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死闘2

 一方バショウとの戦いも佳境を迎えていた。

 彼女はシオリからの最初の一撃が堪えていたようで、精彩を欠いた動きになっており、口から垂れる血をそのままに、苦戦を強いられていた。

 当初シオリは単独で攻めていたものの、巧みに動く鋼糸に翻弄され決め手を与えることは出来なかった。

 そのため3人はユリによる攻撃を主とした戦術へ切りかえるに至った。

 ユリの炎は鋼糸を破ることができる。

 それはコウタの拘束を解いた際に実証済みである。

 しかし問題は、怪我と消耗の激しいユリに、それが出来るかということだった。

 なればこそ3人は協力を惜しまない。

 なればこそ3人は三位一体となったのだ。

 ユリを背中から支え、増幅をかけるシオリ。

 さらにその背後からコウタが多角甲盾を展開する。

 彼の盾は襲い来る鋼糸を弾く防衛の要。

 手のひらサイズに展開された無数の多角甲盾が、迫る鋼糸へと発射され、弾き返していくのだ。

 そして、シオリが弾を装填し、ユリが砲撃を行う。

 右へ左へ回避を行うバショウの着地点を予測。その間牽制の連続砲火で注意を引きつつ、 主砲のタイミングを計るのだ。

 拮抗した攻防が続く。

 コウタも、ユリも、シオリもとうに限界を迎えている。

 しかしその行いを止める素振りは見せなかった。

 対するバショウは肉体的にも精神的にも苦しい状況に立たされていた。

 最初の不意打ちで内臓をやられ、回避で身体を動かす度に激痛に襲われるのだ。

 そのため鋼糸の動きが重く鈍い。それでも果敢に攻めるが、動きを見切られた鋼糸が次々と弾かれていく。


 こんなはずではと、彼女の心に焦りが生まれていた。

 三人とはいえ手負いの雑兵相手に、攻めあぐねている姿が酷く滑稽に思えたのだ。

 『このようなことではタツミ様の期待を裏切ることになる』

 完全なる勝利のために、彼女は強引な手段を選択した。

 多角度からの乱撃を止め、鋼糸を前面に展開すると巨大なドリルのような形状で渦を巻いたのだ。

 「螺旋鋼ワイヤードリルこれで終わらせるっ」

 対するコウタが多角甲盾を放つ。

 しかし、高速の回転がその全てを易々と弾き飛ばした。

 「効かぬ」

 バショウが迫る。

 渾身の一撃。自分が出せる最大の破壊力を以って、三位一体となった3人をまとめて粉砕する手段をとったのだ。

 対するコウタが多角甲盾を重複するように幾重も展開した。

 「そんなもので私の螺旋鋼が防げると思うなあっ」

 「コウタっ。あの回転を少しでも抑えることは出来るっ」

 ユリが叫ぶ。

 「防御が出来なくなるがいいのか?」

 「どっちにしろあんたの盾じゃアレは防げないでしょ」

 「ひどっお前マジ容赦ねえな」

 「どうなのっ。出来るの?出来ないの?」

 「やってやるぜちくしょおおお」

 「よし。シオリっ、準備はいいわね」

 「まかせて」

 シオリの増幅が強烈に発動し、同時にユリが両手を正面に翳す。

 「コウタっ。後はあんた次第よ。あの回転を封じ込めない限り、私の炎は弾かれる。だから死んでも止めなさいっ」

 「やりゃああいいんだろおおおおおおおおお」

 肉薄するバショウ。

 鋼糸が作り出す回転の風圧が、先頭に立つユリの鼻先を掠める。

 「死ねええええええ下種どもおおおお」

 繰り出されるドリル。

 その時だった。

 リング状の多角甲盾が回転体にはめ込まれるように展開したのだ。

 「とまれええええええええええ」

 コウタの絶叫が響く中、バリアを削る音が轟き、無数の火花が散る。

 「邪魔だああああ」

 ドリルを操るバショウの手にさらに力が込められる。一瞬にして多角甲盾が砕けた。螺旋鋼の勢いに変化は無い。

 「死ぬ気でやれって言ったでしょおおお」

 「ちくしょおおおおお男に二言はねええええええええ」

 残された力はすでに気力のみ。その状態でコウタが振り絞る力は、命を削って生み出される生命力だった。

 「男からの熱い贈物リングだっ、受け取れえええええええええ」

 リングが増加する。その数は大小合わせて五本。その全てがガッチリとドリルの回転体に食い込むように出現した。

 視界を覆う火花。

 「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 霧散と言っていい程の真っ赤な世界の中で、先頭に立つユリはドリルの勢いが確かに衰えるのを目撃した。


 「いまっ」

 「分ってるっ」

 ユリとシオリが限界まで振り絞った能力が、火花を掻き消すほどの紅い光を放つ。

 「収束爆熱フレアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 灼熱の業火が鋼を融かす。

 本来ならば螺旋鋼が生み出す回転エネルギーによって、あらゆる物を弾き飛ばす。それは攻防一体の奥義といえる。しかしリング状の枷に阻まれ回転体は失速し、ユリの炎を退ける勢いを失ってしまったのだ。

 バショウの眼に映る炎。

 世界がコマ送りのように流れ、はっきりとエネルギーの切っ先が瞳に焼きついた。

 『タツミさまっ――』

 大爆発。

 爆風はその場の全てを吹き飛ばし、衝撃が地面を抉った。

 技を放ったユリたちすらも例外ではない。

 彼女らにその爆風を耐え凌ぐ余力があるはずもなく、成すがままその身を衝撃に委ねる事となった。

 黒煙が空を目指す。

 ゆらゆらと熱を帯びた煙は作られた空、星空を映す天井へと吸い込まれて行く。

 「人工物とはいえ夜空が綺麗ね・・・」

 3人が仰向けで横たわる。

 「生きてるか?」

 「生きてるわよ。シオリは無事?」

 「問題ないと言いたいところだけど、問題が多々ある」

 「それは奇遇ね。私もよ……」

 「俺も俺もっ」

 「このまま寝てしまいたいけど……まだやることがあると思わない?」

 「肯定」

 「そうだな」

 「それじゃあみんな起きてっ。死んでもあの馬鹿助けて、壁にぶっとい穴空けるわよ」

 「それが済んだら、カナメにぶっとい穴をあけてもらう。おもに私の下半身に」

 「下品だぞシオリ」

 「最低よシオリ」

 「……肯定。反省する」

 「よっしゃあああ、起きるぜえええええええええ」

 気合の入った言葉とは裏腹に、よろよろと力のないコウタを筆頭にして、皆が立ち上がった。

 「カナメはどこだ……」

 コウタが広場をを見渡した。

 「あっち、ゲート前よっ」

 皆が視線をゲートへと移した瞬間だった。

 今まで聞いたことも無いような雷鳴が広場を襲った。

 そこには遠目にも分かるほど、眩い光を放つカナメが立っていた。

ご覧頂きありがとうございます。

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