腹痛王子と体育会系美少女
初投稿です。
「ゴール(トイレ)が見えても、心と肛門緩めるな」
これは俺、福津 類の福津家の家訓だ。
代々のハライタ家系である福津家で生まれてた子供は「パパ、ママ」を言う前に「ぽんぽん いたい」と言うのだ。
そして赤ちゃんの頃から毎食後ビ◯フェルミン飲み、5歳でス◯ッパデビューしている。病院の先生には診察室に入った瞬間「あぁ、いつものやつね」と胃腸薬と漢方薬を出してもらえるので診察時間に10秒もかからない。
どうだ、この腹痛界のエリートぶりは!
泣くを通り越して笑えてきてしまう。
そして今日俺は、多々なる腹痛を乗り越えて高校生になる。
中学の時には「腹痛王子」なんていう不名誉なあだ名をもらったけど、今度こそはそんなあだ名を貰わないと心に強く誓った。
今日も腹を冷やさないように腹巻を巻いてきたし(カイロ付き)これで春でも少し肌寒い体育館でも大丈夫だ!
「類、おはよう!!!」
バシッ
「いってー。陽菜お前ふざけんなよ!」
自転車に跨り、後ろから背中を叩いてきた
この暴力女が剣王 陽菜だ。
陽菜は家が近所で腐れ縁。
幼稚園から中学校全てが同じクラスだった。
まさか高校までもが一緒とは…泣
この暴力女には子供の頃から何度も「う◯こくん」とからかわれ、あれやこれや今でも思い出すと腹が痛くなるトラウマをたくさん俺に作ってきた女だ。
しかし憎たらしい事にスポーツ優秀、中学ではバスケ部キャプテン、成績も学年でトップ、そして肌の色は透けるように白く、目はパッチリとしており、長い黒髪はサラサラのポニーテールいつもしており、毎日運動をしている為かスタイルは抜群だ。外見だけだと超美少女である。
なので周囲から羨望の眼差しで見られる事が多い。そしていつも俺のそばについてくる為、男友達からは「紹介してくれよ!」と後が立たない。俺もこんなに引っ付かれるのはごめんなので何回か紹介をしてやるのだが「タイプじゃない」と断られる。
もちろん、そんなひっつき虫がいては俺に彼女なんてできるはずもない。高校ではお願いだから離れて欲しいというのが切実の願いである。
そしてなんといっても
暴力女の一番の武器は子供の頃から病気した事も怪我した事も一度もない超優良健康児であることだ。
俺は腹痛はもちろんだが、毎年インフルエンザになったり階段で滑って転んで骨折したりと疫病神が付いているとしか思えないくらい病気や怪我を負ってしまう。
そんな俺の気持ちは1ミリも理解できないというのがこの暴力女の腹がたつポイントだ。
「類〜入学式始まっちゃうよー!早く行こうよ」
入学祝いに買ってもらったとわざわざ買った日に俺に自慢してきた赤い自転車をゆっくり漕ぎながら陽菜が言った。
「あぁ?いいよ、俺は…この入学式という緊張感が高まるイベントの前に走るなんていう腸を刺激するような運動なんかしたら、ス◯ッパ様にお世話になってしまうからな」
「えー。でももう集合時間まで10分もないよ?……そうだ!!陽菜の自転車に乗りなよ!!類1人くらい余裕だよ!」
陽菜はそう言って片腕でマッチョポーズをとった。
うーむ。どうしようか。確かに何だかんだ集合時間まで10分もない。クッ、朝のトイレに時間がかかってしまったからだ!そして徒歩だとこのままいけば15分かかってしまう。完全なる遅刻だ。初日から遅刻っていうのも先生たちに目をつけられそうだし、その理由が朝のトイレでっていうのも「腹痛王子」というあだ名の第一歩になってしまう可能性もある。
「よし、暴力おん…じゃなくて陽菜、乗せて行ってくれ」
「えっま、まじで?!」
そう言ってる陽菜の顔は赤い。
…もしかしてこいつ熱があるのか?
これまで一度も、こいつの体調不良見た事がないが、初の体調不良が見られる日なのか?!
「陽菜、大丈夫か?熱でもあるのか?」
俺がそう言って、陽菜のおでこに手を置く。
うーん。確かに熱といえば熱っぽいのだが…
「だ、大丈夫だから!!あっほら時間が…類!!乗るなら早く乗って////」
「殺るなら、一思いに殺って下さい!」
と言わんばかりに陽菜は目をぎゅっと瞑り、
バンバンと自転車の後ろを叩いている。
…そっか陽菜も当たり前だが遅れたくないんだな。
自分の事だけしか考えていなかった自分を恥ずかしく思う。
(というか、ここは俺が漕ぐ場面ではないだろうか)
と思ったが、どう考えても陽菜の方が早く漕げるので、ここは男としてのプライドを捨てて俺は素直に荷台に乗った。
「ひゃっ?!」
「そんなに嫌がんなくてもいいだろう?」
「別に嫌がってなんかは…まあいいや。じゃあ行くよ!」
陽菜は自転車を漕ぎ出した。
でも数メートルしたところで自転車は止まった。
「どうした?」
「あの…漕ぎにくいの…」
「へ?」
「密着してくれないと重心が2つに別れちゃって漕ぎにくいの!!!だから私の腰に手を回して!!!…そこから上は…変な所は、触んないでね!!!!」
「は、はいぃぃぃ」
あまりの剣幕に俺は即座に手を陽菜の腰に回した。
(意外と腰回りが細く、くびれがある。それに髪の毛からはいい匂いが…)
って俺はなに考えてるんだ!
(それにしても上の変な所って…あっ!)
わかった瞬間、俺の顔はボンと火がつく!
陽菜はスタイルがいいと言ったが、胸もその…スタイルがいいのだ!!
(なんか急に緊張してきた!腹がいて〜)
チラッと陽菜の顔を見るとまだ熱があるかのように顔が赤かった。
陽菜はガシガシと俺では出せないほどのトップスピードを出して漕いで行った。
周りからは好奇の目で見られているのを感じた。
(だめだ。見られているというだけで緊張で腹が〜)
そんなこんな考えていると陽菜の持ち前の運動神経のおかげで思ったよりも早く学校に着いた。
無事学校に着いたものの、俺はすぐトイレにかけこみ、そこからずっとトイレに閉じこもり入学式に出れず。陽菜は陽菜で入学初日から2ケツで登校したところを教師に見つかりとても怒られたと後で知らされた。
そして周りから「美少女と腹痛で入学式に出れなかった男」として名を馳せたのだった。