閑話 リリビアの修行時代1(1)
今回はリリビアの視点で語っています。
本文に設定の説明が無いですが、リリビアがまだ9歳ぐらいです。
この時点ですでにかなり強いです。
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2013.08.12 タイトルを字下げしました。
私は~、リリビア~。
家名は捨てました~。
だからただのリリビアなんです~。
今は迷宮の奥地。
この迷宮はまだ若いです~。
もうすぐ未開拓の領域に入るわ~。
「ドドリム兄さん~、遅いです~」
「いや~、リリビアの身体能力の強化はすごいな」
「ドドリム兄さんが軟弱なんです~」
「おっと手厳しいな。あんまり兄弟子を敬う気持ちは無いよな」
「いいえ~。大変助かってますよ~。雑用が減るので~」
「うーん。意味が違う」
◇◇◇◇
「前回は此処までくるのに1日かけて来たけど、最短距離を全力で疾走すればすぐだな」
「私は全力じゃないですよ~」
「あぁ、そうかい」
「若手の弟子たちは、今頃、入り口付近で恐怖と戦ってるんだろうな~」
「師匠がいるから死なないわよ~」
「いや、そこを心配しているわけではなくてね・・・」
「アレぐらい超えていただかないと~、まともに話も出来ないですよね~」
「迷宮入ると上から目線だよな・・・」
「さて、まだ昼前だと思うが1度此処で休憩しよう」
「あら~?ドドリム兄さんも~、まだ全然疲れてないですよね~?」
「ああ、確かに。だが今日はちょっと様子がおかしい。いつもより安全に行かせてもらう」
「そう~。何が気になんですか~?」
「この迷宮の情報が此処までしかないって言うのがおかしい」
「そうかしら~?」
「大金出しているのに情報屋は此処までしか情報は無いと残念がっていた。」
「よくわからないわ~」
「情報屋の報酬なら、そこそこ強い旅団や連団が着ていてもおかしくない金額だ。時間もたっている。だが未開拓のままだ」
「まぁ~、そうね~」
「僕の経験から言うと、こういうのは2つの可能性であることが多い」
「1つは、迷宮の成長とは合わないほど強い魔物がいる可能性。もう1つは、卑劣な罠の可能性」
「個人的には、後者の気がするね・・・。この迷宮は他よりも広いんじゃないかな~。旅団がこのまま奥まで行って、余裕を持って帰路に着いている最中に、何かしらの罠が作動して入り口にたどり着けなくなった。これが僕の考えだ。」
「考えすぎじゃないかな~。でも従うわ~。言われてみれば~、確かに腑に落ちないところがあります~」
ドドリム兄さんは、さすが兄弟子です~。
私より考えが深いですわ~。
でもこの程度、私なら敵無しだと思うのですけど。
ここは食料になりそうな魔物がいないから~、最悪餓死することも考えられますし~。
古い大きな迷宮になると、進んでから帰ってくれるまで、何日もかかることがあるんです。
なので~、食料と敵の強さとの兼ね合いで~、探索範囲が決まるんです~。
戦闘しながら探索するので~、2人で持っていける食料は高が知れているんです~。
◇◇◇◇
「そろそろ行こうか」
「はい」
「少し高速で移動で探索しよう。そして戦闘は魔力消費が少ないので行こう。長期戦已む無しということで」
「はい」
ドドリム兄さんは頼りになりますね。
ちょっと弱いですけど~。
「■■■■■■、身体能力強化」
「(身体能力強化)」
ドドリム兄さん、いい加減、短縮詠唱ではなく無詠唱でやって欲しいです。
「いくよ!」
「はい!」
◇◇◇◇
「弾丸の射手・5矢の連弾」
「(魔弾の射手・3矢の連弾)」
ドドリム兄さんの狙いは正確ね。
追尾能力が無い「弾丸の射手」で確実に仕留めていますわ。
よく全力で走っている速度と同じ状態で当てれますね~。
さすがです。
「ゴブリンが多いですね」
「そうだな、大型のホブゴブリンがいるぐらいで入り口とそう変わらない」
「開拓されていた領域にはトロルまでいましたのに」
「この程度なら瞬殺出来るからいいが、数が多いな」
「どこかに巣でもあるんでしょうね~、増えすぎだわ」
「コレぐらいなら接近戦を仕掛けよう。魔力がもったいない」
「はい。とりあえず、横一閃!」
数が多いときは、この技が大好きなんです。
遠くまで届くし、範囲も広いし。
と、同時に一気に懐まで突撃です。
一閃の外にいるゴブリンに横を駆け抜けて、横に並んだ瞬間にバスタードソードを脇の下から首ごと一気に切り落として走り抜けるんです。
そうすると、返り血を浴びなくてすむんですよ~。
ただし、身体能力強化してなかったら、バスタードソードを持てないし、ましてや横を駆け抜けるなんで出来ないんですけどね~。
コレを状況に合わせて右へ左へと、移動して~。
あら~、不思議、返り血なしで全滅完了です~。
ドドリム兄さんも返り血は浴びてないみたいね~。
当然なんです~。
ドドリム兄さんは合理的というか、考え方が変わっているんです~。
武器は、邪魔だからって持ち歩かないんです!
