馬車内の惨劇
金銭的に余裕があるわけでもない
しかし私は相変わらずギルドに
行きたくないという気持ちで一杯だった
しかし精霊を授かってしまった以上
経験値を獲得しないのはどうにも損をした気分になる
セーターもこれだけ作れば十分だろう
私は最寄りの街まで歩いていこうと
一回考えたが、その日はヒールを履きたかったので自重した。
「お客さんどちらまで?」
「中央都市バーケラスまでお願い」
「了解」
御者の操る馬車が揺れる
馬車の料金表が3つあったので
私は一番安い「梅」コースを選んだ
乗り心地は最低だ
馬車内を見渡すと同い年くらいの子供たちが乗っていた
全員「梅コース」を選びそうな顔ぶれだった
「ターメン!中央に着いたら俺ぜったいターメン食べるんだ!」
「まずギルド登録が先でしょ!」
二人の若者が楽しそうに会話をしていた
どうやら行先は同じのようだ
「お姉さんはどこまで行くの?」
女性のほうが話しかけてきた
「中央都市までよ」
「目的地が一緒ですね!」
私は会話をしていて少し気が重くなってきた
このノリだと職業のこともいずれ聞かれてしまうだろう
「あなたは犬が好き?それとも猫?」
私は会話をはぐらかした
「犬ですね、で、何しに中央まで行くんですか?」
まずい。会話を曲げることに失敗した
「ある任務を遂行するためよ」
私は嘘をついたうえに格好つけてしまった
「任務内容は極秘なの」
嘘で嘘を上塗りした
まあいいか、どうせ二度と出会うことは無いのだから
よく見ると座席の奥のほうにいるのは
昼間から酒を飲んでいる酔っ払いだった
(蛮族・・・!)
私は大いに身の危険を感じた
この馬車はひどい揺れを生み出している
そして酔っ払いという組み合わせ
馬車内が吐しゃ物まみれになるのは時間の問題だろう
「御者さん!あとどれくらいで着くの?!」
私は焦って聞いた
「あと半日もあれば着きますよ」
半日。気が遠くなってきた
酔っ払いはぷるぷると震えだした
それは噴火直前の山を彷彿させた
「私、ここからは歩くわ」
そう発言した瞬間
酔っ払いの口から痛恨の一撃が放たれた
「うわああああああ!!」
「きゃあああああああ!!」
馬車内は蛮族の手に落ちた
馬車は一旦停止して馬車内の清掃が行われた
思わぬ足止めを食らった
私の人生はどうしてこうも蛮族の邪魔が入るのか
「お~?もう着いたのか~?」
酔っ払いはもう元気に体操を始めた
酔っ払いの行動原理はよく理解を超えてくるから
非常に困る。今度は立小便をしだした
「お客さんたち、もうすぐ清掃終わるんで・・・!」
馬車の代金は「梅コース」の半額でいいと言われた
考えようによってはラッキーだったかもしれない
吐しゃ物一つで馬車代が半額になるのだから
私の考えは多少甘かったようで
あと半日馬車内で吐しゃ物のほのかな香りに
苦しめられることとなる




