狂化する再会
平成が終わるまでにこの章を終わらせたかったのですが、無理そうです。
やるだけやってみますけど。
昼食を食べ終え、ドリンクバーから持ってきたジュースを飲み終えると、俺は大きなため息を吐く。
それは安堵によるものだった。
ダブルブッキングという事態に陥り、一時はどうなるかと思ったがどうにかどちらも無事に終えることができた。
後は解散して自由時間となるだろう。今日はどうするかな…
「城津さん、この後暇ですか?」
と、近い未来に思いを馳せていた時だった。
「なんだ? 実はまだなんか用事があったのか?」
「用事、と言うほどではないんですが…もし暇なら、ゲームセンターに行きませんか?」
予想外。
真杜からゲーセンのお誘いがきた。真杜がゲーセンを薦めるというのも驚きだが、思っていたより友好的ということにも驚いた。好感度の上昇はかなり順調に進んでいるらしい。
「ああ、行く行く。麗は?」
「私、用は済んだしゲームセンターは苦手だから帰る。」
「そうか、気を付けて帰れよ。」
ゲーセンの騒々しさが苦手だという人は少なくないだろう。
麗もその一人、というのは性格的に滅茶苦茶納得がいく。喜々としてゲームしてる麗とか全く想像できない。
それに、麗は今日嫌々俺と一緒に来たって感じだったし…帰るだろうな、というのは容易に予想できた。
「……?」
「真杜さん? どうしたん…」
突然眉根を寄せて一方向を向いた真杜。同じ方向を見てみると…
「……」
穏やかじゃない様子の顔見知りが居た。
鬼か悪魔みたいな形相をしてむっちゃ俺を見てるのはレジ袋をブドウの様に持っている渉だった。
ずんずんとゆっくり、床を踏み鳴らしながら近づいて来る。
「あ、渉じゃん。おひさ。」
「Teeeeeeeruuuuuuuuuuuuyaaaaaaaaaaa!!」
なんか狂化してる。
狂戦士と化した渉は荷物を投げ捨て、化け物みたいな声を上げながら踏み鳴らす音のスパンを短くしていく。つまりどんどん早歩きになっている。っていうかここファミレスの中なんだけど。隣のお子様連れの家族ドン引きしてるから変な声出すの止めろよ。
「……」
すっ、と立ち上がったのは真杜だった。
化け物染みた渉に全く臆することも無く近づいて行く。その様子を見た渉はなんか歩くスピードをちょっと緩めている。多分美少女が俺に近付いて来てるぜぐへへとか考えているのだろう。ちょっとだけ。
「てい。」
「buaa!?」
真杜さんから側頭部に軽くチョップを叩き込まれた渉は大げさなダメージ表現をした後ハッとした様子で真っ先に真杜さんを見た。
美少女が突然間近にとか考えているのか、目を見開いてめっちゃ見ている。対して真杜はその視線に動ずることなく言った。
「落ち着いてください、皆見てるんですよ?」
「……はい。」
毒気を抜かれた渉は小さくなって俺…じゃなくて麗の向かいに座る。隣は半自動的に真杜。ちゃっかりしてやがる。
「…照矢、なんだ? また新しい女子引っ掛けたのか?」
「引っ掛けたってなんだ。」
偏見盛り盛りな言い方だ。俺もさっきから渉に対して偏見みたいな思考してたけど。まあ自称チャラ男のアイツならうるせーよとか言い返しても否定はしないだろう。ちょっとだけ本当だろうし。
「その子は真杜、ちょっと前に知り合ったんだ。
お前みたいなタイプ、苦手そうだから遠ざかってやってくれ。」
「お近づきになりたいんですけどぉ!?」
「諦めろ。
そもそも、出会ったきっかけってのが誘拐未遂だったし…肉食系の男は苦手かもしれないぞ。」
「あ、そうだったのか。てっきり俺に対する嫌味かと思ってたわ。」
半分正解だけど言わないでおこう。
「こんにちは真杜さん。草食系紳士の渉と言います。」
「は、はぁ…」
唐突な自己紹介。しかも虚言付き。
今更そんなこと言っても信用ならんぞ。そもそも草食系の男があんな暴走するか。
真杜さんドン引きじゃねーか。
「……ぅゎ」
麗も引いている。
小声だったけど聞こえてるからな?
「…それで、照矢。
お前はこの2人と何をしてたんだ?」
うわ、タゲこっち向いた。アイツのタゲブレブレ過ぎんだろ。
「飯食ってた。」
「…その前は? わざわざ三人で、ファミレスでお食事会だけの為に集まる訳無いだろ?」
余計なことに気付きおってからに…
「映画観に行って買い物行ってた。」
「デートだとぉ!? まさかとは思うけどお前、まさかその2人彼女なのか!?
それともあれか、皆寺さんと明日木さん含めて四人か!? えぇ!?」
「俺に彼女は居ない。」
ここで真顔。
いかにも彼女欲しい願望があるけど無い者の悲しみを体現したかのような俺を見た渉は口ごもった。
…演技だけど。
「………そうか。すまん。
…許さんけど。」
なんか後半は聞こえなかったが、まあどうせどうでもいいことだろう。気にするだけ無駄無駄無駄ァなのだ。
「それで、お前はなんでここにいるんだ?」
「俺? 俺は姉ちゃんの荷物持ちで…あ。」
青ざめた渉が向いた先にいたのは一人の女性。実は会ったことがないのだがそれが渉の姉であると言うことはすぐにわかった。
手に持っているのは割れた卵が入ったパックや角が凹んだなんかの箱。投げ捨てりゃああなるわな。
笑みの後ろに炎が見えた気がするのは俺だけではないだろう。
「あ…ああ、あ…」
言葉を失った渉を問答無用で引きずっていく渉の姉。
一度立ち止まり、にっこりと笑って軽く会釈すると、振り返って再び渉を引きずっていった。
「……」
「…行くか。」
「そうですね…」
なんかすごいものを見せられたような気がした俺たちは、静かにファミレスを去った。




