社の死
それはあまりにも突然すぎて、よく覚えていない。
それは暑い夏休み。
ある日この街一番の病院から電話が入った。
かけつけると、そこには社がいた。社に触れると彼は冷たくなっていた。
社は、父と同じ運命を辿った。
それからどうしたのか覚えてはいない。
ただ、社は眠るように死んでいた。彼がまた起き上がっていつもみたいにニッコリ笑ってくれそうだった……。
冷たくなった社を見て涙は出なかった。
涙が出てきたのは、社が消えた五日後だった。
社の笑った写真を目にすると、驚くほど涙が出た。
たまっていた涙が溢れ出した。
何度ぬぐっても、ぬぐいきれなかった。
子供みたいに声を出して大泣きした。
こんなに泣いたのは、父が亡くなったあの日以来。
あの時は社が慰めてくれた。
社は私の前では絶対に泣かなかった。涙目ひとつ見せなかった。
彼も同じような気持ちなはずなのに、私は何も言うことは出来なかった。
それなのに、社は気を使って一人隠れて泣いていた……。
私はその時隣にいてやることも、声をかけることも出来なかった。
その時思ったのが、社も涙を流すんだ、だから私もしっかりしなくちゃ、そう自分に励ましたつもりだった。
結局自分ばかり守っていて、全く社に慰めることはしていなかったと気づいたのは、もう、社がこの世からいなくなった時。
なんて私は無力なのだろう。
こんな私に失望した……。
そんな事に気づかないまま、私は社に慰めてもらってばかりいた。
今は私がどんなに泣いていようと、誰も慰めてはくれない。
家には私一人。
他に誰もいない。
あるのは、家族の遺影だけ。
世界にも私だけ取り残された。
他には誰もいない。
私はずっと泣いていた。