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フェークパラダイス

掲載日:2025/01/10

 酒を飲むといかに自分がダメな奴かということが浮き彫りになる。喋りはおろか声を発することも文章を書くことも、自力で強く命じなければ一切が不可能になってしまう。酒を止めればいいという考えもある。しかし止めたとして自分がロクでもないという事実は何も変わらないわけだ。飲酒はいわば自己の確認作業という名目を与えられている。僕はこれからも酒を飲み続けて、すっかり夜に停滞してしまった砂地の感触を忘れないで居ようと思う。季節を問わず海をみて飲むことが多かった。

 タイトルだけがあって、中身が一向に膨らまない小説案だけが溜まりつづけた。しかし実際に形になるのはいつも、音楽の推進力を借りて書いたほとんどが即興の、小説と自称しているだけの乱雑な文章であり、第一最近は思いついたことをメモするのもアホらしくなっているので仮のタイトルというのもすでに記録上には消去されて無くなっていた。なんとなく記憶しているものもいくつかあるが、頭に残っていても焦燥感に駆られないのであればきっと僕がそれを書き始めることはないのだろう。あるいは惹かれるビジョンでも持って熟成しているのであれば別だが、ただ埃を被ったタイトルが片隅に置かれているだけというのが現実だ。本当に酒しか持っていなかった。音楽はストリームで済ませ、CDもレコードも所有していなかった。海が綺麗だと分かるていどの審美眼は持っていたが、どこの海の方がどこの海よりも優れていると比較できるほどの審美眼はなかった。酒と音楽と海が好きで、そのくせ騒ぐようなことはしなかった。

 大手企業が画策するテレビコマーシャルのインタラクティブ化に関する資料と、陰謀論者の祖とも呼ぶべきニューヨークの弁護士の痛烈批判文章を読み比べるに、後者の方が圧倒的に難解且つ娯楽性に富んでいるということだ。弁護士の方にはその手のファンが描いたカートゥーンタッチのマンガが添えられていたことも勝因だが、決してそれだけではない狂気を帯びている。狂気とは圧倒的に柔軟だからこそ恐ろしいのだ。左上から右下へ向かってスーパーの刺身を素手で握りつぶす単純作業を自らの業務として分け与えられたとしたらどうだろう。あるいは発作的緑内障か。正常な眼圧を取り戻すべく買った市販目薬を差してみてもなお苦しく、深夜に新聞配達のバイクが家から家へと走っている時間帯に目を覚ますと、あの吐き気を催す鈍痛の3時間を過ごし、その限度を超えてからはすんなりと痛みが引いていくのに付け込んで、まるで根本の問題から完治したと思い込みながら一方では刻々と進行する症状悪化の一途を影の内に霧散させたままだった。苦しい時間を終えてからは一旦自分の生きているうちから取り外し、その時間は地獄に居たのだと思うようにしている。また幸せな時間も同様に、ただその瞬間が天国だったからだと思うようにしている。心底、単なる眼精疲労だったらと思っている。叶えば僕は至上のラックの持ち主だった。

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