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交錯するラブレター  作者: じりゅー@挿し絵は相関図
第三章 Meet again
23/52

突発する慙愧

あけましておめでとうございます。

 

「つっかれた…」


 自室のベッドに横たわり、だらしない声を出して大きく息を吐く。

 佐那、愛依とのお出かけは俺の精神と体力を大きく削った。

 2人は事あるごとに張り合うし、周りからの目がなんか痛かったし、たまに2人でよく分からない話をし始めるし…おしゃれの秘訣なんて男の引き出しにはありません。コーディネートの事とか自分の感覚を信じてくれないかなマジで。


 ピコーン!


 このゲーム少年のソフトの起動音は…メールの着信音だ。

 体を横たえたままケータイを手に取り、受信ボックスを見てみると見覚えのないメールアドレスだった。電話帳に登録してたら名前が出るはずだしな…

 と思ったが、メールのタイトルを見て誰から来たのかは分かってしまった。


 [明日木ちゃんです。]


 ……なんで俺のメアド知ってんの?

 情報漏洩の恐怖に少し怯えながらメールを開くと、その原因が分かった。


 [城津君のメアドはさなちゃんからきいたよ!]


 なるほど、そういう…個人情報が洩れてなくてよかった。

 …明日木には漏れてるわけだけど。知り合いだしセーフセーフ。

 さて、要件は…


 [明日プールとかどう? 予定空いてる?]


 プールかぁ…

 夏のプールと言ったらプール内にこれでもかと人が詰め込まれてて、泳ぐスペースすらないなんてこともよくあるしな…

 幼少期の頃そんなことがあってからというもの、プールにはそう言った抵抗を抱くようになってしまった。親は止めたというのに、それを泣きついてまで頼んで…

 ………うん、やめよ。

 さて、断る口実はどうするか…

 仮病…は元気なところ見せちゃったからな。無し無し。

 そうなると、別な用事か…それが自然だし良いな。プールってどうせ近所のやつだし、ちょっと遠出すればエンカウントすることも無いはずだ。


 [明日は用事があって無理だ。]


 [じゃあいつなら行ける?]


 小癪な…そこまでして俺をプールに連れていきたいか。

 じゃあ、素直に行きたくないと伝えれば…


 [この際だし好きになっちゃえ!

 今なられいちゃんもさなちゃんも私も行くよ!]


 伝えた結果がこれだよ。

 女子ばっかりじゃねーか。もっと行きづらいわ。今日銀髪の店員の胸チラ見しちゃったんだぞ。麗に同じ事したら「こっち見んな変態野郎」じゃ済まないに決まってるだろ。前科がある分怖いんだよ。

 と言うことも伝える。


 [良いじゃん良いじゃん健全じゃん! やっぱり城津君も男なんだね!]


 俺女だと思われてたの? 男だよ。男の娘じゃないんだから間違えないでくれよ。


[とにかく、今回はパスさせてもらう。三人で行ってきな。]


 あとはほっとこう。これで俺の不参加は確定したな。






「……」


 翌朝。

 暇を持て余した俺は無言で宿題に着手していた。

 夏休み二日目。浮かれる気持ちは残っているが特にやりたい事がある訳でもない。

 ならば着実に宿題を進めた方が良い。夏休み終盤に追い立てられるのは御免だし、家族とか麗とかから「宿題は?」と聞かれて答えに詰まってしまうのも癪だ。

 やれる時にやる。計画的ではないかもしれないが何もしないよりはマシだ。


「………」


 …とは言っても、心のどこかでは浮足立った気持ちが出てしまう。

 渉とか佐那とかから遊びに行こうとかそんなお誘いが来ないかと淡い期待を抱くのはしょうがないことだろう。

 まだまだ集中が足りない。本当に宿題に集中してるならもっと進むだろうし、そんな気持ちもわいてこないはずだ。


 ピコーン!


 着信音がなったのはそんな時だった。

 福音にも近いそれにすぐさま飛びついてみると、佐那からのメールだった。

 感謝の気持ちすら感じながらメールを開く。


 [悠菜たちと友達だけで河原でバーベキューするんだけど、一緒に行かない?]


 バーベキューか。

 河原なら涼しそうだし、肉なら大歓迎だ。俺のお腹にカモンカモン。


 [行く行く。いつから?]


 [今すぐ! 迎えに行くね!]


