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ウチの騎士団長は未来が視えます!…僕が今日死んじゃうってホントですかッ!?  作者: キモウサ


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07. 真夜中は真っ暗ですよ?

 団長たちの話を聞いていて、僕の中に生まれた疑問がこれ。

 


 ――なぜ、第一王子は真夜中に礼拝堂を訪れたのか?



 真夜中だよ?あんな場所に第一王子がいるなんておかしいよ。礼拝堂であることすら、よく知られていない建物だからね。僕も庭師の休憩場かなにかだと思ってたし。


 仮に誰かがアマンダ様の礼拝堂に入る姿を見た――としてもおかしい。だって真っ暗だから。あのあたりは照明がなにもない。自分で持参した灯りしかないんだ。


 誰かが礼拝堂にいたとしても、外から気がつけるはずないんだよね。


 そんな僕の疑問に応えてくれたのは団長だった。机の上に置かれている団長が描いた配置図のある部分を指でトントンと指し示す。



 「ここ、何があると思う?」



 団長が指し示したのは、礼拝堂からけっこう離れた場所にある建物だ。でも、その場所からなら、礼拝堂を目で確認することくらいはできる距離かな。


 このあたりは庭園として整えられているから、高い樹木も植えられてない。だから木や他の建物が邪魔で礼拝堂は見えないなんていう問題もないと思う。


 もちろん、明るい昼間ならの話だけどね。夜は絶対無理。暗くて見えないもん。

 

 

 「――そこは第一王子殿下がお住いの離宮では?」



 アーネストさんの言葉に団長がうなずく。そうか、ここに第一王子殿下のお住まいがあったのか。


 でもロボスト副団長は納得していないみたいだ。僕も気になっている点を指摘してくれた。



 「確かに、第一王子殿下の離宮から問題の礼拝堂は見えますが、真夜中ですからね。当時は真っ暗だったと考えられます。そうとう騒がしくしないと気が付かないのでは?」



 そこなんだよね。ちょっと距離が離れているから、礼拝堂で多少の音がしたくらいでは離宮にまで届かないと思うんだよ。


 もちろん大声で騒ぐとか、何かが爆発するくらいの音があれば気がつくと思うよ。


 でも僕が話を聞いた女官は、礼拝堂を見に行った時に照明がついていて明るかったなんて発言はしていなかった。


 むしろ真夜中だったので暗くて、はっきりと見えなかったので見てことに確証が持てないって言ってたくらいだからさ。


 だから、昨夜、礼拝堂で大きな音はしなかったんじゃないかと僕は思うんだ。



 そんな風に、この話はなんだかおかしいといった表情の僕達を見回して、団長はニヤリと笑った。



 「そうだよな、ロボスト。あたり一面、真っ暗なんだ。普通は真夜中に礼拝堂で、何が起こっても誰も気が付かないだろう。だがな、この礼拝堂は聖女にゆかりのある場所なんだぞ。ほら、なんか思い出さないか?聖女にまつわる有名な話があるだろ……」


 「聖女にまつわる話ですか?うーん。私はあまり歴史の成績が良くなかったんですよね……」


 「――もしかして、『聖女の秘跡』のことですか?それなら第一王子殿下が真夜中の礼拝堂に足を運んだことも辻褄が合いますね」



 さすが歴史オタクなアーネストさん!でも『聖女の秘跡』ってなに?僕、聞いたことがないんですけど。


 

 「まあまあ、ロボスト、そう落ち込まないで。これは歴史の教科書には書かれていない話ですからね。知らなくても大丈夫ですよ。なんというか聖女様の功績を称える、一種のおとぎ話のようなものなのです――いえ、今まではそう思ってました」

 


 アーネストさんの説明によると、『聖女の秘跡』というのは聖女様が自分の聖女としての力を、他の人の目に見える形で表す事を言うらしい。



 「流行り病で大勢の民が苦しんでいたとき、それを見たある少女が神への救いを求めたのです。そうすると少女の体が光り輝き、その身に聖なる力が宿ったというのが有名な聖女様の逸話『聖女の秘跡』ですよ」



 少女が光輝いた!?でもそれって、遠い昔のおとぎ話でしょ?



 「グーフィー、お前はすぐ顔にでるな。『聖女の秘跡』なんて、単なるおとぎ話じゃないのって思ってるな?人が光り輝くなんてありえないと、そう思っただろう?だが場所が場所だ。本当に不可思議なことが起こったのかもしれんぞ」


 「そうですよ、グーフィー。確かに奇妙な話ですよね。でもね関係している人たちの動きを見てください。どうも団長のおっしゃってることが正解のように思えるんですよ」

 


 アーネストさんも団長に賛成のようだ。第八騎士団の頭脳と呼ばれているアーネストさんが言うのなら、そうなのかもしれない。

 


 「これまでの話から、事実だけを並べてみましょう」

 


 アーネストさんは、僕たちの前に指を1本立てる。

 


 「まずひとつは、聖女が現れたということです。ロボストが騎士団の全体会議で公式に通達された話なので事実とみていいでしょう。それに教会が直接接して、なんらかの方法で確認しているようです。ですから、この国が公式に本物だと認めた聖女は実在します。中身は分かりませんが……」



 アーネストさんは軽く眼鏡の位置を直してから、2本目の指を立てる。



 「2つ目の事実は、第二王子殿下が婚約者のスピナー家の長女アマンダ様に婚約破棄をつきつけ、続いて次女のプリシラ様と婚約を結んだということです。ここまでは事実です。なぜならパーティ会場という公の場で、多くの人の目の前でなされたことだからです。私が知り合いの事務官たちに聞き込み調査をした結果、そのプリシラ様との婚約はすでに破棄されたということですが、これはまだ事実かどうか分かりません」

 


 確かに、プリシラ様との婚約破棄は、事務官たちの噂話でしかないよね。でもまあ事実だと思うけれどさ。


 だって、アーネストさんの知り合いの事務官が言ってるんだよ?優秀で真面目なアーネストさんが信頼する人が言ってるなら、そりゃ事実でしょ。



 「3つ目。第一王子殿下がスピナー侯爵家の令嬢の護衛を、我が第八騎士団に依頼してきた。これはちゃんとした正式な依頼なので書類も残っています。なので事実です」



 ということは、この件に関する事実は3つってことだよね?そう思っていたら、アーネストさんが面白そうに僕を見た。



 「グーフィー、違いますよ。事実は3つではありません。4つです。団長があなたが死ぬ未来を視た。これも事実です。ご愁傷様……」



 ああ……。それがあったね。忘れてたよ。



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