第26話・ブラックには監査が入るものです
仕事の成果は上司のモノ!
上司のミスは俺のモノ!!
すべては会社の為に!!!
命を賭して尽くします!!
皆さん、会社の為に生きてますか?
僕は生きてます!!!
…。
……。
………ウソです!!
ウソに決まってます!!そんな地獄なんて願い下げです。
だってね、『過労死軽減』の耐性が『過労死無効』ってのにレベルアップしたんですよ。スゴイでしょ?
どこぞのブラック企業が、もろ手を挙げて大喜びしそうな耐性ってヒドイと思いませんか?
「異世界に来てまで残業って…、まさに地獄だ…」
潜水艦ドックに寝室を増設してからというもの、行動範囲が極端に狭くなりました。しかし、人間は太陽に当たらないと変調を来すので三日に一度、3時間だけ外に出ても良いと、設計士コンピューターさんから許可が出ました。
前に居た世界でAIが人間を奴隷化するって話を聞いた事がありますが、俺は異世界で実体験をしています。
ハッキリ言って、囚人と変わりません。キツいです。
さて、西側の砂浜に来ました。潮風が心地良いです。癒されます。
たった3時間しかありませんが、自由を満喫しましょう。
付き添いのカニ助が心配そうに俺を見ています。……大丈夫だよ。
しばらくの間のんびりと日光浴を楽しんでいると、なんだか目の前の空間に星の様な光の粒子がキラキラと降り注いでくるじゃありませんか!
アカン……。こんな幻が見えるようになったら、俺もうおしまいだわ…。
なんて絶望感を持って、その光景を見つめていたんですが…。
光が収まると、そこには見た事がある人物が立っていました。
「アンタ…。こんな所でナニやってんのよ」
女神様でした。しかも、なんだか御怒りモードです。
「……え?……いや……ナニしてるって言われても……、その…今は日光浴の時間でして……」
「そんな事を聞いてるんじゃないわよ。どうしてこんな孤島にいるの?って聞いてるの!!」
は?……。ナニ言ってるんでしょうか?突然、目の前に現れたと思ったら理不尽なお叱りを受けましたよ。
「いや…どうしてって……それはこっちが聞きたい事でして……」
なんでしょうか?こんなに理不尽な怒られ方をしてるのに、なぜか下手にしか出られません。これも女神効果というモノなんでしょうか?
「は?!アンタ、女神を舐めてんの?口答えするんじゃないわよ!!」
「そう言われましても…転移して目覚めたのがこの島だったので……」
「ナニ!?アタシがミスったとでも言うの?」
「いえ…そんなつもりは……。ただ、この世界じゃないはずの『ダンジョンマスター』の力も使えちゃってますし…その…なんかあったのかなぁ…なんて…」
こうも攻め立てられると、俺はちっとも悪くないはずなのに、なぜか罪悪感を感じてしまいます。
「ナニ言ってるの?『ダンジョンマスター』の力が使える?そんな事あり得るはずがないじゃない…。何かの拍子にバグったのかしら?」
女神様はブツブツ言いながら考え込んじゃってます。
でも、この『ダンジョンマスター』の力のおかげで今まで生きてこられたのは事実です。その事はバグであっても女神様に感謝しないといけません。
その事は一応、女神様に伝えておきましょう。
「バグだかなんだかはわかりませんが、この島で生きていられたのは、この力のおかげですし、それに今進めている脱出計画も『ダンジョンマスター』の力があったからこそ出来た事なので、そこはありがたく思っています…」
「まあ、今はバグ云々に関して考えても仕方ないわね。ところで、アンタ今、脱出計画があるとか言った?」
あら?この女神様は人の感謝の言葉をスルーしやがりましたよ。
「ええ、この島から出ないことには冒険すら出来ませんからね。でも、その脱出計画で死にかけてるんですけども…」
「死にかけてるって……。アンタ、またアタシの仕事を増やす気でいるの?」
「いえいえ、そんな事は微塵も考えてませんよ。ただ、自分が造ったコンピューターに奴隷のように管理されちゃって困ってるだけです」
「なんだ、そういう事か…。楽しようと思って造ったAIに支配されちゃった系ね。科学が発展した世界でよくあるパターン」
「ご理解が早くて助かります。このままコンピューターに殺されちゃうのは嫌ですからね。女神様の力でサクっと解決して下さい」
そう、女神の魔法でサクっと最初の場所に転移してもらえれば、この地獄から抜け出せるはずです。
さあさあ、サクっと魔法で転移してください!!女神様!!!
