第7話~明かされる真実と奇跡の物語~
毎回読んで下さって有難う御座います♪
今回はかなりシリアスです。苦手な人は注意して下さいね。
「ご主人様〜洗濯終わったにゃん♪」
「ご苦労様〜」
「お風呂も洗っておいたにゃん♪ タイルとマットがぬるぬるしてたからついでに磨いたにゃん♪」
「……あ、ありがとうね」
……食事が終わってからもミュウの活躍は留まる事を知りません。かつて19世紀にイギリスで実在したという本物のメイドさんみたいです。
「ご主人様〜ミュウは夕飯の買い物に行って来るにゃん♪」
「あっ、僕も一緒に行くよ! ……ミュウ1人じゃ心配だからね」
「にゃう♪ ご主人様とお出掛け楽しみにゃん♪」
……咄嗟に言葉が出てしまいました……
ミュウが心配なのは本当ですが、何故か僕自身も不安な気持ちになって……よく分かりません。
「ご主人様、早くしないとミュウ置いてっちゃうにゃん」
「ああ、ごめんごめん。直ぐに用意するから」
……僕は急いで上着を着て、ミュウを追いかけました……
…………
「にゃん♪ にゃん♪ にゃん♪ にゃにゃん♪」
「えへへっ♪」
僕とミュウは仲良く手を繋ぎながらスーパーに向かいました。
ミュウはとても上機嫌で、時々腕をぶんぶんと振っています。僕も二人で歩くのは久しぶりなので、一緒にはしゃぎました。……すれ違う人達から白い目で見られますが全く気にしません。どうせ僕達の事など何1つ知らないのですから……
お散歩気分でスーパーに着いた僕達は夕飯をどうするか考えていました。
「優斗さん、何が食べたいにゃん?」
「う〜ん、そうだね〜……ハンバーグが良いかな〜」
「それなら合挽き肉と玉ねぎを買うにゃん」
お肉を買うために移動していたら、途中で店員のお姉さんを見つけたので声を掛ける事にしました。
「お姉さ〜ん、こんばんは〜」
「あら、優斗ちゃんこんばんは。……そちらの可愛い格好した女の子は誰かしら? うふふっ♪ もしかしてガールフレンドかしら?」
「ち、違いますよ! この人は弁護士さんが紹介してくれた、ハウスキーパーのミュシャ・マーガレットさんです。イギリスから日本に留学しているそうです。……お姉さんくれぐれも内密にお願いします」
「ふふっ、分かっているわ。優斗ちゃんを困らせる事はしないわよ。……昨日は子猫ちゃんで、今日は可愛い女の子……一度に二人も家族が増えて良かったわね♪」
「はい! 賑やかになってとても嬉しいです!」
その後、挨拶をしてお姉さんと別れました。ガールフレンドって言われてどきどきしたのは何故でしょう?
……ちなみにミュシャと紹介したのは、昨日ミュウの名前を話していたからです。僕の事を優斗と呼ばせているのも、人前でご主人様はさすがに普通ではない(メイド服とネコミミもありますし)ので、予めミュウにお願いしておきました。
「にゃにゃ、優斗さん。あのお姉さんは誰なのにゃ? やけに親しそうにゃん?」
「んっ? あの人の事は僕も詳しく知らないんだけど、お母さんの知り合いみたいだよ。生前楽しそうにお話していたのを見た事があるから」
「にゃるほど……優斗さんに優しくしてくれるのは、血が繋がっていない人ばかりにゃん」
「あっ……そうかも」
ミュウに言われて気が付きました。弁護士さん、学校の先生達、店員のお姉さん……みんな他人です。
……血縁関係よりも赤の他人の方が面倒を見てくれるなんて……皮肉なものですね。
「さぁ、さっさと帰ろうか? 日も暮れて来たしね」
「そうするにゃん♪ ミュウお腹ぺこぺこにゃん♪」
「あははっ♪ ミュウは食いしん坊さんだね〜」
「にゃにゃ! 違うにゃん! お昼ご飯が早かったからにゃん!」
「はいはい、そうだね♪」
僕達は、帰りも仲良く手を繋いで楽しくお喋りをしました。
…………
晩ごはんを食べて、お風呂に入って(ミュウが一緒に入りたがりましたが頑なに拒否をしました)今は二人で布団に入っています。
「この2日間、何だか凄い色んな事があったね〜」
「ミュウもそう思うにゃん♪ ご主人様に恩返しが出来て良かったにゃん♪」
「え〜、もう恩返しは終わりなの〜?」
