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第14話:魔法の特訓②

 小春の希望通り、四人は現在、家の前に開けた庭にいた。アーノルドが買って来てくれた新しい服は、動きやすいようにとズボンである。


「魔法の使用となると、ここには教師がいない。早速見繕ってこよう」


 体をほぐしていいた小春は慌てて待ったをかける。


「アーノルドが先生だよ!」


「…俺が?」


「だってさっきも思ったけど、アーノルド、教え方上手だし!きっといい先生になると思う!」


 しかし、小春はアーノルドが適任と思ったが、それは小春からの一方的な我儘だ。無理な押し付けはいけないことだ。


「ごめん、わがまま言っちゃった。迷惑だよね…」


 かと言って先生を用意してもらうのは申し訳ない。まずは魔法の基礎的なことを学んでから、講師を付けてもらう方が良いだろう。魔法の初心者用の本をアーノルドに教えてもらい、それを買おうと思ったが、小春が口を開く前にアーノルドが小春の手を取る。


「迷惑ではない!」


「あはは声でか」


 急な大声にルークとイリスがびっくりしている。すまない、と頭を下げたアーノルドは、先程よりか音量を落として小春の手を握る。


「迷惑ではない。それにこの程度、我儘にも入らない。…むしろ、もっと我儘を、言って、欲しい」


 小春は感動した。この人はなんて心の広い人なんだろう、と。迷惑どころか、遠慮せずにもっと我儘を言って欲しいと言ってくれる彼は、その顔の綺麗さから考えるに、天使の生まれ変わりなのかもしれない。


 手を無意識に繋いでいたことに気づいたアーノルドが手を放そうとするが、小春は彼の手を逆に取り、強く握った。


「ありがとう、アーノルド…!貴方って本当に優しい人なんだね!見ず知らずの私たちを助けてくれたばかりか、家まで探してくれて、ご飯に洋服も…。この恩は必ず、いつか必ず、絶対返すから!本当にありがとう!」


「ぁ、ぅ、ぁ、え、ぁ、あぁ」


 青い髪と瞳、それとは逆に染まった赤い顔に気づかない小春は、ルークとイリスに「頑張ろー!」と声掛けをしている。一方しっかりアーノルドの様子が見えていた二人は、フラフラと座り込むアーノルドを可愛そうなものを見る目で見ていた。


 なんとか元に戻ったアーノルドを前に、三人は並ぶ。


「「「よろしくお願いします」」」


 初の魔法に小春は緊張と期待で一杯だった。ルークとイリスは不安で一杯で、ぎゅっと互いの手を握り締めている。


「魔法を使うには、イメージが大切だ。炎が揺らいでいる様子をイメージすると、その魔法が使える。だが、イメージというものは中々掴みどころがないし、統一ではない。だから俺たちは魔法を使う際、詠唱をする。イメージを口に出して、より明確にするんだ」


 先程と同様に、アーノルドは掌を上にして、三人に見やすいように前に出す。


「[(アイス)]」


 声掛けの直後、その手にはこぶし大の氷が現れた。おぉ!と小春たちは声を上げる。


「[氷の煌めき(ラ・アイシー)]」


 次は掌には収まらず、沢山の氷の粒が小春たちの周りに浮いている。そっと手を伸ばすときちんと触れることが出来て、ひんやりとした冷たさが指先に伝わる。凄い、と感動すると同時に、小春はこの魔法があれば、年中かき氷が食べ放題になると考えていた。


 パチンッと音が鳴ると、空中に浮かんでいた全ての氷が一瞬のうちに消えてしまっていた。


「詠唱は先程も言ったようにイメージを掴みやすくするためのもの。イメージが掴めさえすれば、詠唱は必要ない。最後に俺が使ったのは[消えよ(ディサペント)]、という対象を消す魔法の無詠唱だ。だが、イメージが掴めているからと言ってどんな魔法でも使えるわけではない。その者の魔力量や体力も魔法には多く影響する」


 手をぐっぱぐっぱさせてみる。何となくの理解はできたが、実際に使えるかというところだ。

 まず始めの魔法は、初級中の初級。[炎]という魔法だ。ちなみに先程アーノルドが使っていた[氷]という魔法も初級にあたるらしいが、氷を見たことがない人が多くイメージが付きにくい魔法のため、初級の中の上級に位置するらしい。


「体の力を抜き、リラックスした状態を作る。何かの上…手の上に、イメージするんだ。上空へ向かって静かに揺れる炎を」


 指示通り、小春は両手の上に炎をイメージする。


「[(ファイア)]」


 上へ向かって煙が立つ…いや煙はいらない。咳き込んでしまう。掌よりも小さく、熱くなく。詳細なイメージを持って呪文を紡げば、ポッと音が聞こえる。


「!」


 目を開ければ、小春の手の上には可愛らしいサイズの炎が出来ているではないか。小春は驚き、そして感動した。自分にも魔法が使えるんだ、と。両手を使っている為、アーノルドの方を向くことしかできない。しかし小春は満面の笑みで炎を差し出してみせる。子供が何か親に見て欲しくて「見て見て!」と差し出すときと同じだ。


「アーノルド!アーノルド!見て見て!火!火、でた!私にも魔法使えた!凄い!私の手の上に火が出たよ!」


 手を出したまま興奮する小春に対して、アーノルドからは何の反応もない。不思議に思って顔を上げた先には、じーっと小春を凝視するアーノルドがいた。驚いて思わず「ぅお」と声が出てしまう。

 凝視はいつものことなので対して気にならないが、どうしたのだろうか。


「えっと、アーノルド?この火、なんか問題でもあったかな…?」


 伺えば、はっと息を吸ったアーノルドは首を振る。


「…いや、良く出来ている。初めてとは思えないほど上出来だ。イメージがしっかり付いている証拠だろう」


「えへへ、そうかな~」


 沢山褒められて嬉しくなる小春。すると小春の名前を呼ぶルークの声が聞こえた。魔法を使うにあたって、問題が起きないようにと距離を取っていたのでルークとイリスは小春よりも少し遠いところにいる。彼らの元へ行きたいが、小春の手の上には未だ燃え続ける炎が。


「あれ、これってどうやって消えるの?」


「…消えるイメージをする」


 さきほどアーノルドがしていた感じか。

 消えるイメージをした次の瞬間には炎は消えてなくなっていたので、小春は安心してルークたちの元へ向かう。手をぐっぱぐっぱさせても、焼けた痛みや熱さは感じない。魔法って凄い。


 もし皆が炎を出せるようになったら、四人で互いに温め合えるから、冬とか便利だなと小春は考えていた。


「…無詠唱…」


「ん?アーノルド?どうかした?」


 アーノルドが何か言った気がして振り返るが、彼は「…いや、なんでもない」と首を振った。

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