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四季  作者: 佐方仁優
5/8

autumn ②

すみません、今回完結できませんでした。次回③で完結です。

私の頭の中をみるみると広がっていく暗雲を霧散させるべく、私はかばんを持って外に出て行く。

気を紛らわせるに限る、こういう日は・・・



結局、その夜は連絡が取れた友達と出かけて、久々に朝まで飲んでしまった

いつもは陽気に飲める酒量を越すことはないようにしていたけれど、すこしだけ飛ばしすぎていたらしい。

終電もすっかり終わった時間まで飲んでしまい、明け方まで空いているコーヒーショップに入り、酔いを冷まそうとエスプレッソを頼んだ。

一緒に飲み明かした女友達に彼のことを、彼が私をどう思っているのか分析して欲しくて、説明を始めたけど、さすがにすべては恥ずかしくて語れず、でもそれを話さないと判断もできないだろうにと、考えていたら訳のわからない状態になってしまった。


ただ、彼女に

『男をごはんに、しかも部屋に誘うっていうのは、気があるって半分以上思われても仕方ないよ、もしくはオープンな性格なのかどっちか、でもあんたは誰がみてもオープンなタイプじゃないよね』


と言われて、ああやっぱり私、最初から彼に気があるって見られてたんだって落ち込んだ。


なんとなく会話が途切れて窓の外を見てもこの辺りは繁華街でも12時にはシャッターを下ろしてしまう店が多く並んでいるところだから明るい店からは暗い闇と、寂しげな蛍光灯の光しか見えない

目をこらしてもしばらくは外に何があるか全然見えなくて見ているうちに、その暗闇に心が引き込まれそうになる


軽い女って思われたのかな・・・だからああいうこと平気でしてくるのかな?

やっぱり、私は都合のいい女だって思われてるのかな・・・

私のことそういう目で見ていたから、時々私を抱きしめる態度が荒々しいのかな・・・

これから私、どうしたらいいの?

一度そういうレッテルを貼られてしまったら、もう挽回なんてできないのかな。




始発の電車に乗って最寄の駅で降りるといつも早朝から開いているパン屋が看板を出していた

まだ酔いの残る体には食べ物は受け付けられそうになかったが、毎朝食べる食パンをここで補充しておこうと、店に入る。

その他にも、シンプルで噛み応えのあるバケットとバターたっぷりのクロワッサンが美味しいけど・・・元気だったらしっかり食べるんだけど・・・それとも昼ごはん代わりに買っておこうか

そう思いながら店に入るとパンの焼ける匂いがして、やはり少し吐き気がした。

しっかりするんだ、と心のどこかで声がして購入する

店を出てまだ頭の奥が少し痛むのでこめかみをおさえながらゆっくりと歩いていた

そんな状態だったから誰かに声をかけられていることにすぐには気がつかなかった。



「よぉって、頭痛いのか?」


ああ、彼のお友達だ

お酒随分飲んだんだろうな、顔が赤い

他の友達はもう帰ったのだろうか


「あっ、お久しぶりです、今帰りですか?」


「そっ今から一端家に帰ってまた仕事だよ」


「えええっすごい」


「昼過ぎまでは酒抜けないよな・・・多分、そういえば朝帰り?パン買いにって訳でもないよな」

とパンの袋を手にした私を見る、ワンピースとボレロとピアス姿で高めのヒールを履いている。

そこまで着飾って近所のパン屋に朝食用のパンは行かないだろう。


「・・・ああ・・・まあ・・・」


手にしていたパンの袋を上げて見せる。熱々のパンの匂いがふってその場の空気を変える


「ああでもいい匂いだね」


「クロワッサンとフランスパンです、おいしいですよ、このお店」


「・・・君の家でごちそうになったらダメかな?それ」


「えーっ嫌ですよ、それに今から仕事でしょう?」


「ふうん」

まとまらない頭でなんか考えてるみたいだ


「何ですか?」


「まあ、そうだよな・・・普通・・・じゃあ、今からあいつの部屋に行って食う?」


「え・・・」


この格好で?昨日から徹夜明けのこれで・・・実はまだ酔いだって抜け切ってないのに


「いや、でもやっぱり・・・」


「あいつん家、今、食うもの何も残ってなくて朝ごはん食えて無いんだよ」


一緒に行こう、と彼は今来た道を戻っていく

どうしよう、と悩んでいたら


「あいつ部屋、行ったことないだろ?」


「ない・・・」

なんで知ってるの?


「あいつの部屋ってさ、あいつのことがもろわかりって感じなんだよな、見てみたくない?」


もろわかり?なんでもわかるの・・・わかりたい!


そう思うと見てみたくなってついていくことにした。

友達は先に先にと足を進めるので追いつくのが大変だった

まるで急いでるみたい、走り出しそうな勢いだったからヒールの靴で追いかけるのは大変だった

・・・そういえばこの人今日仕事あるって行ってなかったっけ?

アパートの階段までたどり着いた頃にはもう彼の部屋のインターフォンは鳴らされていて、私は自分の部屋に戻って、着替たり顔を洗ったりするヒマもなかった

彼の部屋の前まで来ると彼はすでに部屋に上がっている友達と何か話をしていて私が玄関にたっているのに気づくと・・・何故か何も言わずじっと私を見ていた。

そんな彼の態度に何か思ったのか

「さあ、上がって上がってなんて俺のうちじゃないけどね」

と言いながら私を引っ張る


「さっき言ってたことだけどさ・・・もろわかりってヤツね」

そのまま寝室に連れて行く

間取りがうちと同じだからそこにはやっぱりベッドがあって・・・

男の人のベッドだからやっぱりカバーとかはシックな色で統一されてるんだけど何故かそこには赤いものが柵みたいな形のヘッドボードにくくられていて・・・それは・・・私があげたマフラーだった

赤と白のマフラー、その明るい色のせいでそこだけが際立って見える

でも、どうしてベッドくくってあるんだろう、というよりも今はまだ10月で毛糸で編まれたものをとてもじゃないけど着る気には慣れない。

今日なんて、まだ日差しが強くて・・・彼の今日の格好を見ると綿の長袖のカットソーに半パン姿だ。


「こいつのライナスの毛布、そのマフラーでさ」


「ちょっ」


慌てたような彼の声がする


「夏の暑い日もそれ握って寝てるんだぜ、笑っちゃうよな、こいつ普段しれっとした態度とってるけどやってることは思春期の頃から変わんないから」



・・・これは・・・どういう意味だろう・・・これは単に抱き枕第2号ここにありってこと?

それともこれは・・・



あっヤパっ仕事遅れるわ、そういいながら唐突に友達は慌てて部屋を出て行った。

やっぱり急いでたんだ・・・そう頭の片隅でぼんやり考えながら・・・私はその場にへたりこんでしまった



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