

「そういっていただけると助かります。ですが、あなたたちを見極めてからでも遅くは無いとおもいます」


 何かしら~。言い方が妙ですわ~。

 ドドリム兄さん、もう少しやんわりと警戒してくださらないかしら~。

 あからさまに警戒しちゃうと、相手から情報引き出せないと思いますし~、信用されないのでは~?


「いや、別に攻撃をしようとか罠にはめようという訳ではないんですよ」

「すいません」

「確かに最初は実力に不信感はありました。上での戦闘が短時間ですぐに落ちてきましたし。ですが、あなた達を見て考え方が変わりました。逆なんですね。あなた達は相当に強い、状況判断も良い」

「あんな短時間で、しかもたった二人でシアバーンを倒すとは、私達の旅団より相当強いです」

「そうですね~」

「おいこら。そんな事言うじゃない」

「いえいえ。現に私は死んでますから・・・」



 雰囲気が悪くなって~、アルトさんは何も話さなくなってしまいました~。

 ドドリム兄さんが余計な突っ込みをしたからですわ~。

 ただ、私はなんか面倒な話になってきたので、もう良いんですけど~。

 余計に関らないほうがいい気がするのです~。



「向こうにオークが沢山います」

「では、私が片付けます」

「いいんですの~?」

「お前は切り札だ。コレぐらいなら僕がやる」

「はい~」


「■■■■■■、身体能力強化」


 奇襲ですからすぐに片がつくでしょうね~。


「何を考えているんですか~?」

「お嬢ちゃんにはほんと驚かされる。まだ小さいのにもう色々と理解しているようだ」


 そうかしら~?

 この人をあまり信用していないのは確かですね~。

 もうこの人の信用は勝ち取っていて~、何かを託送としているとのは分かりますけど~、それ以上のことはさっぱりですよ~?

 害意はなさそうだから~、遺書を家族に届けてとかだったりするのかしらね~。

 でもそれって面倒よね~。

 ここから遠かったらどうするのかしら~。

 流石に、遺書を貰っておいて反古には出来ないわ~。

 じゃあ、そもそも貰わない方が良いじゃない~。

 ドドリム兄さん、軍務かなにかの官職に着こうとしているのに、人がいいのよね~。

 悪くは無いけど~、遺書なんてそんな重い面倒はごめんだわ~。



「お待たせ」

「流石ですね、もう終わったんですか」

「はい。この程度、一捻りです」


 歩いていくと、ほんとに一捻りですわ~。

 よくオークの首を捻るなんて発想ができますわ~。

 臭いですし~。



「此処から暫くオークやウルクが続くけど大丈夫?」

「はい。駄目なようならリリビアと交代します」

「オークは嫌です~」

「近づかれる前に殺れ」

「はいです~」


 状況が厳しいのは知ってますけど~。

 アルトなる人をそんなに信用して良いものしら~。

 すごく不思議なの~。

 ドドリム兄さんが何でこんなに信用しているのかしら~。

 なにか気が付いていらっしゃる~?


「差し出がましいけど、ドドリム君、ちょっと良いかな」

「何でしょうか」

「魔術を使うのに、普段から徒手空拳を使うのかい?」

「はい、私達は常に一人で何でもできることを目指しています。ですので接近戦も難なくこなす必要がありまして、その接近戦を無手でしているのです。武器も使うことはありますが、自ら持参するのはナイフぐらいです。ほかはその辺から拾ったり相手から奪ったりして状況に応じて戦います」

「君は優秀だ!それはすばらしい」

「どうも、ありがとうございます」

「無手が基本なら、龍門を開いて氣を使ったほうが効果的だよ」

「氣ですか・・・」

「簡単に言うと、体力と魔力を合わせて氣という力に変換するんだよ。その氣で身体能力強化をすると少ない魔力でも効果が期待できるというわけさ」

「聞いたこと無いですわ~」

「それはお嬢ちゃんがまだまだ子供だからだよ。小さいと体力がないからあまり教えることは無いんだ」

「体力か無くなるとどうなりますか?」

「もちろん死んじゃう。生きていくための力がなくなるんだから」

「え?」

「でもそこは前兆があるから大丈夫。君ぐらい体力があると、途中で疲労感が大分出てくるから、それを目安にやめれば良いんだよ。魔力切れより危険があるのは事実だ」

「うーん、なるほど」

「詳しくは自分ところの師匠に聞いてみると良いよ。いるんだろ、師匠」

「あ。はい」

「じゃあ、もう少し説明すると、龍門は7門あるんだよ。その7門のどの門を開けるか、注ぎ込む魔力をどうするかで氣が変わるとされている。で、基本の龍門はここだよ」


「!!?」

「きゃ!?」


 なんなの、この人~。

 急に変なところ触ってるじゃない~。


「あ、そこですか。吃驚したじゃないですか~」

「言葉だと伝わらないと思って。すまないね~」


 何を言っているの~?

