告白する宣言
「広西の方はもう用事は無いんスか?」
「うん、今日は付き合ってくれてありがとう。」
ルークが捻りに捻って出した本屋の用事も済んだ今、2人はお帰りムードだった。移動は既に始めていて、もうすぐ出入り口に着く頃だ。
そんな中、紅美がやや話しづらそうに切り出した。
「…あのね、最後にちょっとお話があるんだけど…」
「……良いっスよ。」
何の話か今更察せぬものはいないだろう。麗も目つきをより鋭くして2人を見守って…いや、ルークを睨んでるだけだった。憎しみどころか殺意すら感じる。
「じゃあそこに座ろ、飲み物いる?」
「いや、別に。」
2人は出入り口付近に設置されたベンチに座る。
その動きはどこかぎこちないようだった。紅美はもちろん、ルークも。
「話って言ったけど…実は話っていうよりお願いなんだ。」
「お願い?」
お願い?
ルークと全く同じ疑問が浮かんだ。普通告白ならお願いだなんて言わないよな…紅美に限ってお付き合いを強制するなんて無いだろうし。
…あ、告白も一応お願いか。誰もそんな前置きしないけど。
「その…私と、お友達になってください!」
「……お友達?」
………?
これは…なんだ? 自ら告白する前に振ったって事か? 好きなはずなのに良いお友達で居ましょう宣言?
いや…これは罠か。好きじゃないよ~アピールをして置いてやっぱ好きでした付き合ってくださいって言って言葉の衝撃力を強くする奴か。その布石ってことでまずは完全にノーマークにしておくんだな?
…………その説全然筋通ってないし納得いかん。
「あ、えっと…別に、ルーク君の事が男の子として意識できないって訳じゃなくて…むしろえっと、好きなんだけど…」
「お、おう。」
バレバレだったとはいえサラっと自分の気持ちを晒したな。素直になれない男女は溢れる程居るのに。
「けど、私はまだルーク君のこと少ししか見てないの!
私はルーク君の良いところを知りたいけど、それだけじゃなくて悪いところももっと知りたい! それでもっと好きになって、それからお付き合いしたい!」
結局告白ですねこれ。お付き合い前提のお友達宣言じゃねーか。
俺惚気見に来た訳じゃないんだけど。っていうかそもそも麗に無理矢理腕引っ張られて連れて来られただけだし。
「…てーと、あれっすか?
ひとまず友達になって、いずれお付き合いしたいと?」
「そうだけど、お付き合いはお互い友達になって、お互いにお互いの事をいっぱい知ってから!
だからね、まずは友達になって!」
やっぱ遠回しにお付き合い強制してるっぽいな。紅美ちゃん意外と肉食系?
「…友達は良いっすけど、お付き合いはまあ、ちょっと考えさせてほしいっス…」
「良いよ! じゃあ私達、お友達だね!」
「う、うっす…」
なんだかよく分からないが、麗の逆鱗に触れることなく丸く収まったらしい。
麗さん一瞬ポカンとしてませんでした? お口が小さく開いてらっしゃいましたよ。なんか納得したみたく頷いててもごまかせませんからね。
「…照矢君、私の悪いところって何?」
「傲岸不遜なとこ痛たたたたたたた!
び、美人過ぎて狙ってる人多いってとこかなあーたたたたた!?」
普通に欠点言ったらキレられて足を踏まれたのでなんとか切り返したと思ったけどやっぱりキレて足踏み直された。
理不尽だ、訊いたのそっちじゃん。
「……そう言う媚嫌い。」
どうしろと。
「ちなみに、私なら照矢君の悪いところはいくらでも知ってる。」
何の自慢だコラァ。テルテル君悪口大会でも開く気かえぇ?
そんなん佐那が圧倒的に優勝だ。佐那から悪口聞きまくったら数日間寝込む自信があるから俺は絶対に行かないけど。ん? 俺本人出れたら優勝じゃね? いや、そもそも出場前から殿堂入りか。
「で、向こうは話終わったっぽいしお帰りムードだけどこっちはどうすんだ? 同じく解散か?」
俺が麗の攻撃を食らってる間にルークと紅美は別れ、それぞれ帰路についていた。
紅美は手を大きく振りながら、ルークは控えめに小さく手を振り返しながらお互いに見送っている。
「そうね…
けど、私は貴方に昼食を奢らないといけないから。それが終わったら解散。」
「ん? 本当に良いのか? 気にしなくても良いのに。」
そういやさっきそんなこと言ってたっけな。
麗らしくない冗談か、なんて思ってはいなかったが、なんかこれしきのことで奢ってもらうのも悪い気がする。
なんかこれしき、なんかこれ好き。
「私の気が済まないから。あんまり高いのだったら払わないけど。」
ここであえて高いの頼んで気負わせること無く自腹を切るイケメンムーブをかますことも考えたが、さっきのお食事シーンを見てラーメンが食べたくなってしまったのでラーメンを頼むことにする。
「ならラーメンにするかな。」
「そう…じゃあ、私も照矢君と同じで。移動したらお金は渡すから頼んできて。
お釣りでデザートを買ってきても良い。」
「子供のお使いか。
でもどうせお前のデザートってオチだろ?」
つまりパシリである。まあ奢ってもらう手前文句言えねーけど。
「いえ、照矢君の分。私は多分ラーメンでお腹いっぱいだから。」
「あ、そう…そりゃありがとな。」
普通に俺のだった。裏を疑った俺が悪いみたいじゃないか。はいすみません。
そうと決まれば、いつまでも出入口に居るわけにもいけないので移動。くっ、我が腹に眠る暴食の虫が鳴いてしまう…!