 …随分とお早い。

 家は近いのでインターホンが鳴るのはすぐだろう。それまでの時間は準備に充てる。

 準備と言っても机に広げた宿題を片付けて財布とケータイを持っていくだけだが。

 後は玄関で出待ちするだけだ。何秒で来るか当ててみるか。

 あと5秒…いや、8秒か。7、6、5…


「照矢! 行こ!」


 …3秒だったか。







「…照矢君も来たの?」


 河原に着いてみると、俺たちと同じでバーベキューをしている集団がいくつかあった。

 家族と思わしき集団、友人同士と思わしき集団、部下と上司と思わしき集団…数えれば数えるほどその関係は違っていた。

 明日木達と合流すると、見えたのは既に設営が終わって赤熱する炭が覗くバーベキューセット。その具合を見てうちわを仰ぐ謎の男。さらに麗も居た。


「来てるんだから来たんだろ。俺は佐那に呼ばれてな。」


「皆寺さんね、こんにちは。」


「こんにちは広西さん。」


 ……よそよそしい。

 そう言えば佐那と麗(この2人)、そんなに接点無いんだよな。

 麗が佐那の苗字を知ってることに少し驚いてしまったくらいだ。だってアイツそこらの人を路傍の石くらいにしか見てないし。


「……悠菜とは仲が良いって聞いてるけど。」


「うん、悠菜とは仲良くさせてもらってるよ。

 ……一時期照矢の彼氏だって噂があったけど…本当?」


「そんな訳無い。むしろ仲が悪かったくらいだから。勝手に勘違いされてただけ。」


「ほほう? れいちゃん、今『仲が悪かった』って言ったよね…? 過去形だったよね?

 つまり、今は」

「今もなんとも思ってない。

 皆寺さんと照矢君は幼馴染と聞いてるけど、もしかしてその気はある?」


「え? そ、それは…」


 ……聞き耳立てて良い雰囲気じゃない気がするな。

 よし、じゃあ俺はあの謎のお兄さんに話しかけちゃおーっと。誰なんだマジで。


「あの、すいません。」


「…君が城津照矢か?」


「アッハイ。」


 知ってたか。考えてみれば当たり前だけど。

 見ず知らずで得体のしれない人物をバーベキューに引き入れるものか。最初に聞くだろーっての。


「そう畏まるな。妹から君のことは聞いている。

 妹の友人が好きなのだろう?」


「えっと…まず、その妹って誰なんですか?」


「ああ、そう言えば言っていなかったな。

 俺は明日木悠菜の兄だ。今日は引率役としてきた。

 君と妹との関係だが…恋仲ならともかく、そうでないなら歓迎する。男女の友情関係は成り立たないとは聞くが、そうではないと信じているよ。」


「ハイ、そっすね。」


 佐那の関係者でも麗の家族でもないとなれば、明日木しかいないと言うのはちょっと考えればわかりそうではあったな。

 それにしてもこの兄、もしかしてブラコン…!?

 いや、純粋に妹の将来を案じているだけだろう。そうに違いない。


「…もっとも、君には少し信頼する材料が足りないがね。

 聞けば、君は幼馴染まで侍らせているとか…」


 そんな伝わり方したら信用も何も無いだろうなそりゃ。明日木の奴覚えてろよ。


「侍らせてないです。彼女とも友人関係です。っていうか、そもそも妹さんの友人もそういう意味で好きと言う訳では…」


「では訊こう。何故君は幼馴染と妹の友人…広西麗だったか。彼女を助けた?

 特に、広西は二度も助けたそうではないか。それなのに好きではないと?」


「……ちょっと、昔色々ありましてね。見過ごせなかったんですよ。

 俺は見過ごせなかったから行動しただけ…立派でもなんでもない事です。」


「いや。

 その魂胆はともかく、君の起こした行動と、その結果だけは立派だと思える。

 少しは誇っても良いことだと思うが?」


「……」


 誇っても良い、か…

 本当に、大したじゃないのに…

 ……大した、ことじゃ…


「…何か無神経な発言をしてしまったならすまない。」


「いえ…」


 麗を助けたことは誇っていいのだろう。胸を張っていいのだろう。

 ただ、過去の出来事(その動機)はそれを許してくれない。

 …きっと、アイツも―――


「詫びと言う訳ではないが…そら、肉だ。食え。」


「ありがとう、ございます。」


 手渡された肉を乗せた皿を受け取り、テーブルにあった塩コショウを肉にかける。

 ―――アイツ、今はどうしてるんだろうな。

 元気にしてると良いけど、もしかして今でも…


「待て、そのテーブルは俺達のじゃない。」


「え?」


 考え事をしていたせいか、明日木兄が肉を取っていたテーブルではなく、近くにあったもう一つのテーブルから調味料と箸を取ってしまった。


「すいません、間違えてしまっ……」


「あれ? 照矢君?」


 謝ろうと思ってテーブルの近くに座っていた人物を見ると、愛依(見覚えのある人物)が居た。


「……そろそろストーカーを疑いそうになってくるんだけど。」


「いやいや全部偶然だよ!? 私もびっくりするくらいの!」


 ……ルークの時、佐那もこんな感じだったのかな。

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