第5話~お姉ちゃんと僕~
毎回読んで下さって有難う御座います♪
今回はお話の都合でちょっぴり短めです。
「……ご主人様? 何処に行くにゃん?」
「まあまあ、行けば分かるって」
僕はミュウと手を繋いで階段を上っています。目指しているのは二階の一番奥の部屋……
(……お姉ちゃんのお部屋に行くの久し振りだなぁ……)
あの日以来、僕は一度も姉の部屋を訪れていません……姉がもうこの世に居ない現実を受け入れられなかったから……姉が部屋から出て来て「優君おはよ〜」って挨拶をしてくれるまで、部屋に行くつもりはありませんでした。でも……
「……ここは、お姉様のお部屋にゃん」
「うん、ここに解決の糸口があるんだ」
――こんこん
「お姉ちゃん、優斗だけど入って良い?」
「……にゃん?」
「……あっ、しまった……いつもの癖で……あはは、恥ずかしいなぁ……」
「……ご主人さまぁ……」
ミュウは今にも泣き出しそうな表情をして、僕の服を掴んでいます。
(しまった〜、余計な心配させちゃった)
「あ〜、ごほん……やり直し……そ、それじゃあ開けるね〜」
僕は意を決してドアノブを捻りました。
がちゃっという音とともに開かれるドア……そこには3ヶ月前と同じ空間がありました。
「……うん、やっぱり大丈夫だった……」
「なんの事にゃ?」
「何でもないよ……目的の物を探すからミュウはベッドにでも座ってて……ああ、定期的に掃除してもらっているからほこりとかは無いと思うよ」
「分かったにゃん♪」
……ようやく姉の死を受け入れる事が出来たみたいです。勿論ミュウのおかげです……彼女が居なかったら部屋には入れなかったでしょう。その理由は多分この後明らかになると思います……
「え〜っと、何処にあるのかな……」
姉のクローゼットを開けて目的の物を探します。
「……まさか、クリーニングに出したまま、って事はないと思いたいけど……あった♪」
僕はハンガーごと目的の物を取り出して、クリーニングの袋を外してからミュウに見せました。
「ミュウ、これなんだか分かる?」
「にゃっ? フリフリが一杯付いてるにゃん……んにゃ! 分かったにゃん。それはメイド服にゃん♪」
……へぇ、こんなマニアックな服を知っているなんて……ミュウの知識の高さは雑学にも及んでいる様ですね。
「そう、お姉ちゃんはコスプレが趣味だったんだよ。だからクローゼットの中はそう言う服が一杯なんだよ」
「にゃるほど……でもこの服可愛いにゃん。ご主人様、着ても良いにゃん?」
「勿論良いよ。はい、どうぞ」
メイド服を渡すとミュウは早速着替え始めました。僕は素早く身体を回れ右……まぁ、今までのやり取りでミュウの行動は想像がつきますからね……
「……ご主人様、着替え終わったにゃん♪」
「おっ、早いね」
(メイド服って意外に着るのは大変なのに……お姉ちゃんも初めは背中の紐が上手く結べなくて、僕が手伝っていたのになぁ〜)
「着心地はどう……はぅっ!?」
振り向いた僕は絶句してしまいました。
……クラシックなデザインのメイド服に袖を通したミュウの姿は、イベントでコスプレをしている女の子が飛んで行ってしまうぐらいとても可愛くて似合っていました。白い髪に青色の瞳……かつてイギリスに実在した本物のメイドさんみたいです……
「ご主人、どうしたにゃん?」
「……あっ、うん……ミュウが凄い可愛いから見とれちゃって……」
「本当にゃん? ミュウ可愛いにゃん? ご主人様に褒められて嬉しいにゃん♪」
僕の言葉にネコミミをぴょこぴょこさせて喜ぶミュウ……全く違和感がありません。これなら飾りで通せそうです。尻尾もロングスカートのおかげでしっかり隠せています。腰からふんわりと広がっているタイプなのでミュウもそれほど窮屈には感じないでしょう。
「ふふっ、それじゃあ髪を梳かしてあげるから化粧台の前に座って?」
「はいにゃっ♪」
ミュウはご機嫌な様子で椅子に座りました。僕は化粧台の上からヘアウォーターを手に取って、髪の毛全体に吹きかけていきました。
