異世界
-I-
いまよりも少しだけ未来のこと、とある異世界に飛ばされてきた三人の高校生がおりました。
ショーマ、ホノカ、ユートです。
三人とも同じ高校に通う二年生でした。ホノカはショーマに告白をして付き合い始めたばかりで、ショーマとユートは親友同士です。
見知らぬ森をさまよううちに三人は見たこともない怪物に襲われ、ここが自分たちのいた世界ではないことを知るのでした。
怪物から逃げるうちにショーマは二人と離れ離れになってしまいます。
ホノカとユートは、深い谷底に落ちてしまったのです。
ショーマは二人が死んでしまったと思い絶望しました。
半狂乱になって走るうちに、いつのまにか洞窟に入り込みそこで足を滑らせて地下のとても奥にまで転がり落ちました。
自分もこのまま死んでしまうのかと諦めはじめた暗闇のなかでショーマは声を聞きます。
「我輩は竜神。この地に眠る守り神である。災いをもたらす魔王の気配を感じていたところ、そなたが現れた。もしも魔王と戦うというのであれば、そなたを助けよう」
「わかった。どうせもう死んだみたいなもんだ。だったら、やってやる」
「ならばそなたに秘められた能力の一部を解放してやろう」
ショーマは今までにない力がみなぎるのを感じました。
竜神は美しい刀剣にすがたを変えます。ショーマは刀を手に洞窟を出ました。
山と森を抜けるうちにショーマはこの世界の人間たちが怪物に襲われているところに出くわします。
新しい能力と竜神の刀で怪物を倒したショーマは人間たちに感謝され、麓の村でもてなしを受けました。
いっぽうその頃、ホノカとユートは死んではいませんでした。
怪我をしているところを保護された二人は、めずらしい異世界の人間を見つけたというので怪我が治ると【中央の国】に連れていかれました。
そこに住む、賢者ラスコーニという男のお屋敷で面倒を見てもらいます。
「ショーマは、きっとどこかで生きているよ」
毎日、悲しそうにしているホノカにユートは言いました。
「僕があいつを見つけ出してあげるから」
本当はユートもホノカのことが好きでした。でも彼はそのことを秘密にしていました。
大好きなホノカのためにできること。ユートはそれがショーマにまた会わしてあげることだと思いました。
異世界の言葉を少し話せるようになるうちに、ユートは賢者ラスコーニに相談しました。
「友達を見つけたいのはわかりました。あなたには戦士と魔導師の両方の才能があります。まずは自分を鍛えることです」
ショーマの行方を探す見返りに、ユートは【中央の国】のために魔法戦士として働くことになりました。
ユートは怪物の討伐や山賊たちの壊滅など手柄を立てて認められ、やがて騎士として叙勲されるまでになります。
「ショーマ。あいつはいったいどこにいるんだ?」
ユートは異世界の月を見上げ、ショーマもどこかで同じ月を見ているのだろうかと思いを馳せます。
その頃、ショーマもまたこの世界で活躍を認められているのでした……