放棄する錯乱
GW中は遊んだり出掛けたりして執筆する時間が無かったため更新できませんでした。
忙しいような退屈なような、短い10日間でした…あと10日増えないかな。
建物に入ると、そこは騒音の楽園だった。
様々な音がひしめき合い、混ざり、人によっては不快な戦慄を奏で続けている。
俺たちはそんな場所に自ら足を踏み入れていく。その理由は―――
「まずは何が良いでしょうか!?」
「俺、ゲーセンは結構久しぶりだから! 真杜さんに任せる!」
「分かりました!」
―――楽しむために他ならない。
俺と真杜さんは麗と別れ、近所のゲームセンターに来ていた。
規模としては大きめと言ったところだろう。ここは種類が多く、昔は足繁く通っていたものだ。
太鼓の鉄人とか昆虫王者とか、レースゲームとか。色々やってたな…
今ではあんまりよく分からないみたいな筐体が並んでいて、見知ったものは本当に少なくなっていた。めっちゃ寂しい。ちょっと泣きそう。
「まずは定番のクレーンゲームですかね!」
「いや、あれ取れたら荷物増えるし後にしないか!? 別のは!?」
「そうですね! じゃあ…あ、そこのエアホッケーとかどうですか!?」
「良いぞ!」
特に代替案も問題もないので硬貨を入れて配置につく。
「手加減はいりませんから! 本気でやらないと、怪我しますよ!」
「ああ! もちろん全力だ!」
と、定型文のようなやりとりをした後構える。
やるなら全力。というかエアホッケーの場合は案外簡単にえげつない速度を出すことは可能なので気は抜けない。
気を抜けば負ける。まあ別に負けても良いんだけどここは彼女のスポーツマンシップに応えるとしよう。
「行きますよ!」
一打目が飛んでくる。
カコン!
と思ったのも束の間、ディスクは既にゴールインしていた。
「手加減は要らないって言ったばっかりじゃないですか!」
「ちょっと気ぃ抜いてただけだ! 今度はこっちからだ!」
取り出し口からディスクを取り、打つ。ディスクが見えないわけではないので、戦えるはずだ。
と、見込んだものの結果は惨敗。俺の反射神経や予測能力の衰えを思い知らされ、後日渉と練習することを決意するのでしたとさ。
その後はクレーンゲームやらメダルゲームやら、色々遊びまくって解散した。
送っていこうと思ったのだが、真杜に断られて断念。誘拐未遂があった後なので、無理にでも付いて行った方が良かったかと思わなくもないのだが…克服したのだろうか。今日一緒に映画観に行った理由って…
と、うにゃうにゃ考えながら帰宅。
「…照矢、今日どこ行ってたの?」
すると家に佐那が居て、夫の浮気を問い詰める嫁さんみたいな感じで問い詰められた。
いや、俺別に佐那と結婚してるわけでもなければ付き合ってる訳でもないんだけど。
「麗ともう一人の奴と、一緒に映画館やら服屋やらゲーセンやら。」
「楽しかった?」
「…ああ。」
嫁さんって言うよりかーちゃんみたいな気がしてきた。今の佐那、かーちゃんよりかーちゃんしてる。
…それにしてはやや恐いんだけど。
「そっかー…どうして私を誘ってくれなかったの?」
あ、そう言うことね。ハブられて寂しいってことだったのか。
でも、それ言ったら明日木も来てないしなぁ…
「元々ダブルブッキングで、三人一緒になったのは成り行きだったし…
それに、佐那は麗とはそんなに仲良くないだろ? もう一人も佐那は知らない奴だったから、気まずいかなーって思ったんだ。」
「へー…ところで、さっきから言ってるもう一人って?」
「真杜って奴なんだけど、」
「男の子? 女の子?」
真っ先に性別を訊いてくるあたり、渉の“佐那が俺に惚れてる説”は案外間違ってないのかもしれない。
「…元気な女の子です。」
焦ったせいかちょっと変な言い方になってしまった。
「へぇ…まあ、別に友達を作らないで、なんて言わないけど…後で良いからその人に会わせて。
どういう人か自分の目で見極めたいから。」
さながら娘に近付く男を一匹残らず駆逐しようとする父親のようだ。
今度はとーちゃんよりとーちゃんし始めた。つまり佐那は俺の両親だった…?
…なんてバカな考えをどこかに捨て、脳内で佐那を真杜に会わせる算段をつける。
算段と言えば大仰に思えるが、つまるところただの口実作りだ。また今日みたいに遊びに行くとか、どこかに出かけたいとか…
…そういう誘い方ってデートみたいだな。なんか距離取られそうな……今更か。じゃあ今日のなんだったんだよ。
一応最初から佐那も来ることを伝えておくか。
「分かった、今度会えないか訊いとく。決まったら連絡するから。」
「出来れば明日にして。用事があったらいいけど。」
「…りょーかい。」
そんなに気になるもんかね? 俺の交友関係…
その後真杜に明日の予定を訊いたら大丈夫だったとのことだったので、佐那の希望に沿って明日3人で会うことになった。
面倒にならなきゃいいけど、なんて願っても無駄なんだろうなと諦めながら、その日の夜は眠った。




