第28話・発進には時間が掛かるようです
ようやく始まりました。潜水艦の試験航行。
早速、乗り込んでと言いたいところですが、準備をしないといけません。
まずは設計士コンピューターさんの移動。このまま置いておくと、潜水艦と一緒に海水に浸かる事になりますから、ドックの管制室に移動してもらいましょう。
ついでにカニ助も20匹ほど潜水艦に乗ってもらいましょうね。
彼らには艦内整備と戦闘補助を担当してもらって準備万端です。
そして最後に俺が潜水艦に乗り込みます。
艦内は明るくしてあり、発令所もこの大きさ(30m級)の潜水艦にしては広めにしてあります。まあ、一番場所を取るエンジンやら発電装置やらが魔法で簡素化されているので、その分スペースに余裕が出来ましたからね。
そんで、司令官用のシートに座り、高らかに潜水艦ゴーレムを起動させます。
「ゴーレム!起動!!」
掛け声と共にブゥーンと低い音が潜水艦に響き渡ります。
周囲の計器類のメーターが光り、ゴーレムが起動したようです。
『はじめまして、マスター』
さすがはゴーレム、潜水艦でもしゃべくりやがりますなぁ。
「はじめまして。これからの航海、ヨロシク頼むよ」
『ハイ、しかと務めさせていただきます。で、早速なのですが、ワタシの名前と言いますか艦名を賜りたいのですが……』
ああ〜艦名ですね。やっぱり艦名がなきゃカッコつきませんよね。
う〜ん…、どうしようかなぁ〜。
自衛隊の潜水艦なんかは「〇〇しお」ってなってたねぇ〜。
ならば……。
『あ!ちなみに、潜水艦の艦名は『〇〇しお』なんだからって、安易にハカタとかアジとか食塩みたいな艦名にしようとしたら、魚雷発射管から放り出しますからそのつもりで……』
あ……はい……ちゃんと考えます……。
えと……そうだよね。ここは異世界なんだから、わざわざ元の世界の慣例に習う必要はないよね。異世界モノっぽいのを考えましょう。
「んじゃ〜『オルカ号』ってどうかな?」
『……。これまたビックリするほど捻りも何ものない艦名ですね。脳ミソ使ってるんですか?』
チョット!!それって言い過ぎじゃない?
そりゃ俺にはネーミングセンスなんてないけどさぁ。
ガンバってそれっぽい艦名を捻り出したんだから、少しくらい褒めても良くない?
『は?こんな脊髄反射みたいに脳ミソ使ってない艦名を褒めろと?いくらマスターと言えども、そんなムチャぶりはやめて下さい』
脊髄反射って……。そんな言い方ある?それっていじめだよ!言葉の暴力だよ!
『言葉の暴力が嫌なら物理の暴力の方がイイですか?』
………いえ……。言葉の暴力だけで結構でございます……。
でもさぁ、さっきも言ったように俺にはセンスなんてないんだからさぁ。
『まあ、これ以上マスターがスカスカの脳ミソを絞ったところで、脳汁の一滴足りとも出ないでしょうから諦めてオルカ号と名乗りましょう』
言い方ぁ!!
まったく…。『オルカ号』だって一応は由緒があるんですよ。
有名な鮫の映画で鮫狩りに出た船の船名が『オルカ号』だったんですからね。
まあ、最後は沈没しちゃったけど……。
と、まあ紆余曲折はあったけど無事に艦名が決まりました。
『両者とも問題は無いか?無いならばドックに注水を行いたいんだが……』
ドックの管制室から設計士さんが催促してきました。
「うわ!?ちょ、ちょっと待ってすぐに準備するから!!」
艦名の何やかやで何もしてませんでした。急いで準備をしましょう。
「オルカ号!!発艦準備!!」
『了解。水密ハッチ閉鎖を確認。各部署、水密の確認。準備完了です』
「よし!設計士さん!注水をお願いします!」
『了解。ドックへの注水開始。注水弁、開け!!』
設計士さんの命令でドックの各所から海水が流れ込んできました。
いよいよ、脱出です!エクソダスです!!
『ドックへの注水を確認。注水完了まで約4時間の予定』
え?そんなに時間が掛かるの?
『当たり前じゃないですか。一体、どれだけ大量の海水を入れると思ってるんですか?』
いや、このドックって海面下じゃん?扉を開ければ、簡単に満水になるんと違う?
『は?バカなんですか?アホなんですか?脳タリンにも程がありますよ?』
だから、言い方ぁ!!そこまでヒドイ言い方しなくてもイイじゃないですか。
『なら、少しは考えてください。いっぺんに注水したらドックもワタシも水の勢いでメチャクチャになってしまいますよ』
ああ、そうだねぇ…。だからゆっくりと注水するんだ…納得。
『もう、バカと付き合うのも疲れますね。後はこちらでやっておきますから、マスターは昼寝でもしていてください』
あ!そう?4時間もどうしようかと思ってたんだぁ〜。助かるよぉ〜。
んじゃ、寝てくるねぇ〜。
『ああああ!マスターの脳ミソを活性化する魔道具は無いのか!?いくらワタシがゴーレムでも疲れるんだけど!!』




