竜神の戦士
-II-
ショーマは他の二人とは違い竜神の加護があって異世界の言葉をすぐに理解できましたので、ユートよりも早く戦士として成長していました。
「魔王の気配を感じ、息を潜めていた悪しきものどもが蠢いておる」
竜神の望みに応じショーマは怪物を狩りながら旅をします。
道中、卵から孵った幼竜を庇護しました。
幼竜はショーマを母親だと思ったのか彼に余りにもなつきましたので仕方なく連れていくことにしました。
「【東の国】の若い王が【南の国】の軍勢を打ち負かしたらしい。東の王こそ、戦乱の世を終わらせる救世の英雄に違いあるまい」
「いやしかし東の王は苛烈な性格の人だと聞く。あの人こそ、魔王だという話もあるぞ」
立ち寄った町でショーマはそんな噂を耳にしました。
東の王が魔王なのか確かめるよう竜神に言われたショーマは【東の国】に向かいます。
ショーマは途中、【中央の国】の兵士たちに追われている人たちを助けました。その人たちは前の竜帝の弟君を守って【東の国】に落ち延びる旅をしているビルバム将軍と配下の兵士たちでした。
竜帝というのは竜の神に守られたこの土地で、人間でありながら竜の血を引く一族の長です。
五つの国の王たちは竜帝に認められて初めて本当の王となることになっています。しかし、最近では竜帝というのは名ばかりで【中央の国】で権力を握った人間の言いなりになってしまっているのでした。
前の竜帝はそれをよく思わず、なるべく立派な人物を王に選ぼうとしておられたのですが、まだ若いのにも関わらず突然に病にかかり亡くなってしまわれたのです。
人々は今の【中央の国】の王プータックが暗殺をしたに違いないとわかってはいましたが、プータックを怖れて誰もそれを言い出そうとはしませんでした。
「新しく竜帝になった幼い子供は、実は前の竜帝様の血を受け継がれた本当の子ではないのだ」
ショーマはビルバム将軍からそう聞かされました。
「だから正統な後継者である弟君を守らねばならん」
将軍はショーマを気に入ったようでした。
目的地は同じこともありショーマは彼らと旅をすることにしました。
「東の王が噂にたがわぬ人物なら、弟君を立ててプータックを倒してくれるに違いない」
追っ手の攻撃は熾烈でしたが、ショーマはビルバム将軍たちと戦いやがて国境を越えます。
竜神が姿を変えた刀を振るい鬼神のように戦うショーマですが、そんな彼にビルバム将軍のひとり娘マルティリアはことあるごとに突っかかってきます。
「あんたの剣は勢いだけね。てんでなってないわ!」
彼女の言うように、ショーマは訓練用の木の剣に持ちかえるとマルティリアにはまったく歯が立ちませんでした。
ショーマはマルティリアに剣を教わり、技を磨きます。
「あたしに勝とうなんて三十年早いわっ!」
「三十年経ったら、俺はおっさんじゃないか」
最初のうちは乱暴な女だとばかりマルティリアを思っていたショーマですが、何度も窮地をともにし、くぐり抜けるうちに親しくなっていきました。
ビルバム将軍はそんな二人をあたたかな視線で眺めるのでした。