「とんでもないにゃん! ミュウはこれからもご主人様にご奉仕するにゃん♪」
「えへへっ♪ ミュウ可愛い♪」
僕はミュウの身体をぎゅ〜っと抱き締めました。柔らかくて暖かくて……何だか心の中まで包まれているみたいです。
「ミュウ……おやすみ」
「ご主人様……おやすみだにゃん♪」
……僕は優しさに包まれて眠りに就きました……
…………
弁護士さんのおかげでミュウは晴れてハウスキーパーとして認めてもらって、僕達は楽しい日々を過ごしました。
ミュウの正体が気付かれるのを避けるために極力外出は控えていましたが、僕はミュウと一緒に居られる事にとても充実感を味わっていました。うまく言葉で表現出来ないのですが……胸がどきどきして心がぽわぽわする……そんな、不思議でとても居心地が良いものでした。
そして今日は12月25日……クリスマスです。部屋をチュールとポンポンで飾り付けて、クリスマスツリーも置いて、テーブルの上には定番の骨付きチキンと豪華な料理。中央には大きなホールケーキが置いてあって準備万端です。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマスだにゃん♪」
僕達はグラスを重ねてシャンパン(勿論アルコールが入っていないものです)を口にしました。甘酸っぱくてちょっとだけ大人の気分……
「初めてミュウと出逢ってから今日でちょうど2週間だね」
「あっという間だったにゃん♪ ミュウ、ご主人様に出逢えて本当に……あっ!? ううっ!!」
「えっ!? ミュウ! どうしたの!?」
突然ミュウが苦しみ出して椅子から崩れ落ちてしまいました! 慌てて駆け寄って抱き起こすと顔が真っ青です。
「ご主人様……ごめんにゃん……ミュウ……もう時間切れみたいにゃん……」
「時間切れって……何? どういう事なのさ!!」
「ミュウ……神様にお願いした時に……言われたにゃん……代償が……必要って……」
「代償? あっ!? ミュウ? ミュウったら! お願いだから返事をしてよ!!」
ミュウの身体から力が抜けて、絡めていた指が僕から離れてことんと床に音を立てました。
「な、何これ……なんなんだよー!! どうしてこんな事に……訳分かんないよー!!」
僕はミュウの身体を床に横たえて泣き叫びました。
「……いったい……何が起きて……はっ! そ、そうだ! 神様だ!!」
ミュウは最後に神様の事を話していました。……時間切れ……お願いの代償……意味は分かりませんが……
「ねぇっ! 神様! 聞こえてるんでしょ? ミュウに何が起こったのか僕に教えてよー!!」
ありったけの声で叫びました。すると突然僕の周りの空間が歪み出して、丸い光の玉が現れました。そして、その光の玉は徐々に人の姿へと変化していきました。
「あ、貴方が神様ですか?」
「人の子よ……その通りです……私は貴方達から神と呼ばれる存在です……」
「だ、だったら教えて下さい! ミュウに何が起きたのかを……ミュウを人間にしてくれたのも神様ですよね?」
神様はミュウを見やると僕に語り掛けて来ました。
「確かにその娘を人間にしたのは私です……貴方に恩返しがしたいと願い出たので……それに相応しい姿へと変化させました……代償と引き換えに……」
「そ、それです! 代償って一体何なんですか?」
「代償とは願いを叶える代わりに失うもの……高度な願いになるほど代償は高くつきます……」
「ミュウは! ミュウの代償は何だったんですか?」
「その娘は猫から人間に姿を変えたのですから……代償は高くつきました……2週間程度の寿命……自らが望んだ事です……」
「……そんな事って」
……ミュウは人間になった時の事を曖昧に説明していました。最後も時間切れと……本当の事を隠していたのですね……
「その娘は貴方が助けなければあのまま死んでいました……恩返しが出来て本望でしょう……」
「……ミュウ」
ミュウの頬はまだ暖かくて、今直ぐにでも目を覚ましそうです。
「……だったら……神様お願いします! ミュウを生き返らせて下さい! 僕はもうこれ以上大切な人を失いたくないんです!」
