第三話
スマホの通知を家族からの通知以外鳴らなくしたのは引き篭って直ぐだった。
中学生最後の夏、ルアは世界の真実を見た。
「ねぇ?見て私たちの敵みーんな×したよ!これで二人で居られるね!あははは!!」
狂った様に笑う彼女はルアの知る彼女ではなかった。
ルアの言葉に誰も耳を貸さなくなった。
母は娘の気が狂ったのだと気を病み父はそんな母と仕事を理由に町を出た。
家に残されたルアは1人家に引き篭もり、週に1度家に来る兄が生命線だった。
幸いな事に祖父母の家の太さと父が名の知れた企業務めの為お金には困らなかった。
それに何よりも父と兄はルアの事を
親友が目の前で自殺した憐れな女の子
として見ていた。
でも真実は違う。
親友は、彼女は、
緋海奏葉はルアの目の前で喰われたのだ。
奏葉を喰った町を覆い尽くすほどの巨大な何かは奏葉の上半身を吐き捨て何処かへと消えた。
ルアは今でも「それ」が町に居て自分を見張っているのだと言い張った。
しかし、大人からは現実を直視出来ない子供の妄言として扱い、いつしかルア自身もそう思い込むことにした。
そして、漠然と「外に出るのが怖い」と言う認識だけが残った。
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「ハァー!!?!?いまのヘッドショット判定じゃねぇのかよ!ヴァーカ!!」
ルアはそう叫びヘッドフォンを外して椅子から腰を上げた。
モニターには「あなた死にました」の文字。
「クソゲー!!」
そう続けて叫ぶルアの声に答えるようにヘッドホンから笑い声が聞こえる。
「あー!ごめんカイさん!」
マイク付きヘッドホンを付け直し返答する
『いいよ、今のは確かに当たり判定可笑しかったと思う』
そう答えるのはネット友達の年齢不詳、ボイスチェンジャーを使用している為性別も不詳のカイノトラ、略してカイさんである。
半年ほど前にSNSで出会い何度か交流を深めるうちに2人で遊ぶことが増えていた。
『今日はもう終わりにしよう、眠くなってきた』
時刻を見ると午後11時、平日水曜だ。
「えー!もうちょっとー!!」
『無理でーす!おつ〜!』
「へーいおつおつ〜」
そんなやり取りをして今日のマルチプレイは終わった。
それから1時間後、風呂を済ませインターネットを眺めていると、ある動画配信サイトの動画が目に入った。
「あなたへのおすすめ」動画欄にそれは有った。
タイトルは「Otherworldly driftwood on the Japanese coast」
サムネイルには青と黒が複雑に絡まった様な何かが海岸に打ち上がってる様子が映っていた。
動画をクリックして内容を確認する。
波の音が激しく木霊するまだ空の暗い朝の海岸。
その海岸に巨大なシルエットが浮かび上がっている。
その巨大な何かは青く鈍く光りその度に明るい色の粒子のような何かを物体中央付近の裂け目から吹き出していた。
7秒程の動画だったがルアには数分に感じられていた。
そしてなによりも、ルアはこの物体に見覚えがあったのだ。
ふと気になり、動画のコメント欄を開く。
「なにこれ」「ここ××海岸じゃね?」
「出来の悪いCG」「投稿主の息の音きも」
そしてその中に────
「見てるんでしょ?アオル。まってるよ」
「アオル」それは以前ルアが使っていたハンドルネームだった。
それを知ってるのは1人しかいない。
心臓がバクバクとうるさい、呼吸が浅くなる。
まさか、そんなことは、などと考えるが
理性がそれを否定する。
コメントをしたアカウントの名前は────
「アカネウミ」
奏葉、緋海奏葉のハンドルネームだった。