 なにかいやらしいですわ~。


「言葉で言うと『肛門と性器の間』が正しいんだけど、こんなところ普通は意識しないから分からないんだよ」

「た、確かにそうですね」


 うん~。分かるような分らないような~。


「そこに少し魔力を集中させて」

「はい」

「次に体力を集中させるわけだけど、感覚的には『血を集中させる』かな~」

「や、やってみます」


 なんですか、「血を集中させる」って~。

 そんな感覚分らないですわ~。


「血を集中させる・・・」

「あ」

「え」


「すばらしい!開門しましたね。開門だけで数週間から何年も修行をこなす必要があるのに。体の精密な制御が上手い。よい師匠ですね。教え方が上手い」

「あ、いや・・・。ありがとうございます」


 器用すぎますわ~。

 私にはできません~。

 にしても、この人もしかして・・・。


「いきなり戦闘はしないでくださいね。氣は常に龍門を開いておく必要がありますから。あと、氣の扱い方は魔力とそう変わりません。一番違うのは、体力を混ぜているからか体の動作によく追従します」

「というと?」

「つまり術式は体を利用するほうがよい、という事です。つまり、武術向きということですね」

「詠唱して操作したり、魔方陣で操作したりっていうのは不向きであるってことですか?」

「そうですね。少なくとも私はそう思っていますよ。なにぶん、魔法使いなので、これ以上は分らないです。申し訳ない」

「いえいえ、ありがとうございます」

「身体能力強化意外に~、どんな利用法があるんですか~」

「そうですね。氣を通すことができるので、ちょっと手品じみたことができるのです。いわゆる打撃による『遠当て』であったり、『内部破壊』が有名どころですね」

「重量をほぼゼロにしたり、対物理障壁を体内で生成したりもできるようです。これ以上は分りませんね~」

「ありがとうございす」

「ありがとうです~」


 どこまで真実か分りませんけど~、なかなかの興味深い分野ですわ~。

 でも~、私に使えないのならとりあえずどうでも良いかしら~。


「では、そろそろ次に行きましょうか」

「はい」



 ◇◇◇◇



「横一閃!」


「面倒ですわ~。横一閃!」



 いつも間にか私がずっと戦ってますわ~。

 魔力の消費を少なく切り付けたほうが良いのでしょうけど~、無理ですわ~。

 数が少ないなら~、一振りで片付けたほうが安全ですわ~、私の精神的に~。


「いや、何度見てもすばらしいです」

「なんです~?」

「その魔法剣ですよ」

「魔術ですけど~」

「いや、今のところ教会的には魔術をあんまり好意的じゃないから、剣に効果を付加した状態をすべて『魔法剣』って表現するんですよ」

「そうですか~」


 面倒ですわね~、教会って~。


「魔術だから多少は違うのだろうけど、剣に光の精霊を宿して、斬撃から光の精霊を斬撃として撃つ。精霊は斬撃の特性として飛ばすので魔力を消費せずに精霊を具現化させ続けている。更に撃つには剣の振りと共に撃つので、撃つ際にも魔力の消費が抑えられている」

「斬撃だから、集める精霊、つまり魔力の消費も少ないのか。それであの威力。すばらしい」

「それは~、どうも~」


 褒められて~、悪い気はしないですわ~。

 ただ~、体力と神経使うので疲れるのよね~。

 魔力はまだまだ大量にあるから~、そもそもあまり節約すること無いんですけどね~。

 先に集中力が切れそうですわ~。


「お嬢さんは、化けも・・・。うーん、とんでもない才能の固まりだねぇ~。まさに魔力の塊だね。その歳でこの魔力量。いずれ『最強』と言われる域にまで達するでしょうね」

「あら~、煽てても何もできませんわよ~。まだ子供なんで~」

「いや、魔力の塊でも、体力は人並みだね」

「それが普通なのでは~」

「僕が言いたいのは、魔力の消費を気にして体力を使うことが非効率だと思ってね」

「というと~?」

「君の魔法剣は、一般常識からすると最適解かもしれないけど、魔力を余して体力が先に切れるならどの道戦えないよね?」

「言われてみれば確かにそうですね」

「そうですわね~」

「だから、もっと身体強化と魔法剣のときの魔力にもっと頼るべきだ」

「う~ん~、なるほど~」


 確かに言われてみれば合理的ですわ~。

 一般論では~、魔力の消費を抑えて効果を出すのが良い術と言えるのだけど~、私の場合は違いますわ~。

 そうね~。

 それなら~、試したほうがいいわね~。



 ◇◇◇◇



「ここはすこし広いな」

「ここを抜けたら、あの大広場のはずだよ。」

「シアバーンがいます~」

「ああ、1体いますね」

「サクッと~、殺ってきます~」


 さて、早速試してみましょうか。

 シアバーンって意外にすばやいから~、コレはチョット本気の勢いでやりますか~。


「(集中)はぁぁぁ。(行け)一閃!!」



 シュュュュパァァァッ!!



