表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法のメルヒェム  作者: あさぎれい
8/10

紅の戴冠



-VIII-



 王になることを提案(ていあん)された次の日、ショーマはマルティリアの部屋に呼ばれました。


「心配をかけたわね。もう大丈夫よ」


 ビルバム将軍の死後、室内にこもったきりになっていたマルティリアは、ショーマには以前よりも()せて小さく見えました。


「マルティリア、俺は──」


「聞いたわよ。ショーマなら王様をやってもいいんじゃないの。それに私、あんたと……け、け、けっこん、してやってもいいんだから!」


 マルティリアはショーマの返事を待たずに、彼に木の(つるぎ)を投げ渡しました。


「か、体がなまっているのよねっ! 運動相手になりなさいよ!」


 ショーマがまともに構えるよりも前からマルティリアは打ちかかってきます。ですが、かつてはあんなにも太刀打(たちう)ちできなかった彼女の剣をショーマはいつの間にか見切っていることに気づきました。


「ショーマは……ほんとに強くなったわ!」


 マルティリアはそうは言いながらも弱っていたとは思えない動きでした。


 二人はしばらく剣を打ち合います。それは言葉よりも雄弁(ゆうべん)に互いの信頼を語り合うかのような濃密(のうみつ)な時間でした。命の奪い合いではない剣をマルティリアと(まじ)えるショーマは、そこに()がたい確かな(きずな)を感じたのです。


 ショーマは彼女がいつしか大切な人になっていたのだと気づきました。


 そんな二人の様子をこっそりと(のぞ)いていた老騎士(ろうきし)ジェムホフは、お城の人々に自分が見たことを「お二人とも、なかなか激しかった。誰も邪魔(じゃま)しちゃいかん」と伝えました。


 おかげで皆、色々と誤解(ごかい)しました。


 なかには「あの二人の子供ならきっと元気で強い子が生まれるに違いない」などと言い出す者までおりました。


「マルティリア、聞いてほしいんだ」


 さわやかな汗を流したあと、ショーマは話を始めました。


「俺には好きな女の子がいたんだ。だけどあいつを、俺は守りきることができなかった」


 ホノカのこと、ユートのことを、マルティリアに伝えました。


 また自分は竜神(ドラグロード)に力を(さず)かり、魔王(まおう)を探して戦うという約束を交わしていることも。


竜神(ドラグロード)は、南の王になることは魔王(まおう)に対抗するにはいいことだなんて言ってるけどな」


「なればいいじゃない。私がやるより、あんたがやればいいと思うし」


「マルティリアがそう言うなら、ビルバムのおっさんも許してくれるかな。でも、俺、魔王(まおう)と戦って勝てるかどうかわからないからさ、結婚は待ってもらいたんだ」


 ショーマは、魔王(まおう)を倒せればきっとマルティリアのことを守りきれる自信になると。でも、倒せないことだって考えられる。結婚をするのはすべてが終わってからにしたいと伝えたのでした。


 マルティリアは、彼女らしい言葉を使いショーマの考えを受け入れました。


 あくる日、【南の国】の王城で戴冠(たいかん)儀式(ぎしき)が行われました。


 (まこと)竜帝(ドラグカイゼル)にのみ可能とされる能力で、王である(あかし)【輝ける瞳】を(さず)ける儀式(ぎしき)です。


「おおっ、ショーマの両目が(くれない)に強く輝いたぞ!」


 ジェムホフが叫び、その場にいた者はショーマに南の王になったことの証【(あか)き輝ける瞳】が宿(やど)ったことを目撃いたしました。


 こうして弟君(おとうとぎみ)はご自身が本物の竜帝(ドラグカイゼル)であることを示され、ショーマは【南の王】となったのです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