せっかく新しい家族に出逢えたのに……また一人に戻るのは嫌です。
「……分かりました……しかし、死んだ人間を蘇らせるのには相当の代償が必要です……最悪貴方の命と引き換えになるかも知れません……それでも宜しいですか?」
「ぼ、僕の命? ……分かりました、ミュウが生き返るのなら……い、いや! 駄目です! 僕の命を渡す訳にはいきません!」
「ほう? ……やはり自分の命は惜しいですか?」
「違います! ミュウを助けるためだったら命なんて惜しくない! でも、ミュウが生き返った時に僕が居なかったら、ミュウは一人ぼっちになってしまう。……それではミュウを見捨てた事と変わらない。そんな無責任な事は出来ません! その代わり、何でも差し上げます! 腕でも脚でも自由に持っていって構わないですから……お願いします。ミュウを助けて下さい……」
……最後の方は涙声になってしまいましたが精一杯の想いを伝えました。
「……人の子よ貴方の想いは分かりました……願いを叶えましょう……覚悟は宜しいですか?」
「はい!」
僕は元気よく答えました。元々失うものなどないので、怖くなんてありません。
「……それではいきますよ……」
神様の身体から光が溢れ出して、部屋を金色に染め上げていきます。僕はミュウの身体が強く抱き締めて祈りました。
するとミュウが身体をびくっと震わせて目を開けました!
「ミュウ! 大丈夫! 僕の事が分かる!?」
「……はにゃ? ミュウ何で生きてるにゃん?」
「ああ……良かった……ミュウの馬鹿! ずっと一緒に居るって約束したでしょ! 勝手にに死んじゃったら僕怒るよ!」
「……ごめんなさいにゃん……ミュウ、謝るから泣かないでほしいにゃん……」
「泣くに決まってるでしょ! 愛する人が死んじゃったら悲しいんだから」
頬を伝って流れ落ちる涙を、ミュウは指先で優しく拭ってくれました。頬に触れる温もりがミュウが生きてる事を証明させてくれて、僕を安心させてくれます。
「……人の子よ……貴方の代償はその娘を責任を持って守る事……」
「それは一体……あっ!?」
神様がミュウに指差すとネコミミが消えて人間の耳になりました! ……尻尾も無くなっています!
「……その娘を独りにしたくないのでしょう? ……ならば責任を持って生涯面倒をみること……とても重い代償ですよ」
……確かにミュウはこの世に存在していない人間です。いつまでも嘘で誤魔化しきれるはずがありません……
「……大丈夫です! 例え何があろうとも、ミュウは僕が護ります!」
「人の子よ……良い目をしていますね……気に入りました……明日貴方の最も信頼のおける人物に会いなさい……私からのクリスマスプレゼントです……」
「……それはどういう意味ですか?」
「会えば分かります……それともう1つ……その娘の魂は貴方の姉の魂が転生したものです……魂は本来来世に転生するもの……何故その娘に宿ったのか……余程貴方の事が心配だったのかも知れません……いずれにせよ……その姉の魂が貴方達を引き合わせたのでしょう……」
「……美優お姉ちゃんの魂がミュウの中に?」
僕の中で全ての歯車が噛み合いました。……姉が亡くなったのは3ヶ月前……ミュウも拾った時は生後3ヶ月の子猫。
そして人間の姿になった時の行動……ミュウは無意識だったみたいですが、姉の魂が全て教えてくれていたんですね。
「人の子よ……貴方はとても純粋な心の持ち主ですね……貴方のような人間が多ければ……醜い争い等……起きないのでしょうね……」
神様は光を残しながら僕達の前から姿を消しました。……最後に少しだけ微笑んでいた様に見えました。
「……ミュウ……僕のとても大切な……愛する人……もう、勝手に居なくなっちゃ駄目だよ?」
「……ご主人様……ごめんにゃん……ミュウはもう……絶対に、ご主人様から離れないにゃん……」
……クリスマスの夜……僕とミュウは誓いの口づけを交わしました……
最後まで読んで下さって有難う御座いました~♪
次回でこのお話は終わりです。
どうぞ最後までお付き合いお願いします♪