「まぁ~、成功です~」

「すばらしい。その一言しかない」

「ですね。お見事、リリビア」


 ちょっと威力が強すぎましたね~。

 壁までザックリ行ってます~。

 バスタードソードを振りぬく前に~、すでに壁が切れてた気がします~。

 魔力でも「撃つ」のを補助したんだけどね~。

 高速に撃ちすぎたかしら~。

 次はバスタードソードにもう少し魔力を込めてみようかしら~。



 ◇◇◇◇



「ここでお別れです」

「ありがとう~」

「ありがとうございました」

「いえいえ。崩落した床はまだ直ってないので、壁際を進んでください」

「はい~」

「何か遣り残した事は無いですか?」

「・・・師匠に『アルトはここで仲間を看取って死にました』と・・・『師匠の教えに背きました。けど後悔はありません。』と伝えてください」

「分りました。必ず伝えます。短い間ですが、ありがとうございました」

「いえ。私も立派な弟弟子に会えて満足です。師匠の教えは立派です。私は不肖でしたが、あなた方なら立派な術士になれるでしょう」

「ありかどうございます~」


 なるほど~。兄弟子さんでしたか~。

 ドドリム兄さんはなんでわかったのかしら~。

 アルトさんもどうして分ったのかしら~。

 私一人着いていけないです~。


「私は同胞の元に戻ります。そこで自分で神聖魔法使って消えさせていただきます」

「え~?」

「実はもう実証済みなんです。旅団には3人いましたので・・・」

「そうなんですね・・・」


 うーん。暗いなぁ~。

 いや~、死人の話だからね~、分らないわけではないんですけど~。


「では~、最後に私達の雄姿を見ていってください~」

「そうしてください」

「分りました。ありがとう」

「全力で行きますわ~」

「行くぞ」


「■■■■■■、身体能力強化」

「(身体能力強化)(加速術)」


「(土の弾丸の射手・集束・43矢の連弾)(土の弾丸の射手・集束・43矢の連弾)」


 足場確保ですわ~。


「あの巨人の手が出てきたぞ!」


 もう来ましたか~。

 他の魔物はあまり出てこないですわね~。

 これはチャンス~!?


 あの足場から一気に行きますわ~。


 正面にあの拳~。


「ふぅ(集中)」


 劣化版の「一閃」ではなくて~、本来の魔法剣をお見せします~。


「(雷の発生)、(電圧の上昇)」


「烈閃!!」


「二の太刀、縦一閃!」


 予想以上の雷光に~、ちょっと吃驚ですわ~。

 壁ごと横に穿つように一文字の字を刻みました~。

 もちろん腕と拳も横に真っ二つですわ~。

 そして焼け焦げてます~。

 壁から出していた部分で~、腕を切り離してます~。

 縦一閃が発動して切断できてますわね~。



「ドドリム兄さん~、このまま突っ切りますよ~」

「応!」



 ◇◇◇◇



「横一閃」


「横一閃」


 このまま~、全力で出口に向かいますわ~。

 もう雑魚しかいないのは分ってますし~。


「・・・」


 ドドリム兄さんは~、何も言わずに着いてきます~。

 気持ちは分りますわ~。



 ◇◇◇◇



「出口です~」


 出口から飛び出すように出ましたら~。

 ちょうど朝日が昇るところだったようです~。

 無事に戻ってこれました~。


「永かったですわ~」

「そうだな~」


 実際には~、迷宮内を爆走したわけですので~、すごく短い時間のはずなんですけどね~。

 アルト兄さんのせいで~、何か感傷的な気分です~。


「リリビアは野営に戻って先に休め。僕は師匠に報告と、アルト兄さんの遺言を伝えてくる」

「分りましたわ~」



 ◇◇◇◇



「ご苦労様ですわ~」


 見張りの兄弟弟子に挨拶ですわ~。



 兄弟弟子を亡くす度に思うのです~。

 私はどんな状況でも帰ってこれる強さを見つける、と~。

 兄弟弟子を死なせない、と~。

 そして~、もう泣かない、と~。


 でも~、独りになると悲しみがこみ上げてきます~。

 まだまだ~、私は子供なんだと実感するです~。


 みんなが起きる前に~、今日は少しだけ泣きます~。

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