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転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~  作者: 水無月いい人
第八章:王城決戦編

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第九十三話:歴代最弱の”騎士隊長グラディー”

 俺の名はグラディー・ファウスト。


ファウスト家は代々、優れた魔法使いを輩出してきた。俺もその血を色濃く受け継ぎ、魔法の才能に恵まれて育った。


 物心ついた頃には、既に魔力の扱いは同年代の追随を許さず、魔法学校でも常にトップの成績を収めていた。炎はより熱く、水はより深く、風はより鋭く。俺の魔法は、他の追随を許さなかった。


薄い黄色の長髪をなびかせ、優雅に杖を振るう。俺の頭の中には、いつかこの才能で世界を驚かせる大魔法使いになる、という確固たる未来像があった。それが、ファウスト家の伝統を継ぐ者としての、俺の使命だと信じて疑わなかった。


しかし、俺にはたった一つ、致命的な欠点があった。それは、剣の才能が皆無だということ。


剣を握れば、なぜか手から滑り落ち、構えれば足がもつれる。その姿は、もはや武術というよりは、新しいスタイルのギャグだった。剣術の授業では、いつも床に転がり、クラスメイトの笑い者だった。


「なぜだ!?なぜ俺には剣が扱えないのだ!」


俺は毎日のようにそう嘆いた。魔法の腕前は、誰にも負けない。しかし、華麗な剣技で敵をなぎ倒す英雄譚を読むたびに、その才能の無さを痛感する。


 俺の理想とする騎士の姿は、剣と魔法を華麗に操る勇者だ。しかし、俺は剣を握ることすらままならない。


「グラディー、お前は魔法使いだ。剣など握るでない」


父は、いつもそう言った。しかし、俺は納得できなかった。父は、剣が苦手な俺を庇ってそう言ってくれているのだと、そう思っていた。しかし俺は、魔法使いとしてだけでなく、騎士としても認められたかった。


そんな俺に転機が訪れたのは、騎士団への入隊試験だった。剣を握れない俺は当然不合格。剣術試験の会場を、情けないほどの速さで追い出された。


「……何故だ……魔法なら俺は誰にも負けないのに……」


失意のまま入隊試験の会場を出ると、ある男が壁を背にして立っていた。夕日に照らされた彼の姿は、まるで絵画のようだった。


「魔法ならなんだ?」


静かな声が、俺の耳に届く。


「あ、貴方は!」


その才能を見出したのは、若くして騎士団長を務めるアシュレイ・フォン・グラント、その人だった。


 そう、俺の憧れの人だ。


「入隊試験最下位の成績のグラディーだな」


「え、ええ……まさか貴方程の方が俺……いや、私の事を覚えていてくれていたなんて……俺、幸せです!」


憧れの人が名前を覚えていてくれた。俺はそれが嬉しかった。もう、人生の絶頂はここなのではとさえ思った。


「あれ程までに剣を振れない者は初めて見たものだからな」


アシュレイ様の言葉に、俺は顔を赤くして項垂(うなだ)れた。


「申し訳ありません……」


「謝る必要は無い。ファウストと言えば、魔法を扱う者の間で知らない者はいないと聞く。自分でも先程言っていたように、貴様の専門分野は魔法だろう。何故貴様はそうまでして剣を振るう?」


アシュレイは疑問に思う。その透き通った瞳は、俺の心の奥底を見透かすかのようだった。


「俺……私は──」


「言い直さなくていい。私は気にしない。続けろ」


俺は自分の夢を語った。剣と魔法を華麗に操る勇者が目標だと──。その姿は、まさにアルスのような、完璧な存在だった。


「……」


アシュレイ様は、ただ静かに俺の夢を聞いていた。その沈黙が、俺の心に重くのしかかる。


「……団長?やはり俺の夢はバカバカしいですよね……申し訳ありません」


俺がそう言うと、アシュレイ様は少しの沈黙の後、意外な言葉を口にした。


「グラディー。貴様を特別に騎士団への入隊を許可する」


頭が混乱した。俺は、その場で何度も自分の耳を疑った。


「……へ?……俺が、ですか?」


「そうだ。貴様の力を我が騎士団で存分に振るってほしい」


アシュレイ様は、未来の希望を見つけたかのように、俺にそう語りかけたのだ。俺は胸を熱くした。これで憧れの騎士として、剣士たちと肩を並べることができる。


しかし、アシュレイ様が告げた言葉は、俺の想像を遥かに超えていた。


「貴様には、()()()()を務めてもらいたい」


「……は?騎士隊長、ですか?」


俺は耳を疑った。騎士隊長といえば、騎士の中でも、剣術に秀でた者が就く役職だ。そんな席に、剣を全く使えない自分が就くなど、ありえない話だ。


「嫌か?強制はしない」


「え、いえ、私はその……剣が……あまり得意では……」


 例え知られていても、憧れの人を前に、全く扱えないとは口が裂けても言えなかった。

 

「問題ない。君は魔法使いとして、騎士隊長の座に就くのだ。私の方で陛下に通達しておく。私からは以上だ。早速明日から頼む…………頼んだぞ」


アシュレイ様は、俺の不安を一笑に付した。俺は、その言葉の裏にある深い意味を理解することができなかった。ただ、憧れの騎士団長直々の指名だ。断ることは許されない。


 俺は、アシュレイ様の期待に応えるため、騎士隊長になった。しかし、それは魔法部隊の隊長ではなく、正真正銘の騎士隊長だった。


当然、周りの騎士たちからの風当たりは強かった。


「なぜ剣も使えない男が隊長なんだ」

「歴代の騎士隊長でも最弱なんじゃないか?」


そんな陰口は、日常茶飯事だった。俺は、その言葉を聞くたびに、悔しさで唇を噛んだ。しかし、俺は決して諦めなかった。俺は、魔法使いとして、騎士隊長としての職務を全うしようと決意した。


