考察する無駄
前話投稿から今回の更新までに半年かかってしまったことをお詫び申し上げます。
理由としては新作(五作目)の執筆とネタ切れ、そして今作の執筆時間が取れなかったこととなっています。
特にネタ切れが大きく、以前程捻ったアイディアがなかなか出ず構想の残滓みたいなものが漂っているような感じになっていて進められませんでした。
今後も更新の遅延が見込まれますが、可能であれば更新していこうと考えています。
それでも良ければよろしくお願いします。
「ここここ! 前来たけど雰囲気良かったし店員もかわ…いや、なんでもない。」
……俺は今、多分渋い顔をしていると思う。
それは渉がぶれなかったからではない。というのも…
「…渉君、ゴメン。知ってた…」
「え!?」
「軽井君、実は私もれいちゃんも城津君も知ってる。」
「………え…」
したり顔を曇らせる渉を見てもそんなに揶揄う気になれない。
「よりによってここかぁ…」
何故なら、この場所はカフェウェスト。
何度でも言おう。この店は苦手だ。
主に吊り目の店員が。
「なんだ、みんな知ってたのか…俺恥ずっ。」
「…まあ、知ってても知らなくても良いだろ。行くぞ。」
でも、避けるのもなんか逃げてるみたいで癪だ。
渋る気持ちを隠すように先行し、ドアを開ける。
「「「いらっしゃいませー!」」」
パツキンにパツギンにパツアオ………おお? 今日はあの店員居ないみたいだな。よしよし。それにしたって髪の色ファンタジックだなオイ。
この店は確かに苦手だが、あの店員さえいなければコーヒーもデザートも美味いし、雰囲気も良い。内装もしゃれているので、俺が知ってる中では最高に近い店と言える。星で言えば4.5くらい。
「やっぱメイド服は良いなぁ…」
無意識なのだろう発せられた渉の声は全女性陣からドン引きされていた。たまたま耳に入ってしまったのか店員の一人も眉をひそめたような気がする。
「…照矢もやっぱりああいう服って良いと思う?」
「ん~、悪いとは言わないけど俺にとってはコスプレ感が強すぎるな。
普通の服装で普通に可愛いっていうのが一番だと思うぞ。」
「分かった、ありがとう照矢。」
…本音ではあるが、もしおふざけで良いと言ってしまったら多分佐那はメイド服を購入して来て見せるだろう。
もちろんおふざけで。
そんなことで無用な出費をさせてしまうのは心苦しいし、この空気なら俺も多分他の奴から引かれかねない…なんて、一瞬のうちに考えられる程俺の頭は賢くないわけだが。まあ正解だったんじゃないかと思える回答が出来ればオッケーだ。
「だって、れいちゃん。」
「どうして私?」
明日木の謎発言は言われた麗すら付いて行けてないようだった。
佐那はなんか警戒してるみたいな顔をしている。なんかわかってるらしい。明日木と仲が良いだけあるな。
…あれ? 明日木って麗の友達だよな…もしかして、麗よりも佐那の方が仲いいのか?
