表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法のメルヒェム  作者: あさぎれい
5/10

魔性の胎動



-V-



 ホノカとユートが暮らす【中央の国】では、東の王アズナリュームが正統(せいとう)竜帝(ドラグカイゼル)庇護下(ひごか)においてプータック王の打倒(だとう)を宣言したことは衝撃をもって受け止められました。


「東と南が戦っているあいだに、北を叩いておかねば」


 プータックはそう考えました。【西の国】とは同盟関係(どうめいかんけい)が結ばれていましたが、【北の国】とはずっと国境線(こっきょうせん)を引きなおし合うような小競(こぜ)り合いを続けていました。


 東の王アズナリュームが攻めてくるようになれば、ここぞとばかりに北も動いてくるのは目に見えていました。


 ですから、今のうちに兵力を集中させて【北の国】を倒してしまうことにしたのです。


 ユートたち三人の騎士(ナイト)も【北の国】との戦いに駆り出されることになりました。もともとは国の中で平和を守るのが仕事でしたが命令に逆らうわけにはいきません。


「あの若い英雄たちが攻撃軍に加われば士気(しき)も上がるでしょう」


 参謀(さんぼう)の言葉にプータックは頷きます。


「そうじゃの、そうじゃの」


 ロジェーム将軍の兵士たちから部隊を編成(へんせい)し、ユートは部隊長として戦地に向かいます。


「気をつけてね、ユート」


「心配ないさ、無理はしないよ。ひょっとしたら、北でショーマのことが何かわかるかもしれない」


 ユートはホノカの前では明るく振る舞い、北に出発していきました。


 ユートがいなくなって、ホノカにとってはシスフィーネがときおり顔を出してくれるのが唯一の楽しみになりました。


 あるときユートが居ないのにも関わらずラスコーニのお屋敷を訪問しているシスフィーネを疑問に思った者がそれを彼女に問いかけました。


 そこからラスコーニのお屋敷に隠れ住む少女のことが噂になり始めます。


 やがて噂はプータックの耳に届きました。


「ラスコーニに、その娘を連れてくるように言え」


 賢者(けんじゃ)ラスコーニは王の命令とあってもそれはできないと断りました。


「なんだと無礼な。誰かラスコーニを始末(しまつ)しろ」


「王、賢者(けんじゃ)は人望があり殺すのはあまり良くないかと」


「なら、騎士(ナイト)エジムードよ、そなた例の娘を見て参れ」


 エジムードは美剣士(びけんし)と呼ばれるほど美しい男性でした。そのため国の女たちでは美しさで自分よりも劣るため興味が持てないなどと公言(こうげん)しているほどです。


 賢者(けんじゃ)のお屋敷をそっと窓から覗き込み、エジムードはホノカを見ました。


 そして一目で恋に落ちました。


「変わった美しさの娘でございました」


「なんと、そんなにか。ならばやはり連れてこい。このプータックの側室(そくしつ)にしてやろう」


 兵士たちが強引にホノカをプータックのところに連れてきました。プータックもホノカを気に入ってしまいました。


 ですがプータックはホノカに指一本触れることすらできませんでした。


 その前に、エジムードがプータックを切り殺したのです。


 エジムードは気高い騎士(ナイト)ではありましたが、それでもプータックがホノカを側室(そくしつ)にしてしまうと思うと我慢がならなかったのでした。


 ホノカはエジムードに誘拐(ゆうかい)され【中央の国】から姿を消しました。


 賢者(けんじゃ)ラスコーニは(なげ)きました。


「ああ、屋敷のまわりに幾重(いくえ)にも結界(けっかい)を張り守っていたというのに解き放たれてしまった」


 プータックが死んだことで【中央の国】が荒れるのは目に見えています。


 ラスコーニは空に暗雲が立ちこめるのを眺めました。


「ホノカ。あの子は呪われた娘……この世に混乱をもたらす魔王(まおう)(うつわ)なのに!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