「……ふにゃん!? ご主人様、冷たいにゃん!」
「ちょっと我慢してて……」
十分に湿らせたところで、今度は手櫛で根元から髪の毛をほぐして整えていきます。
「……ふにゃあ♪ なんだか気持ち良いにゃん♪」
「えへへっ、これ得意なんだよ♪ よくお姉ちゃんにやってあげていたからね〜」
……姉は朝に弱くて寝坊する事も多かったので、髪の毛をセットしてあげるのは僕の日課になっていました。「優君、いつも有難うね〜」って、言ってもらえるのが嬉しくて……毎日楽しかったですね。
「……こんなもんかな?」
髪を整えたところで、ドライヤーで乾かせます。……猫だけにくせ毛かと思っていましたが、意外にもさらさらのストレートヘアでした。
……これならば下手に手を加えるよりも、ヘアミストで前髪を分けてあげるだけで大丈夫そうです……勿論髪を痛めない様にケアをしてあげないといけませんけどね。
「……最後にカチューシャを付けて……出来上がり〜♪」
「にゃあ〜! 凄いにゃん! ミュウの髪の毛さらさらにゃん♪」
ミュウは自分の指の間を零れて落ちる髪に感動しています。僕はミュウの様子に満足しながら、部屋の真ん中にある丸いテーブルの前まで歩いて行きました。
……テーブルの上には一冊のアルバムが置いてあります。僕は正座してそのアルバムを手に取りました。
(……3ヶ月前のあの日から、僕の時間は止まってしまった……)
……事故の当日、1人でお留守番をしていた僕は、今と同じ様に正座をしてこのアルバムを開いていました。……姉はコスプレが好きでした。イベントとかで着るのではなくて、純粋に可愛い服を着れる事が楽しかったみたいです。
……両親が厳しく、他の女の子みたいに自由に遊べなかったので、その反動もあったかも知れません。姉が衣装に着替えて、僕がデジカメで写真を撮ってあげて……その後二人で、これは似合っていた……こっちのはいまいちだった……とか楽しくお話をしました。
……このアルバムは僕と姉の思い出を写真として残していた物です……そして僕がこのアルバムを眺めていた時に事故の一報が届きました……
(……お姉ちゃん……ようやく僕の時間は動き出したよ)
僕はアルバムから写真を一枚取り出して、ミュウの元に持って行きました。
「ミュウ、この写真見て?」
「にゃにゃ、お姉様がミュウと同じ服を着てるにゃん♪」
そう……ミュウに見せた写真にはメイド服の衣装に身を包んだ姉の姿が写っています。……お腹の前で指を組んで、ちょっと気取った感じの雰囲気を出していて……
「えへへっ♪ お姉ちゃんと自分の顔を見比べてごらん?」
「……ふにゃ? ……うにゅ〜う? ……にゃにゃ!? ミュウ! お姉様とお顔がそっくりにゃん!?」
……どうやら気が付いた様ですね。猫目になって、写真と自分を交互に見ています。
「そうなんだよ〜。お姉ちゃんのワンピースを着ていたから、僕が重ねて見ていたのかな〜って思っていたんだけど……こうして髪型を合わせてみるとよく似てるよね〜」
……僕が姉の部屋に入る事が出来た事……止まっていた時間が動き出した理由……それはミュウに姉の面影を感じていたから……そして今、同じ格好をしてもらって確信しました。
「ミュウ、びっくりだにゃん!」
「うん、本当に瓜二つだよね〜。他人とは思えないよ〜」
……これで髪と瞳のいろが黒だったら、姉そのものに見えるでしょう。……ネコミミも外したらですね。
「これなら僕の思い付いた、ミュウをみんなから誤魔化す方法が出来そうだよ〜♪」
「本当にゃん!?」
「うん、これから説明するからちゃんと聞いてね」
「はいにゃ♪」
そして僕は「ミュウ誤魔化し大作戦」の内容を語り始めました……
最後まで読んで下さって有難う御座いました~♪
新米なので、誤字やおかしな表現がありましたらご指摘して頂けると嬉しいです。
それでは、執筆頑張ります!