あ~、麗のヤツ可哀想。付き合いが短い佐那に負けてるよ。
「その目不愉快だから止めて。」
「へ~いへいへいへ~いへ~い。」
「真面目な返事じゃないわね。
じゃあ今回は軽井君の代わりに貴方から奢ってもらうわ。お財布持って来てないからよろしく。」
このアマ最初から奢らせる気満々じゃねーか。
まあ、そもそも俺が三人とも奢る予定だったから良いんだけど。いや良くないけど。
「席はこちらでどうぞ。」
さっき渉の発言で引いていた銀髪の店員が俺達を広めの席に案内する。
席は野郎と女性陣で向かい合う形で座る。佐那がちょっと不満そうな顔をしていたが一緒に座れば渉の不評を買って最終的に変な形で損をするのが分かっている。選ばれたのは渉でした。
「城津君、席替わる?」
「いや、止めとく。」
明日木の提案に乗ったが最後、佐那だけでなく麗にも挟まれ渉が鬼人か狂戦士になってしまうので却下。明日木の隣にはなるが多分それで許してはくれないだろう。
「俺代わる! 俺その席が良い!」
隣で必死にアピールしている渉はスルーされた。まあ許す訳無いよなこんな奴に。
「では、ごゆっくり。」
席に着いたのを確認した店員は厨房に戻って行く。
「やっぱりでけぇ…小っちゃいのにでけぇ…」
厨房付近で躓いた店員を見て俺の耳元でささやいてきた。一応さっきので学習したらしい。
心配しなくてもこの三人からの脈は無さそうだけどな。
「私は紅茶。」
「私はキャラメルマキアートね。」
「悠菜ちゃん洒落たの頼むね…照矢と渉君は何頼む?」
女子組の注文がいつの間にか決まっていたので俺と渉も急いでメニューを開く。
「そうだな…俺はコーヒーで良いかな。渉は?」
「ミルクティー。」
「よし、皆決まったみたいだな。
すみませーん!」
店員を呼ぶと近くに居た青髪の女子が近寄ってきた。
派手っつーか地毛ではあり得ない髪色だが割と皆平然としている。
どうでも良いけど初見さんが今この店に来たら新手のコスプレ喫茶かと思われそうだな。俺も半分そう思い始めてるし。
「はい、ご注文をどうぞ!」
「コーヒー二つと紅茶、ミルクティーと…えっと…」
「キャラメルマキアート一つ!」
「確認します、ご注文はコーヒー二つ、紅茶一つ、ミルクティー一つ、キャラメルマキアート一つで以上ですね?」
「はい。」
「かしこまりました。では、少々お待ちください。」
書き込まれた注文票を手に青髪の店員が去っていく。
「ねぇ、ここの店員って皆地毛かな?」
「絶対違うと思うけど…」
「でも、生え際を見ても元の髪色が分からないし…」
「美容師の腕がよっぽど良かったんじゃない?」
「それは考えたけど、ちょっと前に来た時もそうだったんだ。
染めたなら生え際に元の髪色が出るはずだよね? そこまで頻繁に染める意味が分からないよ。
コスプレにしたってなんのキャラか分からないし…なんで染めてるんだろ。見たところ学生みたいだから染めるメリットよりもデメリットの方が」
「もう考えるだけ無駄じゃないか? 結局はその人の都合だろ?」
「そうたけどさー…」
店員もそうだが、俺からすればなんで明日木がそこまで気にしてるのかが謎だ。
髪染めちゃおうかな~とか考えてるのだろうか。意見を聞きたいなら本人に直接訊けばいいのに。
「お待たせいたしました、コーヒー二つに紅茶、ミルクティーとキャラメルマキアートです。」
店員から差し出されたそれぞれの飲み物が全員に振り分けられる。
付いてきたミルクとガムシロップをコーヒーに投入し、マドラーを回していると麗から茶々が飛んできた。
「あら? 照矢君ブラックじゃないの?」
漏れなく角がたつ言い方とイントネーション。(麗の扱い方的に)俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「飲めない訳じゃないが、入れた方が良いな。
そういうお前も紅茶には砂糖くらい入れるだろ?」
「お、城津君大当た」
「入れるわけないでしょう、私の舌は貴方と違って子供じゃないんだから。」
「じゃあ今お前の手は何をしようとしてた?」
「……悠菜に砂糖を取ってあげようとしてただけ。」
明日木の方が砂糖に近いし、なんならもう飲んでいる。詭弁にすらなっていなかった。
「どうした? お前は店員がわざわざ注いでやったそれを頂きますって言ったんだぜ? 頂きますって言ったからには飲んでもらおうか。
それとも熱すぎるから飲むのは嫌か?」
「言ってないわ。」
「そうだったか?
それに、心配はしなくていいぞ。俺は嗜好に大人も子供も関係無いという持論を持ってるからな。わざわざブラックで飲むか飲まないかとかそんな小さなことにはこだわらない。
お前も砂糖入れたいなら入れて飲んで良いんだぞ?」
ちょっとしたお返しだ。
…なんてやってるうちは思考が子供なんだろうな。
「入れないって言った。」
そう言うと麗はカップに口を付け、紅茶を優雅にすすった。
彼女は少し顔をしかめた後カップを置き、どうだと言わんばかりの顔でこちらを見てきた。
「…無理はしなくて良いんだからな、本当に。」
「してない。」
その後も彼女は砂糖にはノータッチで紅茶を飲んだ。
最初は無理をしてる様子が抜けなかったが、最終的には慣れたようで普通に飲めるようになっていた。
……マジで無理しなくてよかったのに。




