エピローグ
毎回読んで下さって有難う御座います♪
とうとう最終話になってしまいました。ちょっと寂しいものですね。
翌日、神様に言われた通り僕達は弁護士さんの元を訪れました。
「こんにちは〜」
「こんにちにゃん♪」
「やあ、よく来たね。君達が来るのを待っていたんだよ。……いやー、永住許可を取得するのに手間が掛かってしまってね。全くお役所というところは頭が固くて困ったものだよ、ははっ」
「……はいっ?」
「……ふにゃあ?」
思わずミュウと見合わせてしまいました。永住許可? ……そもそもミュウは存在しない架空の人物な訳で、そんなの取れるはずがありません。
「ああ、済まない。子供の君にこんな話をしても分からないな。……簡単に言うとミュウさんは優斗君と同じ住所になったという事さ。ほら、ここに住民票もあるから見てごらん」
「ほ、ほんとだ……」
住民票には僕の家の住所にミュウの名前が記載されていました。
「で、でも……外国の人は審査が厳しいって……」
「ほう? 優斗君は小さいのに難しい事を知っているな。……確かに幾つかの条件があり、それに当てはまらなければならない。だけどミュウさんはその条件をクリアしている。先ず、人柄の良さ。ミュウさんはとても素直で明るい性格をしている。話をしていて好感が持てるよ」
「ふにゃあ〜そんなに褒められたら照れるにゃん♪」
褒められたのが余程嬉しかったのか、ミュウは身体をくねらせて喜びを表現していました。……ネコミミと尻尾の名残でしょうか?
「はっはっは、その純粋なところがミュウさんの魅力の1つだよ。……私の娘もこのくらい素直ならよかったのだが、最近反抗的でね……困ったものだよ」
ふむ、弁護士さんの家庭も色々事情があるみたいです。みんな、苦労しているんですね。
「……話が逸れてしまったので元に戻そう。二つ目の条件は、資産あるいは技能を持っている事。……分かりやすく説明するとお金持ちか、仕事でお金を稼げる力があるか、という事だ。ミュウさんはハウスキーパーの資格を持っているから、この条件もクリアだ。……この二つの条件を満たしているので、審査を通ったのさ」
あれっ、話を聞いているうちに違和感が……これってもしかして……
「ねぇ、弁護士さん。ミュウのお母さんはなんと言っているんですか? ミュウが日本で暮らす事に反対しなかったんですか?」
「ああ、ミュウさんのお母さんも事故の話を聞いてとても驚かれていた。だから娘の意見を尊重したいそうだ。……優斗君の事を気にしていたよ」
やっぱり……ミュウのお母さんなんて居ないはずなのに……神様はこの事を言っていたんですね……
「そうですか……僕は大丈夫だと伝えて下さい。……それと、弁護士さんの言いたい事が分かりました。ミュウをハウスキーパーとして雇って、僕のお世話をするために住所を変更させた……一石二鳥な案ですね」
「その通り! これで君の親戚連中は口を出せない。ミュウさんが優斗君のお世話をしてくれるのだからね。……資産管理の方は代理人である私の仕事だから心配しなくていい。見舞金からミュウさんの給料に当てれば良いのだから。それと賠償額はかなりの金額になるから、君が大人になるまでお金に困る事はないだろう」
「弁護士さん! 何から何まで……本当に有難う御座いました!」
「……はにゃ? ……二人とも言ってる事がさっぱりにゃん……」
どうやらミュウには理解出来なかった様です。当然ですね、僕だって半分信じられませんから。
「日本の法律はややこしいのさ。後で優斗君に説明してもらうといい。……それにしても優斗君! 君は実に賢い! 将来は弁護士を目指したらどうかね? 君は有望な人材だ、もし良かったら私が推薦するよ?」
「あははっ、もう少し大きくなってから考えます。……それでは僕達はこれで失礼しますね」
「おっと、長い事話し込んでしまって申し訳なかったね。二人とも姉弟仲良く暮らしたまえ。はっはっは!」
「有難う御座いました!」
「……有難うにゃん?」
まだ首を傾げているミュウを連れて、僕達は事務所を立ち去りました。
…………
「ご主人様、どういう事にゃん? 何が起こっているのかミュウにはさっぱりにゃん?」
自宅への帰り道、ミュウが疑問をぶつけて来ました。僕も全てを理解した訳ではありませんが、説明したいと思います。……奇跡のお話を……
「え〜とね、多分なんだけど、神様が言っていたクリスマスプレゼントってこの事だと思うんだ」
「どういうことにゃん?」
「うん、さっきの弁護士さんとのやり取りで気が付いたんだけど、どうやらミュウは現実に存在している事になっているみたい」
「にゃんと!?」
ミュウの髪の毛が逆立ちました。まだ猫の習性が抜けきれていないみたいです。……他人に見られると問題ですから早く止めさせないと……
「つまり、これからは誰の目を気にする事なく自由に過ごせるってことさ」
「うにゃあ!? じゃあこれからはご主人様と好きなだけデートが出来るにゃん♪」
「で、デート〜!?」
デートって恋人同士が一緒に遊びに行く事ですよね? 駄目です……意識したら顔が暑くなって来ました……
「にゃはっ♪ ご主人様照れてるにゃん♪ とっても可愛いにゃん♪」
「う、うるさいな〜! 僕は照れてなんていないよ! 良いよ! デートでも何でもしてあげるよ!」
「本当にゃん? ミュウ、遊園地とか動物園とか……うにゅ〜、一杯ありすぎて選べないにゃん♪」
「全部行けば良いんだよ。時間はたっぷり有るし……僕達の人生は今、始まったばかりなんだから……」
「ご主人様……とっても格好良いにゃん♪ ミュウ惚れ直したにゃん♪」
ミュウは背後から僕を抱き締めて、腕を首に絡めて来ました。
「……ミュウ……重いよ」
「はいにゃ♪ ミュウはとっても重いにゃん♪ でも御主人様はミュウの面倒をみる責任があるにゃん♪」
頬を擦り合わされて、自然に顔が綻んでしまいます。……きっとミュウも同じ表情をしているのでしょう。
「ミュウも僕に恩返ししてくれるんでしょ〜?」
「勿論にゃん♪ ミュウ、一生懸命ご奉仕するにゃん♪」
「……ありがとうね」
……本当はもう十分過ぎるぐらい恩返ししてもらったけど……これからは恩返しの関係を卒業して、お互いに愛情を交換出来る様になりたいな……
【イラスト:へるにゃー WEBSITE:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/】
「……めでたし、めでたしっと。どうだった? 面白かったかしら?」
「うん、すごくすてきなおはなしだったよー」
「それは良かったわね♪」
「ママー、あのふたりはこのあとどうなったのかなー?」
「うふふっ♪ そうねぇ……ずーっと仲良く幸せに暮らしたんじゃないかしらねー」
「そっかー、ふたりともしあわせになれてよかったね」
「ええ、ママもそう思うわ」
「……ねぇ、ママー。うちのみけもおんがえししてくれるかなー?」
「どうかしらねぇ? ふふっ、ミケに聞いみたら?」
「うん、そうするー。……みけー、わたしのことばわかるー?」
「みゅ~♪」
おしまい
猫の恩返し、如何だったでしょうか?
私なりの解釈で童話を書いてみたのですが、皆さんに私の描きたかったものが伝わっていたら嬉しいです♪
改めて、最後までお付き合いして下さって有難う御座いました~♪