表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~  作者: 水無月いい人
第二章:騎士団への道と戦場の初陣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/154

第九話:共闘の道と戦士の矜持

ライオネル・フォン・グリフィン。

後に王国騎士団の重鎮となる、無骨なベテラン戦士。まさか、ゲームのメインストーリーが始まる前に、こんな形で彼と出会い、共に行動することになるとは、想像もしていなかった。


俺は薬草をライオネルに差し出した。彼は警戒しつつも、俺の手から薬草を受け取ると、傷口に当てた。


「すまない、小僧……いや、アルスと言ったな。この恩は必ず返す」


彼はそう言って、深々と頭を下げた。見た目に反して、律儀な男だ。


ライオネルの傷はかなり深いようだった。全身に切り傷や打撲痕があり、右腕からは血が流れ出ていた。あのゴブリンの群れを一人で相手にしていたのだから、無理もない。


俺はマジックバッグから水筒を取り出し、彼に渡した。


「どうぞ。少しでも休んでください」


彼は躊躇なく水を受け取り、喉を鳴らして飲み干した。


「助かった。それにしても、お前は一体何者だ? 子供が単身でこんな森の奥にいるだけでなく、魔法まで使うとは……」


ライオネルは、俺を品定めするような鋭い視線を向けてきた。

【知力】が8にまで伸びたおかげか、俺は彼が純粋な疑問と、僅かな警戒心を抱いていることを読み取れた。


「俺はただの、旅の途中の子供です。薬草採集をしていて、偶然、貴方を見つけただけですよ」


俺はとぼけることにした。まさか、自分が未来の知識を持った転生者だとは言えない。


「魔法は、独学で少しだけ……」


苦し紛れの言い訳だったが、彼はそれ以上追及してこなかった。信じているわけではないだろうが、今はそれどころではない、と判断したようだ。


「そうか……。だが、あのゴブリンの群れを一瞬で混乱させたあの炎。あれは独学でどうにかなる代物ではないぞ」


ライオネルはそう呟き、俺の顔をじっと見つめた。

【共感性】スキルが、微かに反応する。彼の視線には、警戒心だけでなく、何かを見定めようとする強い好奇心が混じっているように感じた。


俺は話を逸らすことにした。


「それより、ライオネルさん。こんな場所で一体何を?」


「ああ……」


ライオネルは顔を歪め、悔しそうに語り始めた。


彼は王都の騎士団に属する戦士で、ある任務でこの地域に派遣されていたらしい。最近、各地で魔物の活動が活発化していることを受け、その原因を探るための偵察任務だったという。


