決意2
高等部へ到着すると、昨日の喧騒はより拍車をかけて大きくなっていた。
それもそのはず、校門に到着するや否や、ゴシップ専門のニュースクラン記者たちが待ち構えていたからだ。
さらに今朝配信の各誌一面を飾ったのは昨日のキス写真だったこともあり、外部の人間の注目度が飛躍的に増していた。
取り囲まれ揉みくしゃにされながら質問攻めにあうカナメ。
現場は混乱し収拾がつかない状態を諌めたのは雷鳴のような轟音だった。
もとい雷鳴だった。
さっと人の波が引き、ポツンと取り残されるカナメ。
そのカナメに向けて歩み寄ってきたのはあの超高度電離陽子砲のタツミだった。
「お初にお目にかかる。認証ナンバーE14268201、コールネームカナメ君」
笑顔で握手を求めているが、アリーナで見せたような強い殺気を放っている。
「こちらこそはじめまして。治安維持局中央特捜課課長のタツミさん」
努めて笑顔で応じるカナメ。
何故ここに来たのか。
何故自分に挨拶するのか。
瞬時に疑問が沸いて頭の中を駆け巡り、激しく動揺するところだったが、彼の放つ強い殺気が、何よりも己の防衛本能を一番に刺激した。
彼に気の緩みや、動揺を見せてはならない。カナメの直感が激しく警鐘を鳴らしたのだ。
「実は聞きたいことがあってわざわざここまで来たんだが、君に心当たりはあるだろうか?」
挑発的な態度で今にも爆発しそうな雰囲気であるが、衆人環視のこの状況で不意打ちは無い。それに攻撃を仕掛けるような心の動きはカナメには感じられなかった。
しかし、考えるまでも無く彼の目的はリズの件だ。
そんなことはこの場に居るもの全てが分りきっている。
だがカナメはリズの単語を口にするのは間違いなく地雷と思い、あえて無難な回答に努めた。
「自分のような凡人には分りかねます」
「ほう。君は凡人なのか。凡人であるはずの君は私より勝っていると思うかい?」
「あなたは13歳で治安維持局、つまり憲兵になられて実績を上げて今の立場になられました。自分は360学区の一生徒です。同世代とは思えないキャリアの差があると思いますし、何よりあなたは現アリーナの頂点です。比べるに値しないのは明白だと思いますが、いかがでしょうか」
値踏みという表現が適当だろう。
カナメがどういう人間でどれほどの実力があるのかを図るようにきつい視線を投げつける。
「君は立場を理解しているということだな」
「もちろんです」
笑顔を絶やすことなく、しかし強い意志を瞳に込めてタツミに告げた。
「私にはそうは思えんなあ。凡人は凡人同士、エリートはエリート同士仲良くやれば良い。だが君はそんなことも分っていないように見えるが」
一時の静寂。
カナメは自分から何らかの弁解をすることは無かった。
「よろしいならば、私が直接指導してやろう」
「は? ちょっと何をっ」
「聞こえなかったのか?私が直接君を指導してやろう。なあに簡単だよ。ただの実戦実技だ」
最悪の結果だった。要約すると『ボコッてやる』ということである。
タツミは専用の携帯端末を取り出すと、なにやら確認を始めた。
「君の実技授業は2限目か、ちょうどよいな。監督官はヒイラギか。彼には私から話を通しておこう。では逃げるなよ」
最後の一言に禍々しいほどの殺気を込めてタツミが校舎のほうへ歩き去った。
残されたカナメは胃に痛みを感じるほどの強いストレスを感じつつ、面倒ごとに巻き込まれても、文句を言う相手がここに居ないことへ脱力感を感じていた。
教室に入るとすでに公開処刑の話題は周知の事となっていた。
シオリやコウタは心配し、ヒイラギに何とかならないか話を着けに行ってくれたものの、ヒラ憲兵の彼にはどうすることもできなかった。
1限目の始業を告げる鐘がなる。
数刻後はどうしてるだろうか。
自分の身を案じながら、酷く落ち着かない時間を過ごしていた。
恐怖が無いといえば嘘になる。しかしそれよりも、痛い思いをするのが憂鬱でたまらなかった。
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