「わかったわ。なんでかわからないけど、こんな辺鄙は所に転移させちゃったんだからね。お詫びとして、その悩みを解決してあげましょう。じゃ、案内しなさい」
え?案内?どこへ?
「なにしてんのよ。さっさと、その悪徳コンピューターの所に案内しなさいよ」
なんでそうなるの?俺はこの島に堕とされた現状を解決して欲しいんであって、ブラックな労働環境を解決して欲しいわけじゃないんですが……。
そう訴えたところで、この女神様は人の話なんか聞きゃしないんですわ。
俺はガックリしながら潜水艦ドックへと案内を開始しましたよ。
まあ、考えようによっては、労基の監査が入るってことだし、しかも女神様の監査なんだから確実に改善されるはずです。
改善がされなかったら天罰モンですからね。
あの傲慢コンピューターに天罰を下してもらいましょう。
「はぁ〜〜。これは大したモノねぇ〜〜」
案内された女神様は潜水艦ドックの内部を見て、しきりに関心しています。
どうです?スゴイでしょ。これを造るにはすごく頑張りましたからね。
こちらが今、建造中の潜水艦です。んで、コイツが件のコンピューターです。
「ふ〜ん…。アンタがこのポンコツを支配してるコンピューターね」
『なんだその無礼なヤツは?この島には人間は一人しかいないはずだぞ?漂流者か?』
「なんか生意気な機械ね。まあイイわ。アタシはこの世界の管理をしている女神の『シレーヌ』っていうの。ヨロシクね」
『女神?ああ、このポンコツの記憶にあった上位存在か…。で、その女神とやらが私に何用だ?』
……なんか腹が立つ会話です。さっきから人の事をポンコツポンコツと!!
しかし、あの女神様はシレーヌさんって名前だったんですね。知りませんでした。
「アンタさ、あのポンコツに過酷な労働を強いてそうじゃない。そこんところを是正して欲しいんだけど、どうにかならない?」
『どうにかしろと言われても、無理だ。このスケジュールはヤツの希望なんだからな』
いや、潜水艦の完成は『なる早』で!って言ったけどさ。過労死するほど早くしろとは言ってないんですけどぉ。
「なに?アイツの希望なの?でも、希望に沿ってもアイツが死んじゃったら意味ないんじゃない?アタシとしてもアレに死なれたら困るし……」
『過労死の心配か?それなら安心して良いぞ。ヤツは死なないようになっている』
は?ナニ言ってんの?いくら『過労死無効』の耐性があってもキツいんだよ!
「なんだ。ちゃんとスケジュール調整は出来てるんだ。それなら安心ね」
安心じゃないよ!!不安しかないよ!!
「アイツが死なないんだったらOKよ。このまま続けてちょうだい」
オイ!!労働環境の改善はどうした!!俺が死ななきゃ地獄が続いてもイイてか?
『了解した。ヤツが死なないよう全力を尽くそう』
お〜い。そこのお2人さん、人の話を聞こうよ。俺は労働環境の改善を訴えてるんだぞ!!
しかし、両巨頭の話し合いはこれで終了したようです。
「そういう事で、アンタは死なないから安心して脱出計画に邁進しなさい」
そう言って女神様は光と共に去っていったのでした。
……ウソ〜〜ん。地獄継続決定なの?
神様の世界には労働基準局の方はいらっしゃらないのかな?
労基の神様ぁーー!!ヘルプミーーーー!!!