「魔物の生態系に異変が起きている。普段は縄張りを守るゴブリンが、異常なほど集団化し、他の種族と協力している報告まで上がっている」


彼は険しい顔でそう言った。

やはり、俺がヒロインを助けたことだけが原因ではないのかもしれない。あるいは、俺の行動が、この世界の異変を加速させている可能性もある。


「偵察中に、不意に大規模な魔物の群れに襲撃された。護衛は全滅。俺だけが……」


ライオネルはそこで言葉を詰まらせた。彼の表情には、仲間を失った悔しさと、自身の無力さに対する怒りがにじみ出ていた。


この世界の騎士や兵士は、皆、国や人々を守るという強い使命感を持っている。彼もまた、その一人なのだろう。


「そんな中で、お前が現れた……。本当に助かった。だが、まだ油断はできない。あのゴブリンジェネラルとシャーマンは、すぐに回復して追ってくるだろう」


ライオネルは傷を押さえながら立ち上がろうとした。


「無理は禁物です。少し、休んでください。追手は、俺がなんとかします」


俺はそう言って、再び【鑑定】スキルで周囲の地形をチェックする。

この谷は、上流に向かえば、さらに道が狭まり、岩場が増える。そして、いくつかの小さな洞窟が点在している。


ゲーム知識では、この谷の奥に、ゴブリンの隠された補給拠点があるはずだ。


「アルス、無茶をするな。お前は子供だ」


ライオネルが止めるが、俺はすでに決めていた。

この状況で、最も効率的に追手を撒き、安全を確保する方法は、あのゴブリンの補給拠点を利用することだ。


「ライオネルさん。この谷の上流に、ゴブリンの小さな隠し拠点があるはずです。そこは、ゲームでは知られていない場所ですが、魔物の数も少なく、身を隠すには最適です」


俺は、ゲーム知識を最大限に活用し、具体的な場所と、そこに至るまでの地形の注意点を説明した。


ライオネルは驚いた顔で俺を見ていた。


「ゲーム……とはなんだ?な、なぜお前がそんな場所を知っている……?」


「それは、まあ……野生の勘、ですかね」


適当にごまかす。しかし、彼の表情は疑問符だらけだ。


「ともかく、そこへ向かいましょう。俺が先行して、もし追手が来たら、引きつけて時間を稼ぎます。貴方は、その間に奥へ」


俺はナイフと剣を構え、ファイアボールの魔力を練る準備を始めた。


「待て、アルス! 一人で危険な真似はさせるわけにはいかん!」


ライオネルが立ち上がろうとするが、やはり傷が深く、足元がふらついた。


「俺は、オールゼロからここまで来たんです。子供だからといって侮らないでください」


俺はあえて、少しばかり強気な態度でそう言い放った。

【交渉術】スキルが、ここで役立っているような気がした。


ライオネルは、俺のその言葉と、覚悟を決めたような眼差しを見て、一瞬、言葉を失った。


「……分かった。だが、決して無理はするな。お前がピンチになったら、俺も無理をしてでも助けに行く」


彼はそう言って、俺の背中を叩いた。


俺は頷き、先行して谷の上流へと進む。

【危機察知】が、後方から迫るゴブリンたちの気配を捉えている。

時間はあまりない。


俺は洞窟の入り口を見つけると、躊躇なく中に入った。

そこは、ゲーム知識通りのゴブリンの補給拠点だった。


粗末な木箱がいくつか置かれ、中にはわずかな食料や、ガラクタが入っている。

魔物の気配は……ゼロ。幸い、今は誰もいないようだ。


俺は洞窟の奥へと進み、ライオネルが入ってこられるスペースを確認した。

そして、入口に罠を仕掛け始めた。


マジックバッグから取り出したのは、ダンジョンで採取した、粘着性の強い植物のツルだ。これを入口付近に張り巡らせ、足元を滑りやすく加工する。


そうこうしているうちに、洞窟の外からゴブリンたちの騒がしい声が聞こえてきた。

やはり追いつかれたか。


「ここだ!」


俺は声を出して、洞窟の奥からライオネルを呼んだ。

ライオネルが傷を押さえながら、ゆっくりと洞窟に入ってくる。


「アルス、準備はできたか?」


彼は息を切らしながらも、戦斧を構える。


「はい。あとは、奴らが罠にかかるのを待つだけです」


俺たちは息を潜め、洞窟の奥でゴブリンたちの接近を待った。

ドタドタと足音が響き、いよいよゴブリンたちが洞窟の入り口に殺到してくる。


その時、俺は手のひらに魔力を集中させた。

狙うは、入口の天井。

【知力】と【魔力操作】が連携し、正確な軌道を予測する。


「ファイアボール!」


俺の放った火の玉は、洞窟の入り口の天井を直撃した。

小さな落盤が起こり、土砂と小石がゴブリンたちの頭上に降り注ぐ。


さらに、足元に仕掛けていた粘着性のツルが、土砂と混ざり合い、ゴブリンたちの足元を絡め取った。


「グガァ!」「キイイッ!」


ゴブリンたちは悲鳴を上げ、混乱に陥る。

先頭にいたゴブリンジェネラルとシャーマンも、土砂に埋もれる形になり、身動きが取れなくなった。


「よし、やったな!」


ライオネルが感嘆の声を上げた。


「今のうちに、別の道を探します。ここにいても、すぐに増援が来るでしょうから」


俺は冷静にそう言い放ち、マジックバッグから古い地図を取り出した。

【鑑定】スキルで、地図の情報を脳内で解析する。


この洞窟は、ゲーム知識にはないが、奥に別の抜け道があるかもしれない。


俺とライオネルは、互いに顔を見合わせた。

このモブと攻略対象キャラの奇妙な共闘が、今、始まったばかりだ。

その先には、どんな困難が、どんな絆が生まれるのだろうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もし面白かったら、ブックマークや評価、感想で応援していただけると嬉しいです!


また、リアクションは目に見えてモチベが上がり、投稿頻度にも繋がりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★ モブだけど、世界を変えてみせる ★

『転生したら、まさかの脇役モブでした』

モブゆえに、見えている“攻略外の真実”がある。
彼の努力が、世界を揺るがす――。

面白かったらぜひ
評価ブックマーク・感想をお願いします!


本作はカクヨムでも連載中!読みやすさ重視で展開中です。

カクヨム版はこちら:
https://kakuyomu.jp/works/16818792436868329194

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