あるのはナイフだけ。色々と便利だから持っているですって~。
だから、徒手空拳だけかと思えば、敵が持っていた武器なんかでも使いこなすんです。
なんて器用なのかしら~。
こんな重たくてでかいバスタードソードとか持ち運ばなくいいんですよ~。
その分食料や薬が持てますし、便利。それは認めるけど~。
徒手空拳がすごく強いのも認めるけど~。
私は嫌~。
ドドリム兄さんが教えてくれて、練習はしてるけど嫌。
こと戦闘において、力の少ない私には武器で補強して戦うほうが良い。
殴り倒すのも趣味じゃないし~。
「こんな迷宮の奥で、ゴブリンがこんなに大量にいるのは何かおかしい」
「そですね~」
「こいつらは餌か?ここの養殖所で、こいつらを食う奴が奥にいたりして」
「なにそれ~」
◇◇◇◇
「ここは広いな」
「臭いますね~」
暫くは戦闘を繰り返しながら探索を続けたんです~。
右へ左へ。行き止まりならまた戻って~。
ちょっと複雑すぎて、後から地図に起こすのは無理そう~。
ドドリム兄さんに頼るしか無いわね~。
そして、広い空間にたどり着いちゃいました~。
私の経験でも、ここは面倒な場所なのはわかります~。
まず広すぎます。迷宮内は魔力が濃密なので、全体が淡く光っているのですが、ここは広すぎて淡い光程度じゃ全く先が見えません~。
そして臭いんです。
コレはオークが沢山いる証拠です。
オークは臭うのです~。
嫌悪感を覚える生臭さなんです~。
何か女の子として危機感を覚える生臭さ~。
たまにドドリム兄さんからも漂うことがあるような~??
「余裕があるにはあるが大事をとって引き返そう。先に進むと帰れなく気がする」
「か、帰りましょう」
ドドリム兄さんの仮説が正しいなら、何かしらの罠が発動して大量のオークと戦う可能性が高いのです~。
オークは嫌です~。何か女の子として受け入れることが出来ない、生理的に無理なんです~。
「えぇ~!?」
「なっ」
後ろを振り返ると、思わず大声を上げてしまったわ。
「なんでシアバーンが後ろからくるんだよ」
「3体もいますわ、なんでですか~」
ウオォォォォォ!!
「あ、オークたちに気がつかれてしまったね」
「ご、ごめんなさい~」
やってしまいましたわ。私が大声を上げたせいですね~。
まぁ、こうなったらやるしかないですわ~。
「ドドリム兄さん、シアバーンは私が仕留めますわ」
「それは、前のかい?後ろのかい?」
「??」
「わからないか?前にもシアバーンはいるよ。たぶん2体、さらに奥に2体」
「見えるんですか?」
「微かにだけどね。リリビアよりも夜目は良いんだよ」
「殲滅させる必要はないから、リリビアが退路の確保を頼む。それまでは前は僕が引き受けよう」
「その代わり、こっちは魔力の消費を気にせずに戦う。帰りの戦闘はすべて任せるけど良いよね?」
「わかりました~」
「術式封印・第一領域・水の弾丸の射手・集束・5矢の連弾」
「術式封印・第二領域・風の弾丸の射手・集束・5矢の連弾」
「術式封印・第三領域・土の弾丸の射手・集束・5矢の連弾」
一度に遅延術式を3つも出来るなんて、ドドリム兄さんは器用です~。
「■■■、風障壁。では、先に行くよ!」
あ、感心している場合ではないですわ。
「(風障壁)」
これである程度の物理攻撃は耐えれますわ。
まずは1体を仕留めます!
