追随する兄姉
コツコツ書いて3000字に達したことに気付かず一週間寝かせてました。
「あれ? お姉ちゃんの彼氏さん!? こんにちは!」
「その呼び方止めて。」
麗の家に着くと麗の妹さんのなんかちょっとよろしくない出迎えが。麗に聞かれたら絶対激おこぷんぷん丸だよ。後ろに居たりしない?
…居るわ。なんでいんだよお前。あ、自宅だからか。そりゃそうだ。
「ごめんなさい! 私これから出掛けなきゃいけないから!」
「あ、ああ…」
横を通り過ぎて行った紅美は余所行きっぽいというか素人目にもすげーおしゃれしてんなと思わせる程気合が入った恰好だった。
そりゃそうだ、ゾッコンのルークとデートしに出掛けるんだからな。
まあ、そんなことより俺後ろの修羅なんとかしなきゃいけないんだが。
紅美のヤツ多分気付いてすらいないんだろうな。気付いてるのにノーリアクションとかある訳無いもんこの子。
「照矢君、遅い。」
やや不機嫌顔で麗が出てきた。顔が赤めに見えるのは目の錯覚だろう。種も仕掛けも分かんねぇ。
「そりゃ悪かった、ほい。」
バッグから麗のペンを取り出し、手渡す。
「そんなの後で良いから、さっさと行かなきゃ。」
「そんなのってお前、俺わざわざそんなのの為に来たんだけどおぉっ!? 急に引っ張るなよ!」
ペンを持ってお小言を言っている最中にも麗は靴を履き、俺の手を掴んで外へと引っ張っていく。
「事情は後で話すから静かにして。見失ったら元も子もないんだから。」
見失う?
ははーん、読めて来たぞ。さては麗のヤツ…
「いだだだだ!?」
あろうことか麗は掴んだままの俺の腕を稼働領域ではない角度に回そうとしていた。俺の肘は270°までなんて回らねぇ。
「そのしたり顔イライラするからやめて。あとうるさいから黙って。」
「お前が回転させようとしてる手を放してくれれば良いんですけどねぇ!?」
と、小声で抗議する。なんでってそりゃ紅美に聞かれたらまずいからな。
…紅美に気付かれたら間違いなく俺と麗の仲を邪推して逆鱗に触れられた麗が俺に当たってくるに違いない。そんなピタゴラでもなんでもない機構に晒されてたまるかってんだ。
「紅美が見えてきた。ここからは本当にバレないようにして。」
「…分かった。」
まあ、たまには付き合ってやるか。
断って無駄に麗を苛立たせる必要なんて無いし、どうせ俺も暇だし。
紅美とルークには悪いが、ここは妹離れ出来ない不甲斐ない姉に協力させてもらおう。
…バレたら全部麗に責任押し付けるけど、それくらいは別に良いだろう。
「ルークさーん!」
「よ、よう。広西。」
ルークさんなんだかちょっとぎこちないですねぇ。
これは純情派とか言っておきながら彼女いない歴が年齢のパターンか? 俺もだから安心しろルーク。
例えモテても特定の誰かと付き合うかどうかと言うのは別だもんな。なんだお前非リアの仲間じゃんか仲良くしようや。
…ん?
もしかしてこれ、後から振る気だから気まずいだけでは…?
「…さっき言ってた事情って言うのはアレ。
紅美がルークとかいう悪い虫とデートするらしいから、紅美が酷い目に遭う前に助けに入る。」
それお前がルークに酷い目に遭わせるだけでは…
……しかし、俺としては複雑だな。
ルークは今日紅美を振りに来ている。ちゃんと自分の気持ちを伝えるって決意を持ってる。
けど、それを麗が見たらどうなるか。
紅美がルークから離れるなら両手を上げて喜ぶだろうが、その逆なら…多分、麗はルークが紅美を捨てたと誤解するだろう。
そして麗がルークに殴り掛かり、紅美はフラれた上に姉のやべー場面を見る。紅美にとってトラウマになること間違いなしだ。
…解決策は二つ。
一つは麗の尾行を辞めさせる、または振られる場面の前に退場させる。
こっちは正直かなり難しいだろう。麗は妹の事になるとマジで必至だからな。信仰してるくらいだし。
二つ目は紅美からルークを突き放すように仕向ける。
ルークへの連絡方法、と言うかSENNの登録は済んでいるため要所要所で指示を出すことは可能だ。
しかし、あんな助けられ方をしたイケメンをそう簡単に嫌いになれるだろうか。
変に幻滅させようとしても信じきられることすら考えられる。
『あの時必死に私を助けてくれた人がこんなことをするわけないもん! 絶対に仕組まれてるよね? 誰かの指示だよね!? お姉ちゃん!? それともその彼氏さんなの!?』
こんな感じで。
後半ピンポイントなのはめっちゃ後ろめたいという自覚があるからだろう。イメージにまで浸食してくるんじゃねえ。
もしマジで名指しして来たらドン引きしながらガチで走って逃げる。
結局のところどちらも困難。こんなんやってられるか、なんてな。
「あー、その、実はちょっと話があるんスけど…」
おっと、もう切り出してくるか。
偉いぞ。俺が余計なこと考えなくて済む。
「俺は」
「それより、早く行こう? こんなところで話すのもなんだし。」
「そ、それもそっすね。」
んん~?
