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交錯するラブレター  作者: じりゅー@挿し絵は相関図
第三章 Meet again
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解明する企み

FG○「ストーリー進めなきゃイベント参加させへんで。」


ス▽ブラ「初期キャラ8人やで。もっと使いたかったらアドベンチャー進めな。」


じりゅー「うおああああああああああああああ!!」


後は…分かるな?

 

「なあ、麗…」


「何? 貴方がさっきの店員に不埒な視線を送ってたことに対する弁明なら聞かないけど。」


 やっぱバレてたか…

 って、そうじゃない。


「いや、そうじゃなくて…あそこにいるのって明日木じゃないか?」


「悠菜が?」


「ああ、そこに。」


 ここからでは後頭部しか見えない(っていうか見せてくれない)が、バレバレである。

 麗は彼女を見た瞬間ため息をついた。どうやら虚言扱いは免れそうだ。


「……照矢君、行こう。」


 俺の返事も聞かずに席を立った麗に付いて行く。

 明日木の思惑は…まあ大体分かるが、麗にとってははた迷惑以外の何物でもないだろう。

 俺としては一日だけ過密スケジュールにされたことに文句を言いたい。それを抜きにして良かったかどうかで言えば気になっていた映画が見れたから良かったけど。

 ちらっとこちらの様子を見た明日木は近付いてきている麗を見て『あ、やばっ。』とか思ってそうな表情をする。

 だが逃げることは出来ない。明日木は将棋やチェスで言うチェックメイト(詰み)にはまったのだ。


「ぐ、偶然だねれいちゃん。」


「偶然? 本当に?」


 麗は完全に疑っている。

 そもそも、この映画鑑賞会は明日木のプロデュースで行われたものだ。

 麗には俺が直接言ったわけではないということから、麗はこのお出かけが俺の提案ではないとある程度推測は立てていたのだろう。

 それが視線ブレブレの明日木で完全証明され、ついでにこっそり付いて来ていたことも分かった。

 今麗が展開したアンチお節介フィールドにも納得がいくと言う訳だ。


「そんな嘘つかなくても良い。もう悠菜の企みは分かったから。」


「た、企んでなんてないよ!」


「………」


 往生際悪く白を切り続ける明日木に、麗は更にフィールドを強化する。

 直接向けられていない俺まで萎縮してしまいそうだ。怖い怖い。


「……はい、ごめんなさい。

 偶然って言うのは嘘だし、城津君からのお願いって言うのも嘘でした…

 本当はれいちゃんと城津君をくっつける為に私が計画した映画デートで、上手くいってるかどうかついて回っていました…」


 直接怒りを向けられていた明日木はとうとう白状した。

 麗はため息を一つつく。


「もう良い。

 元々そんなに怒ってなかったし…映画が楽しみだったのは本当だったから。

 良い機会をくれてありがとう。貴女が付けてくれた照矢君のおかげで、ナンパに絡まれることも無かった。」


「れいちゃん…!」


 おい。俺お前に着いてるアクセサリーじゃねーぞ。

 効果は男避けの加護ってか? 黙れ。


「れいちゃんのそういうところ大好き!」


「チョロいって言いたいなら、今度モヤモヤする本でも紹介するけど。」


「違う違う! 優しいところだよ! チョロいなんて全く思ってないから!」


「……冗談。」


「れいちゃん…自分の冗談分かりづらいって自覚持って…」


「悠菜には良い薬。」


「えー…勘弁してよ…」


 なんか空気になってきたな。

 あ、さっきコーヒー頼んでたんだった。早く席に戻らないと。


「麗、先に席戻ってるぞ。」


「ええ、悠菜も連れて行くから待ってて。」


 明日木参戦!

 ……まあ、佐那との待ち合わせまでの時間が短いから長居できないけど。


「お待たせしました、アイスコーヒー二つです。」


 席に着いて数秒くらいで店員がコーヒーを持ってきた。今度は黒髪の吊り目。ここの店員女子ばっかりだな。

 ……あの、なんで俺睨まれてんの? 目つきが悪いとかじゃなくて割と本気で睨んでるよね。

 もしかしてさっきの(一部が)でかい店員の時マークされた? 俺女の敵扱い? マジすんません。さっきの出来心だったんです。

 …許してくれそうにない。なんなの? あの銀ちゃん大好きなの? レズなの? キマシタワーなの?