「(光の魔弾の射手・集束・29矢の連弾)」
「おまけ、(光の魔弾の射手・集束・29矢の連弾)」
そして、1体のシアバーンがいる天井へ。
「(土の槍弾の投擲・集束・29矢の連弾)(土の槍弾の投擲・集束・29矢の連弾)せい!」
掠っただけですか!
意外に速いですわ~。
「(加速術)」
シアバーンの腹部に向かって天井を蹴って飛び込みます。
この速度なら反応は出来ないはず!
腹部の横ギリギリからバスタードソードで一刀両断。
返り血が振ってくる前に次のシアバーンへ向けて飛ぶように走りますわ。
大きい瞳と目が合いましたね。
私の動きが目で追えているのかしら。
急に暗くなってきましたわ。上から何か来ますわ。
シュッと横跳びして回避しますわ。
ドスン!
やはり足ですわ。
人間のようにアキレス腱があるかわかりませんけど~、切っておきましょうか。
また横跳びして返り血を浴びないように横切る瞬間に深々とバスタードソードで、ざっくりと~。
アキレス腱が切れて倒れこむだろうから、倒れこむ前に胴体を切断して・・・。
あらら。
拳が飛んできました。
もう一体も私の動きが見えてるんですね~。
いくら加速術でも、もう飛び上がる予備動作始めちゃっているから回避できないわ~。
にしても大きい拳ですね。
私の体より随分と大きいですわ。
障壁で直接の物理攻撃の威力は緩和されるはず。
質量の差があるから、拳を振りぬかれたら拙いですわ。
ならば、拳に立っていたほうが吸収できるわよね。
体を捻って、体制を変えて、足を拳がくるほうに・・・。
グンッッ!
クゥゥゥゥッ!
耐えましたわ。
天井近くまで飛ばされましたけど、此処から狙えますわ。
「(土の槍弾の投擲・集束・37矢の連弾)貫け」
手で防ごうなど、無駄ですわ。
ほら、手ごと胴体を貫きましたわ~。
残りは殴ってきたさっきの1体ですわ。
今度は片手で立って、蹴りですか。
器用な体ですわね~。
こちらは空中。
交わす術が思いつきませんわ。
でも、この距離ならいけるからし。
「縦一閃!」
あら失敗。不発~。
体を捻って、体制を変えて、足をシアバーンの足がくるほうに・・・。
グンッッ!!
クゥッ!
加重の方向が下に!
拙いですわ、上後方に向けて全力で飛ばないと!
ウッ!
すぐに天井が着ますわ。
体を捻っておかないと・・・。
あら~?
「ドドリム兄さん~。やっほ~~」
「あ?」
「ごめんなさい~。飛ばされちゃてます~」
「ってことで交代ですわ~。シアバーン1体無傷で残ってます~」
「はぁ~??」
刃が欠けているけど、いつのまにバルディッシュなんて得物拾ったのかしら~。
不思議なほど器用ですわ。
さてどう戦いましょうか。
「(土の弾丸の射手・37矢の連弾)(土の弾丸の射手・37矢の連弾)」
「(土の弾丸の射手・37矢の連弾)(土の弾丸の射手・37矢の連弾)」
時間稼ぎなら、少しでも物量で時間を稼いでおきましょう。
あと、こちらに向いてもらわないと。
うーん、ちょっと飛びすぎましたわ~。
敵の群れの後ろのほうに着地してしまいますわ~。
オークが沢山いるじゃないですか~。
「(土の槍弾の投擲・37矢の連弾)」
ふぅ~。
安全着地。
殲滅が目的じゃないから~、まずはドドリム兄さんと合流ね~。
シアバーンがいるから、壁際まで移動して大回りしまう~。
「横一閃」
とん、とん、とんっとね~。
「ドドリム兄さん~。ぉっっと」
「アレを投げ飛ばすなんて、ドドリム兄さんぐらいにかしないわよ~」
「まぁ、集団じゃなれば何とかね」
「さて追いつかれる前に帰るぞ」
「はい」
「あれ、あんなところに横穴なんてあったっけ~?」
「でかい!アレは巨人族かなにかの手だ!やばいぞ、と・・・べ・・・」
ドゴーーーーン!!
ドドリム兄さん、言うのが遅いです~。
もう床が崩れて、落下してます~。