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剣と魔法のメルヒェム  作者: あさぎれい
6/10

反乱



-VI-



 若き東の王アズナリュームが暗殺の(やいば)に倒れたことで【東と南の国】はことごとく分裂(ぶんれつ)することになりました。


 また人徳(じんとく)をもって知られていたビルバム将軍が王を手にかけたことは多くの人々から疑いをもって見られておりました。


 事実、ビルバム将軍は無実であり、真犯人らの奸計(かんけい)にはまり処刑(しょけい)されたことにより口を(ふさ)がれてしまったのでした。


 アズナリューム王のいなくなった【東の国】では後継者をめぐって争いが勃発(ぼっぱつ)。王に子はなく、後継ぎに指名されていた(おい)のアズナバランも王と同時に殺害されていましたので有力な継承者はおらず、東の軍のなかから力を持つ者たちが続々と我こそが次の王だと旗揚(はたあ)げをしたのです。


 このことを受けて【南の国】では前の王を再び(くらい)につけようとする勢力が立ち上がります。


「デーバム様、マフレヌ様が蜂起(ほうき)した反乱軍によって()たれたようです」


「何だってあの二人が!」


 父の死によって深く心を痛めたマルティリアに代わって領地を治める役割を担っていたショーマに報せがありました。


 デーバム、マフレヌはともに戦った【東の国】の騎士(ナイト)たちでした。


 ビルバム将軍のように南の国に領地を与えられていたのですが、それが倒されたというのです。


「じきにここにも攻めてくるでしょう」


 老騎士(ろうきし)ジェムホフがショーマに言いました。


 ビルバム将軍が【中央の国】から(のが)れるときに従えてきた側近たちはジェムホフの他は皆、将軍と行動をともにしていました。


「ジェムホフさん、マルティリアを頼みます。俺はトロワール砦で反乱軍が攻めてくるのを迎え撃つ」


 動かせるわずかな兵士らをまとめて砦に向かおうとするショーマ。できることならビルバム将軍から預かった領地を守りたいと考えていました。


 それができないならせめて、マルティリアだけは逃してやりたいとも。


「城の門前に、武器を持った農民たちが来ています。すごい人数です!」


「なんと。もはやこれまでなのか……」


 言葉も出なかったショーマの代わりにジェムホフが言いました。


 ですが、よくよく確かめてみると農民たちはショーマに味方するために集まってきていたのでした。


 ビルバム将軍は前の南の王が宝物庫(ほうもつこ)に貯めていた財宝を気前よくつかい、民のためや領地を良くすることに惜しみなく注いでおりましたから人々にたいへん慕われていたのです。


 ショーマも【南の国】で暴れる怪物(モンスター)をたくさん狩ってまわっていたこともあり感謝されていました。


 とくにポイズマビス山の大蜘蛛(おおぐも)を退治したことは国中で語り草になるほどでした。


「わたしたちも戦います」


「気持ちは嬉しい。だけど全員は連れていけない。あなた方の本当の戦いは麦を育てることだから」


 ショーマは農民たちから人を選び兵士になってもらいました。


 トロワール砦につくと、デーバムとマフレヌの部下だった者たちもショーマとともに戦うためにやってきました。


 心強い仲間を得て、ショーマは反乱軍を撃退しました。


 反乱軍はデーバムが使っていた城に入り、しばらく交戦の構えを見せていましたが前の南の王が返り咲くことに乗り気ではなかったことや裏切り者を出したことなどから勝手に瓦解(がかい)してしまいました。


 ショーマは投降(とうこう)する者は許し公正(こうせい)寛大(かんだい)な処置をとりましたので反乱は長くは続かず鎮圧(ちんあつ)されたのです。


【南の国】の各地に起きた混乱をおさめ、お城に戻ったショーマに客人がやってきました。


 今もバラバラになって争いを続けている【東の国】から避難(ひなん)してきた、前の竜帝(ドラグカイゼル)弟君(おとうとぎみ)です。


「ショーマこそ、次の【南の王】になるべきだ」


 弟君(おとうとぎみ)は言いました。


「ですが領主であったビルバム将軍にはマルティリアという娘がいます。彼女が後を()ぐべきなのでは」


「ならばショーマとマルティリア様が結婚するのがよろしかろう」


 当たり前のように口を挟むジェムホフの言葉に、ショーマは目を白黒させるのでした。



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