 あ、読心術をお持ちでない? 案ずるな俺もだ。え? 同じにするな? ごめんなさい。


「……どうしたの? さっきからその人と見つめ合って。タイプ?」


「いや、腹の探り合いで会話してただけだ。」


「なんで当たり前みたいにお互い心読めるの…?」


「心を読んだんじゃない。腹の探り合いだ。具体的には視線とか表情とかその辺であの店員の言いたいことを察してだな…

 あれ? もしかして空気読む技能準二級持ってないの? 君それでも日本人?」


「私もれいちゃんも正真正銘純粋な日本人だよ!」


 あっちの外国人っぽい男が『ニホンヤベー』とか言ってたけど気にしないでおこう。

 空気読む技能準二級とか存在しないし。準二級で無言会話できるなら一級どんなだろうな。他人の気配とかでも分かるのか? 見えないけど物陰に五人いるぞ! みたいな。


「俺、店員に目を付けられてるみたいだからコーヒー飲んだらさっさと帰る。佐那との約束まで時間が無いしな。」


「…皆寺さんの?」


「ああ、この後佐那からも映画を観に行こうって言われてて…」


 …む?

 なんで明日木の奴あっちゃーみたいな顔してるんだ?

 麗も麗で目つきが険しいような………


「……そう。なら急いで行ったら?

 それ一気飲みしてむせて、盛大に醜態を晒した後にね。」


「…何怒ってるんだ麗? 怖いんだけど。」


 氷点下を超える声色は俺の背筋を這い、凍り付かせる。

 冷房の効き過ぎとかそんなふざけたことを言っている余裕も無い。


「怒ってない。ただ、貴方は一日で二回も、それも別の女とデートする節操無しなんだと思っただけ。」


「で、デートじゃないだろ!? 明日木も(遠目だったけど)来てたし、お前は映画だけが楽しみみたいなこと言ってたし!」


「……そうだけど、気に入らない。」


 おいおいおい、冗談だろ? なんで麗が怒るんだ?

 俺に好意があるとかそんな万に一つも無い可能性が実現したって奇跡か? ある訳無いだろ、妄想も大概にしろ。

 しかしなんでアイツそんなにトゲトゲなオーラを出してるんだ。ハリネズミかよ音速越えるのかよ。


「あ、照矢君!」


「「「!?」」」


 聞き覚えの少ない声が突然耳に入る。

 俺の呼称こそ麗と同じだが、彼女の声ではない。


「………」


「あれ? もしかして忘れちゃった?

 私だよ私! …覚えてない?」


「昨日会ったばっかりだろ!?

 覚えてないわけじゃないけど名前聞いてないし…」


「照矢君、その女の子は…?」


 麗の不機嫌は加速する。減速して。


「私?

 私は愛依めい、照矢君とは昨日図書館で会ったんだ。」


 麗の不機嫌を意に介さず、にこやかに自己紹介。愛依は相当な大物らしい。


「あ、そうだった。

 そう言えば昨日、なんで俺の名前知ってたんだ? 俺自己紹介して無かったはずなんだけど。」


「照矢君、ちょっと前に噂になってたよね。二股男とか、爆弾候補とか、皆そんな感じで言ってたから分かったよ。」


 俺爆弾になる予定ないんだけど。二股男は思いっきり否定したんだけど。


「あー…そうだった、城津君は悪い意味で時の人だったね。」


 悪い意味でってお前…


「じゃあ、どうして貴方はそんな悪名高い男に近付いたの?」


「近付いたって…ただの偶然だから。偶然知り合っただけ。」


「…そう。」


 麗のオーラからトゲが無くなっていく。

 どうやら愛依が言ったことを信じてくれたらしい。


「…城津君、もしかしてモテ期? 今の、完全に修羅場だったよね…」


「…そうだったかもしれないけどさ。」


 確かにそう見えなくもない。まるで主人公のような気分を味わったが、認めて良いのだろうか。


「言っておくけど、この男は狙わない方が良い。

 大してイケメンと言うわけでもないし、性格もそんなに良くない。あと、頑張らなくて良いところで必死になって、見ててヒヤヒヤさせてくるし…」


「好きなんだね、照矢君のこと。」


「そうじゃない。知りたくなかったのに知っただけ。

 一応、恩義は感じるけど。」


 恩義を感じてる人間への言い種じゃないと思うんだが。


「ちょっと妬けちゃうなぁ…」


 あ、ちょっと麗ちゃんを刺激しないで。目付き悪くなってきてるよ。

 そういう方面でからかわれるとマジギレしかねないからこの人。その手の冗談通じないから。


「さて、これ以上楽しそうなデートを邪魔するわけには行かないし、退散するかな。」


 麗の雷雲を察知したからか、愛依は戯言を残して去って行った。逃げるくらいなら煽らなきゃいいのに。


「そもそもなんで来たの? さっきの女。」


 本当にな。

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