混合する自爆
2作目、完結させてきました。バッタバタですけど。
では、私は石貯めないといけないのでこれで…
事情を聞いてみると、愛依は家族でバーベキューに来ていたらしい。
本当に偶然出会ったことに驚き、疑ってしまったことを謝罪した。でも疑っちゃうのはしょうがないと思うのです。
「照矢君、せっかくだから私の親に紹介されに来てよ!」
「いやだことわるやめて。」
そんなに引っ張らなくてもお断りだって言うのに。
踏ん張る俺、引っ張る愛依。俺の右腕は綱引きの綱になってしまった。
「良いから来てよ!」
「止めて止めて、アイムノットユアフレンズ。ビコーズ貴女との接点禿げ頭!」
「あー! うちのパパの前で髪の話しないでよね! おじいちゃんの頭を見て将来に震えてるんだから!」
「やーいやーいおまえのとーちゃん禿げあた……ヒッ!?」
……殺気が伝わってきた。顔こわっ。
「…だが、計算通り! お前の親父の好感度はがくっと下がった!」
「なんでそんなことするの!? 私に何か恨みでもあるの!?」
「無いけど見え見えなんだよ! お前にホイホイ付いて行って、お前の親父さんが『問おう、汝が娘の彼氏か?』みたいなことを訊きながら鬼修羅マックスみたいな感じになって俺がガクブルするところまではなぁ!」
「パパはそんなに心狭くないから!」
「ハッ、騙されんぞ! 親にとって子供は宝! 特に娘となれば可愛いもんなんだよ!
それをどこの馬の骨とも知れない、ついでにハゲとディスった俺なんかがしゃしゃり出ようものなら確実に叩き潰しに来るさ! だから行かない!」
「自業自得混ざってない!?」
「それに、俺には肉を焼きながら待ってる三人の友達とその中のお兄さんが居るんだ! それを待たせられるか!」
「その四人なら照矢君なんて眼中に無いって感じで肉食べてるけど!?」
「あっ、お前らマジかよ! 薄情だなオイ! 明日木とその兄貴と麗はまだしも、佐那までってのは酷くね!? せめて俺の分の肉残せよ!!」
「ああ、君にはたっぷり野菜を残しておこう! それまでに肉はこちらで処理しておく!」
「止めろ! 肉が無いバーベキューなんてルーが無いカレーと同じじゃないか! もうカレーじゃなくて“煮”だろ! 人のバーベキューをギャグマンガでしか見ないみたいな味気ない食卓にするんじゃない!
って訳で放せ愛依! 俺は俺の肉を守らなきゃならないんだ!」
「同年代の少女を三人も侍らせて、更にナンパしに行く節操無しに食わせる肉は無いのでね!」
何か怒ってませんかね兄貴?
「ああ! アイツ肉追加で焼きやがった! もう無くなるぞアレ! だからいい加減放してくれません!?
分かった、挨拶くらいはするから! ソフトかつフレンチでついでにお前とは妙な仲じゃないってことを証明できるようにするから手伝ってくれ! そろそろ愛依の親父さんとあの三人の視線がキツい!」
「……うん。
あ、そうだ。もしよかったらなんだけど…うちのところに来て食べない?」
「…え?」
「…お、お邪魔します…」
「………」
めっちゃ睨んでるよ…めっちゃ睨まれてるよ俺。
腕を引っ張る愛依の隣におずおずと座る俺に容赦なく睨みを利かせる(比喩ではなく)男性は、確実に愛依の父親だろう。
娘のボーイフレンドで、対面前の自分をディスった相手だ。こんな対応にもなるだろう。
「あらいらっしゃい! 貴方は愛依のボーイフレンド? もしかして、彼氏?」
「えっと…その、違います。ただの知り合いです。ただの…
知り合ったばかりですし、別に踏み込んだ関係なんかじゃないですよ、本当に…マジで…」
「そんなに旦那の顔色を窺わなくても良いのよ! そこのは置物だと思って無視してくださいな。」
そっかそっか、あーそこの置物こわっ、よく出来た置物だな、まるで娘を彼氏にとられそうな父親みたいな顔だ、再現度たけーなオイ、あー呪い殺されそ。
………無理だよ。
「でも丁度良かった。この肉と野菜の量、見て見て! ぜーんぶそこの馬鹿旦那が買ってきたんだけど絶対食べきれないでしょ? 遠慮しないでいっぱい食べて行きなさいな、食べ盛りなら食べないと!」
「はい、いただきます。」
焼けた肉と野菜が盛られた皿から一つ、玉ねぎを箸につまんで口に運ぶ。
「………」
生…焼け…?