あ、どうでも良いけどシロアリの腹の中ってマジで虫居るらしいね。本当にどうでも良いけど。
「はい、お金。」
フードコートの一席に座ると、麗は二等分の野口を差し出した。
二等分と言っても真っ二つってわけじゃなくてちゃんと二枚です。そう言った方が面白いかなって。ネタに走る人生であった。
「あんがと、じゃあ買ってくるな。」
それを受け取りラーメン屋に。手早く注文を済ませ、番号札を持って席へ戻る。
「ただいま、使わなかったから返す。」
「良い、財布出すの面倒だから。」
親切のつもりでお釣りを返そうとしたらまさかのお断り。お前の財布どんだけバッグの奥に入ってんだよ。
「そか。
…で、どうだったんだ?」
「どうって?」
「ルークの事だ。見極めに来たんだろ?」
「ああ…」
紅美とルークのことを気に掛けていた訳ではないが、実を言うと麗の評価は気になっていた。辛口ばかりだったが実際のところどうなのか。
客観的に見れば俺なんかよりよっぽど良い気遣いも出来ていたので問題無さそうだが。
「紅美が彼の事を好きじゃなかったら及第点くらいは出してた。」
「あんで及第点かよ…」
「いえ、落第。」
そっか、紅美がルークを大好きなんだから失格か。そうじゃなかったら及第点って訳だし。
じゃあ俺なら絶対落第じゃん。そもそもなんもなきゃ俺なら関わりに行くことすらしないだろうけど。紅美にしても麗にしても。
手が届く存在じゃないしな。俺なんかよりよっぽどイケメンだったり優しかったりする奴はいる。
だって俺アベレージの塊だし。全部人並みだ。
「可愛い妹を渡すなら大金持ちな聖人。かつ紅美が選ぶような人じゃないと。」
「そんな完璧超人いるか。」
そりゃ嫁いだら安心の塊みたいな奴なら許して良いかなって感じにはなるかもだけど。
「あ、でもルークは紅美が選んだ上に金持ちだったな…性根もそんなに悪くないぞ?」
「…墓穴を掘った。」
なんとルークさん今の条件の三分の二、いや三分の二点五、約分して六分の五は合っている。
これはもう姉公認で良いのでは?
「あとその条件に当てはまるのごく一部の社長だけだろ。
良いのか? 紅美が年が10も20も離れたおっさんと結婚しても。」
「……愛に年は関係ないとしても、離れすぎてたら早く寿命が尽きて不幸になる。よって却下。」
「素直に嫌だって言っても良いんだぞ?
なあ、やっぱり認めてやっても良いんじゃないか? アイツなら変なことはしないだろうしさ、あんな奴なかなか現れないって。」
「…行き遅れみたいなこと言うわね。」
「あ、ホントだ畜生。なんか嫌だ。
っていうかアイツら、よくよく考えたらまだ付き合ってる訳じゃないし…取り敢えず友達同士くらいなら認めてやっても良いんじゃないか?」
「…そういえばあれ、告白じゃなかった。」
「半分、っていうかほぼ告白みたいなもんだけどな。
…何が言いたいかって言うとさ。いつまでもルークの奴を毛嫌いすんなよ。
悪いやつだったらこれから友達同士として付き合っていく中で紅美も分かるだろうし、良いやつだったらもっと好きになるかもだし。
そのときにお前がルークのことを嫌ってたら紅美は嫌だろうしさ。遠い話だしあるかどうかも分からないけど。」
だってそもそもルークって佐那が好きだし。
佐那もなんか別に好きな奴居るっぽいけどな。だから紅美とくっつく可能性も充分にある。そこまでは言ってやらないけど。
「……紅美が嫌なら我慢する。
けど、もし彼が紅美を泣かせたら…私は絶対に、アイツを許さない。」
…これも進歩か。
多少でも我慢が出来るようになったのならひとまず充分だろう。後はあの二人がどう認めさせるかだな。
少し待つと番号札が鳴ったので、麗と共にラーメンを取りに行く。
2人で静かにラーメンをすすり終え、特にすることも無かったので解散。
どうあれルークと紅美の件はひとまず穏便に済んだ。後回しになっただけのような気もするが…
それはまた別の話だろう。後は若い二人でなんとかしなさんな。できれば俺の手を借りずに。
ここ最近現代異能もの書いてて遅れました。まだまだ書けてないので投稿はしばらく後になるでしょうけど。
…読みたいって要望があれば話は別ですけど。まあ無いか。




