赤面する身内
誕生日なので頑張って投稿しました。
2人が次に向かったのはフードコート。時間的に昼食にするつもりだろう。
「見てなさい。どうせあの男、奢りとか言って紅美に安っぽいバーガーでも買って来るだろうから。」
「中学生のお財布事情くらい察してやれよ…」
ルークの家庭事情は知らないが、多分俺たちよりは厳しいだろう。
俺も高校までは貰ったか貰ってないかみたいな額しかもらえてなかったのだ。収入の九割はお年玉でした。今とてもお世話になっております。
って、さっきたけー服奢ろうとしてたじゃねーか。財布肥え肥えでこえーよ。
「昼はどうするッスか?」
「今日は…ラーメンの気分かな。
先に買えたらこの席に戻ってきてて。」
「了解、けど俺もラーメンの気分なんで付いていくッス。
ついでだし奢っても…良いっすよ?」
「悪いから良いよ。二人で行こ?」
「今ちょっと言い淀んだ。本性はかなりケチに違いない。」
「さっきもっと高い服で奢るって言ってなかったか?」
「………」
多分気付いたんだな。ここで奢ってたらマジで彼氏彼女みたいな感じになるって。服奢ろうとしてた分今更だけど。
でも、アイツは振るつもりだからそこまでするとまるで期待させてるみたいで悪い気がする。しかしもう引き返せないレベルで口に出しちゃってたから言い切った…
…俺の察し良すぎじゃね? もうここまで来るとご都合主義レベルだよ。解説王目指してみっかな。
とかアホなことを考えている間に2人とも注文を終えお勤め中兼お休み中の呼び出し札を持ってくる。
最近の呼び出し札スゲーよね。大声入らずで間違いなく注文者呼べるのマジで良いと思います。
「……そう言えば、ルークさんって城津さんと仲いいんだよね?」
「先輩っスか?
まあ、それなりに会っちゃいますね~、こう、ちょっと出掛けたらたまたまそこらに居たりとか?
広西も結構仲良かったりするんスか?」
「あ~…城津さんなら、私よりお姉ちゃんかな。
っていうか、お姉ちゃんが城津さんの事を好きって言うか。」
なんとなく振り返って麗の表情を見る。
「………」
目を見開いて固まっていた。
麗は俺の視線に気付くとハッとして、
「…紅美だって失敗することくらいある。そこが可愛いんだけど。
とにかくそういうことだから今のは気にしないで。」
とやや早口で言って2人の監視に戻った。
「そうなんスか?」
「うん。だってお姉ちゃん、彼氏を作るなら城津さんを最低ラインにしなさいって言ってたし。もちろん本人は駄目だけどって。」
「あ~、しれっと妹相手に牽制してるっスね…大人気ない。」
「そうじゃないと思うよ。お姉ちゃん、いつも私を大事にしてくれてるから。昔から私が好きなお菓子を分けてくれたし、私が小っちゃい頃はよくお姉ちゃんが遊んでくれたし…」
前者は普通に良い奴だけど後者は麗に友達が居なかっただけじゃね? と思いはしたがもちろんそんなことは口にしない。本人めっちゃ近くにいるし。
ルークも何か言いかけてやっぱりやめていた。恐らく俺と同じことを考えたのだろう。
「それは意外っスね…てっきり冷たい人だとばかり。」
「そう見られちゃうのもしょうがないところはあるけど…本当はとっても優しいお姉ちゃんなんだよ?」
「…照矢君、ちょっと用事を思い出したから一緒にあっちに行かない?」
「妹に褒められすぎて恥ずかしくなってきたのとそんな妹を尾行してる罪悪感が沸いてきたのは分かるけどちょっと待て。」
やや赤面しながら居心地が悪そうに目を逸らす理由を懇切丁寧に話しながら制止する。
「そんなのじゃないから。本当に用事を思い出しただけだから。」
「妹が心配なんだろ? お姉ちゃん。」
「…貴方にそう呼ばれたら頭が冷えた。お礼に後で思いっきりひっぱたいてあげるから覚悟して。」
「暴力は良くないぞ。」
「クズ相手とはいえ殴った貴方に言われたくない。」
「クズってお前の元カレのこと?」
「元カレじゃない。あんなの彼氏じゃないから。」
麗の罵倒を聞いてもヤツの事を全く可哀想とは思わなかった。当たり前だ脅して付き合わせてたんだから。
「…あの一件はしょうがないだろ。
まあ、ムシャクシャしてたのも確かにあったけど。」
視線を2人に戻して話を続ける。
2人は丁度呼ばれたところらしく、席を立っているところだった。
「ムシャクシャ?」
「そりゃ、お前が脅されて好き勝手されそうになってたんだぞ。それで何も感じない程俺の心は凍ってない。」
「…………………」
…ん? なんか返事ないな…俺なんか変な事言った?
………なんか今あんまりよろしくない言い回しをしてしまったような気がする。
振り返るのも話しかけるのもNGな気がするのでどちらもせず2人の様子を見守る。
2人は既にラーメンをテーブルに置いている。恐らく食べ終わるまでそう話すことは無いだろう。
「腹減ったな…」
美味そうに食いやがって、今日の飲食スターボックスのコーヒーだけだぞ。ついでになんか食っときゃ良かったよチクショーめ。
「後で何か奢ってあげるから、我慢して。」
「え? 良いのか?」
「もし私が照矢君を連れて来なかったら今頃何か食べてたはずだったでしょう?
今お腹を空かせてひもじい思いをさせてるのは私の責任だから、今日つき合わせたお詫びということで。」
「お前やっぱそういう所律儀だよなぁ…良いよ別に。遅めの飯なんて珍しくもなんともない。」
後でラーメンでも食いに行こう。あの二人見てたら食いたくなってきた。
と、プチ飯テロを眺める事数分。先にルークが食べ終え、紅美は急ぐようにして麺をすする量を増やした。
「ああ、別に急がなくて良いっスよ。
俺実はまだ足りなくて、なんか他に買って食うんで。」
「そう? ありがと。」
「いや、別に。じゃあ、ちょっと行ってくるっスよ。」
ルークが席を立つ。
なるほど、ああいう気遣いもアリだな…心のメモ帳にメモっておこう。将来使う時が来るかもしれん。
やっぱイケメンって顔だけじゃなくて内面もイケメンじゃねーとイケメンじゃねーわ。
「…デート中に彼女を一人にするなんて。」
「気遣いを評価してやれ。しかも紅美彼女じゃねーし。」
「あの男、別に紅美に合わせたわけじゃないでしょう?」
「そう考えられなくもないけど可能性低いだろ…」
自然すぎて一応どっちとも取れなくないけどこの場合八割方気遣いだろう。
残りの二割はオラワクワクすっぞとか言っちゃうタイプか体育会系。いや、体育会系は偏見が過ぎるか…じゃあ腹ペコ大王か大食いクイーン(男)か何かで。後半ロイヤルだな。
その後はルークがホットドッグを持ってきて話しながら紅美のペースに合わせるようにして食べていた。アイツなんであんな完璧な対応できんの?
それを見た麗曰く。
「随分手慣れてる…あれは絶対何人かと遊んでる。」
だと。言いがかりって言いきれないんだよなあれじゃ。
食べ終わった二人は満足した様子でフードコートを後にした。
どうやら俺の昼食はまだまだ先らしい、と腹を鳴らしながらげんなりしながら麗と共に監視を続けるのであった。