いや、偶然この玉ねぎだけ生焼けだったってだけだろう。そう言うことの一度や二度はしてしまうものだ。
つまるところ、俺の運が悪かったと言うこと…
二口目、三口目、肉も野菜も未だミディアムにはたどり着けない。
肉はどんどん焼かれている。焼き直しを行うスペースは無い。
愛依もその父親もそれを気にすることなく焼き肉のたれを付けながら黙々と食べている。野菜はともかく生焼けの肉食って腹壊さないのかな。
…まあ、レアの範疇だろ。多分。ミディアムレアならぬレアレアだな。うん、良いんじゃないかな。個人的にはもっと焼いて欲しいけど。ちょっと固い。
「美味しい?」
「あ、ああ…美味い。」
平然としてやがる…慣れっこって奴か?
「どんどん食べて!
実は私、お腹が弱くて…あんまり食べられないんだ。パパも、ママも。」
やっぱ駄目だった! ってか家族全滅かよ!
味覚は慣れていても体は慣れていなかったと言ったところか。ママさんもっと焼け。
「あ、あの…もうちょっと焼いて頂いた方が俺の好みで…」
「人様にご馳走になってるくせにケチつけっ!?」
「あらあら、ごめんなさいね~うちの置物が。喋るはずないんだけどね~?
そう言うことならもうちょっと焼いてみるから。ちょっと待っててね。」
…こわっ。
愛依の家のパワーバランスの一端を見てしまったが、ちゃんと焼いてくれるなら文句は無い。
文句なんて言った時点でパパさんが噛みついてきて、そのパパさんをママさんが止める光景はありありと目に浮かぶけど。今見たばっかだし。
「はい、どうぞ!」
一言礼を言って焼けた肉を頬張る。
…今度はうまい。レアレアからレアになっている。
「美味しいです!」
「ありがとう…本当ね、おいしい。」
レア肉は他2人にも好評だった。当たり前だ。
レアレアママからレアママに進化したママさんは更に肉を焼き続け、やがて焼かれなかった野菜だけが残った。
俺はその時離脱していたので、この時は知る由も無かった。
「ただいま! 俺の肉は!?」
「今網に乗っているのが最後の一枚だ。」
「何ィ!?」
肉の消化スピードが早い…! やっぱ優先的に焼いてやがった! 当てつけか!
素早く箸と皿を取り、網に手を伸ばす。
なんの妨害も無く口に含む事に成功した。良かった、最後の一枚は…ん?
「…遅かったようだが言っておく。
その豚肉は今裏返したばかりだ。充分に焼けていない。」
よりによって豚かよ!
生焼けの豚とか最悪じゃねーか!気が早って食った俺のせいなんだけど、食中毒はシャレにならんって!
「……冗談だ。
それは生食用の肉だ。焦らせてやれば引っかかるかと思ったが、まさかこうもうまくいくとは…」
「「「ふふっ…」」」
生食用かい!
目に見えて安堵した間抜けな俺を見た四人は笑い始めた。
ああ畜生、なんで俺はピエロにされにゃならんのだ。なんか恥ずかしくなってきただろうがこらぁ…
「ああ、照矢の分の肉と野菜はとってあるから。大丈夫だよ」
「マジで!? ありがとう佐那!」
やっぱり持つべきは良い幼馴染だな、と調子の良いことを考えながら少し冷めてしまった肉と野菜に焼き肉のたれをかけて食べる。
基本塩コショウで食ってたけど、たまにはタレも良いな…
「……私の皿と箸は?」
「え?」
ここで麗の皿と箸が行方不明になるという事件が起こってしまった。
まあ、どうせ風で飛ばされたとかだろ…
「…照矢、さっき照矢が使ってた箸と皿ってアレだよね?」
「ん? ああ、確かにそこに置いてたな……」
……ヘイお待ち。
じゃあ俺が持ってる皿と箸はなんだ? 超簡単な問題だ。
消えた麗の食器、置いてある俺が使ってた食器、そして、俺が持ってる食器。
あまり多くの人に知られることは無くても真実は一つだ。ああ、この場にいる全員がその真実に至ってしまったらしい。めっちゃ疑いの目で見られてるよ。
「………ねえ、照矢君。」
「すまない…マジですまない…
決してわざとじゃなかったんだ。別にお前に対して変態欲求を働かせたとかそんな訳じゃなかったんだ。ただ焦って取った食器がお前のだったってだけだったんだ。明日木や佐那のだった可能性だってあるし、もしかしたら俺の奴を無事にキャッチしてたはずだったんだ。
もし必要なら近くのコンビニに行って買ってくるから。無駄に大量に返すから。どうかお許しください。」
「…じゃあ、買ってきて。
今から10秒以内。一秒過ぎるごとに利息100円だから。」
「は!?
近くのコンビニでも走って2、3分だぞ!? 買う時間含めて走ったところで10秒以内に買ってこれる訳が」
「5秒経過。」
「全速力で行ってきまぁす!」
「タイムオーバー、利息カウント1、2…」
5万ちょいの違約金が発生しました。(嘘)
なお、俺が走ってる間麗は予備の箸で野菜を食っていた模様。
仕返しにしても酷すぎない? 意味の無いパシリって誰も得しないと思うの。