早期決着はどうした? 俺の助言はどうした? 無視ですかい?
このままじゃただのウブ野郎だぞ。それで良いのかルーク。
「……」
「痛い痛い、俺に当たるな。」
麗がリア充、というか野郎爆発しろみたいな目で紅美に手を掴まれたルークを睨んでいる。ついでにその手は俺の手を握り潰そうとしている。
いつまで掴んでる気ですかね? 家出た時から掴みっぱじゃないですか。ぱなしは無しって話じゃないのか? 地球も悲しんでんだぞ。
「どこに行くんスか?」
「ワオンモール! そこで買い物するから付き合って欲しいんだ!」
「了解っす。」
2人はそうして歩き出して行った。
元気いっぱいの紅美に初々しいっていうかめちゃくちゃギクシャクしているルーク。顔的に画になる組み合わせなのにテンションが完全にミスマッチだ。
「照矢君、紅美とホシが動いた。行こ。」
しれっとルークを容疑者扱いしてやがる。アイツがなにしたっていうんだ。
「これなんてどう!?」
「あ、ああ。よさそうッスね。」
最初に向かったのは服のコーナー。さらりと見て良さげな物を見つけた紅美はすぐさまルークにその服を見せ付けた。
「なるほど、どんなファッションが好みかを調べるのね。流石紅美、抜かりない。
それに対して男の方は話を合わせるだけ…当たり障りのないようにしてる。」
「そう言ってやるな、アイツにデートの経験なんて無さそうなの見てわかんだろ。」
紅美へは過剰評価を付けているようだが、ルークには過剰な低評価だ。
もし似合ってなくても面と向かって「似合わねーよブス!」なんて言えるわけがない。尤もそこまで言うケースは無いだろうし、紅美やら麗やらのレベルならなんでも画になりそうだけど。
当たり障りが無いとか思っても言うな。時々女って男に理解できないところに地雷あったりするしそれが怖いんだから。
まあ、男女問わず誰のどこに仕掛けてあるか分からないから地雷なんだが。
「はぁ、どうして紅美はあんな男を…」
半分お前のせいだよ。
もう半分は俺。なんか俺も片棒を担がされてるけどそのもう片方がグチグチ言ってるんだよな。
…あー、うん、やっぱ三分の二くらいは俺のせいだわ。考えてみたら紅美救出の人員に仕立てたの俺だし。引き受けてくれたルークは悪くねぇし元凶は屑野郎だから実質麗の責任はゼロだな。
「まあ、なるべくしてなったんだ。自然現象や生理現象みたいなもんだって諦めな。」
「セクハラ?」
「なんでだよ。しょうがないって言ってんだよ。」
生理現象ってしょうがないの代名詞じゃないのか? 心配しなくても別に深い意味なんて無いんだが。
「ルークさんにはこれが似合いそう!」
「…そうっスね。広西はセンスが良いな。
持ち合わせはあるから買って行ってもよさそうッスね。なんなら広西の分も出すかい?」
「ありがたいけど、これは自分で買うよ。お小遣いにはまだ余裕があるし。」
「そうっすか、じゃあ各々購入って事で。」
と、ここで二人はそれぞれ服を持ってレジへ移動する。
「そこは無理にでも奢るのが男でしょう?」
ここで麗からの一言。
「お前、そんな高いの奢らせたら流石に悪いだろ。こういう場合は品物と罪悪感をセットで買うよりそれぞれ買った方が良い。
やたら奢ってくるやつってなんか金で釣ろうとしてるみたいで嫌だろ?」
金持ちっぽい見た目なのは否定しないけど。だって完全に王子か貴族じゃんあのイケメン。
「…無理にでも奢ってたらそう言うつもりだった。」
難癖付けるのに必死か。姑みてーになってんぞ。