騎士隊長としての仕事は、多岐にわたる。訓練の指揮、書類仕事、そして王族の護衛。訓練では、剣を振るう騎士たちに、俺は魔法で対抗した。


 俺の魔法は、彼らの剣技を凌駕した。そのたびに、騎士たちの間にどよめきが起こる。しかし、彼らは決して俺を認めようとしなかった。


「あんなの、剣術じゃねえだろ」

「卑怯者め」


陰口は日常のように耳へ届く。

慣れたつもりでいたが、胸の奥をざらつかせる感覚は決して消えなかった。


ここは王国騎士団。表向きは忠誠と誇りを掲げているが、

裏をめくれば、派閥争いと足の引っ張り合いが渦巻く場所だ。

剣よりも舌と人脈の方がものを言う世界。


俺はただ、耐えるしかなかった。

アノ人が託してくれた、この責務。必ず全うしてみせる。

いつか──そう、いつか彼らが俺を認める日が来ると信じて。


 それは、ある日のことだった。


 いつも通り、背中越しに愚痴と悪口が飛んでくる。

 それでも俺が姿を見せれば、表向きは“隊長”としての態度を取る。

 それは、俺の後ろにアシュレイ・フォン・グラントがいるからだ。


 演習場へ向かう途中──


「……そうッスかね?自分は、結構いい人選だと思うッスけど」


白髪の青年が、ぽつりと口を開いた。

名はルシウス。最近配属された新人だ。

組織の空気を知らない……いや、知っていても自分の意志を曲げない性格なのかもしれない。


 不思議な新人だ。


「はぁ?お前……最近入った、ルシウスだっけ?頭、大丈夫か?」


「先輩方よりは、大丈夫ッス」


挑発めいた返しに、場の空気がピリつく。

押し殺した笑い声と、剣呑な視線が交錯する。


「……てめぇ……口の利き方ってもんがあんだろうが!」


甲高い金属音が響く。

一人の騎士が真剣を抜き、陽光が刃を走った。


「よっ、レゴ!その生意気な新人を躾けてやれ!」


「……剣を抜いたッスね」


「剣もまともに振れねぇ、肩書きだけの隊長のどこがいいんだ?言ってみろ!あぁ?」


ああ、そうだ。俺の肩書きは、剣術の腕で得たものじゃない。

だからこそ、こうして(あざけ)る理由を、彼らは際限なく探し続ける。


「……自分、あまり人を貶すような奴、嫌いなんスよ。だから思うんスよ──じゃあお前は何が出来るんだって」


「おいおい新人、それ以上口を開けば……本当に斬るぞ?」


「どうぞ、ご勝手に。もし自分が怪我をしたら……そうッスね……隊長には“自分で斬った”って報告しておくッス。──まぁ、そんな事、万に一つも起きねぇッスけど」


まったく……入って間もないくせに、空気を読まずに火種へ飛び込む。

だが、その真っ直ぐさが──どこか、俺の救いに見えた。


 そして後に彼は、副隊長の座に就くことになる。

 

そんな俺の唯一の心の支えは、聖女様だった。囚われの姫であったという彼女と王城ですれ違ったとき、その清らかな笑顔を見た俺は心が洗われるような気がした。


彼女を護るためなら、どんな苦労も(いと)わない。俺は、聖女様を護ることを、自分の騎士としての使命だと心に決めた──。


しかし、今日もまた、俺の理想は打ち砕かれた。王女殿下はいつものように城を飛び出し、聖女様は犯罪者と行動を共にしている。


俺の初恋はどこへ行ったのだ……。


俺は、心の中でそう叫んだ。その心に渦巻く様々な感情が、目の前の少年、アルスへの怒りへと変わっていく。


「貴様は俺の夢を、幻想を、踏みにじった!聖女様を惑わした罪は重い!」


俺は、悔しさで声を震わせる。この男は、俺が長年夢見てきた、剣と魔法を操る理想の騎士。そして、俺の愛する聖女様を、俺の知らない場所へと連れ去ろうとしている。


許せん、許せん、許せん、許せん。


「……グラディー・ファウストはこれより、罪人アルスを処刑する──『異空間魔法』」


腰に携えた剣ではなく、何も無いところからグラディーは杖を取り出した。それは、彼の才能を証明する、もう一つの誇りだった。


「聖女様を救うのは……この俺だああああ!!」


そして、彼の叫びと共に、地下通路に特大魔法が放たれた。



【後書き】


 いつもご覧頂きありがとうございます。

お久しぶりの後書きです。


 今回はこの先の物語で必要だと感じ、

 敵側サイドのキャラクターを深掘りしてみました。

 

 騎士団側の外伝も好評であれば書こうかななんて思ってます。


引き続きどうぞよろしくお願いします!

最後までご覧いただきありがとうございます!

良ければ評価、感想を頂けると嬉しいです!

まだブックマークしてない方も良ければ是非!


モチベに繋がり投稿頻度も上がります( ˙꒳˙ )


ではまた次回!

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