第2話~ミュウと仲良く夕食~
前回に引き続き読んで下さって有難う御座います。
童話として、何処までリアルを追求していくか……難しいものですね。
ミュウと一緒に台所まで歩いて行って、冷蔵庫から牛乳を出しました。そして食器棚からお皿を探していたらふと気が付きました。
「……あれ? 子猫に牛乳を与えても大丈夫なのかな……」
動物は人間と違ってデリケートです。だから、ドッグフードやキャットフードが売っている訳で……安易な行動は止めた方が良いかも知れません。
「……みゅう?」
ミュウが不思議そうに僕を見ていました。……そうですね、ちゃんと調べてからこの子に餌をあげる事にしましょう。
「……ミュウ、お腹空いてると思うんだけどちょっと待っててくれないかな? お前の身体に合う食べ物を知らないと後で困るんだ」
「……みゅ〜……みゅう!」
「しょうがないから我慢するって? 有難う、直ぐに調べるからね〜」
僕は走って自分の部屋に行って、勉強机の上に置いてあるノートパソコンを起動させました。
「ミュウ、寒いだろうから僕の布団に入ってて良いよ」
「みゅうみゅう♪」
ミュウは嬉しそうに布団の中に潜って行きました。エアコンをつけていますが、僕とミュウでは身体に感じる温度に差があるかも知れません。
「……さて、ネットで検索っと。キーワードは……う〜ん、取り敢えず、《子猫》《餌》《ミルク》にしてみよう」
指定したキーワードを入力して検索してみると、膨大な量のデータが画面に出て来ました。
「うわっ!? こんなに一杯……」
クリック一つでいろんな情報が一杯……便利だな〜と思いながら、僕は今必要な情報だけを探しました。
「……あった! え〜と、子猫に牛乳は与えないで下さい……あちゃ〜、やっぱり駄目だったんだ〜」
見つけた記事には、子猫に牛乳を与えると下痢などの症状を引き起こす可能性がある事が書かれていました。……牛乳飲ませなくて良かったです……
「……危ないところだった……ふ〜ん、猫用のミルクってあるんだ〜」
僕の知らない事が沢山載っていてとても助かります。どんどん読み漁っていると気になる記事を見つけました。
「……生後3ヶ月になったらミルクからドライフードに切り替える? ……うわぁ、ミュウが産まれてからどのくらい経っているかなんて分からないよ〜」
僕は頭を抱えてしまいました。書き置きには何も書いていなかったから……ただあの元気さを見ると産まれて直ぐという訳ではなさそうですけど……
「……ねぇ、ミュウ〜。お前って生後何ヵ月ぐらいなんだろうね〜?」
「みゅっ!」
何の気なしにミュウに声を掛けてみたら、布団から顔を出しました。……しかも何だか自信がありそう……
「……まさかとは思うけど、ミュウは自分が産まれてからどのくらい経っているのかが分かるの?」
「みゅう!」
……元気の良い鳴き声が返って来ました……物は試しです。僕はミュウに尋ねてみました。
「じゃあ聞くけど……ミュウは生後1ヶ月?」
「……みゅうみゅう……」
……違うみたいです。
「……じゃあ2ヶ月?」
「……みゅうみゅう……」
……これも違うみたいです。……客観的に見ると変なやり取りですね。猫に質問をしているなんて……
「う〜ん……3ヶ月?」
「みゅう♪」
何と!? 3ヶ月の様です! ……合っているのかは分かりませんが……
「……ふむ」
……僕はミュウと出会った時の事を思い出してみました。あの時ミュウはダンボールから飛び出そうとするぐらい元気がありました。……生後間もない子猫だったら、この寒さの中では既に命を落としていたかも知れません……それに家の中でも、僕の腕から飛び降りたり、元気良く走り回ったりしています。……だとすれば、3ヶ月の間ちゃんと世話をしていてくれた前の飼い主に感謝するべきでしょう。……捨てた事には腹が立ちますけどね……
「……よし、じゃあ僕はお買い物に行って来るからミュウは留守番しててね」
「みゅ〜う♪」
分かったと返事をしてミュウは布団の中に潜りました。僕も急いで出掛ける準備をして、家を出ました。
「あっ、雨止んでる」
外に出た僕は、いつの間にか雨が上がっている事に気が付きました。空を見上げると雲の切れ目から真ん丸お月様が顔を覗かせています。
「……おっと、見とれている場合じゃなかった……」
……僕はお月様がほんのり照らしてくれている夜道を走って行きました……
…………
5分ぐらい走ったところで、目的地のスーパーマーケットに着きました。このお店は24時間営業で、食料品以外にも雑貨物やお薬も置いてあります。
「あら、優斗ちゃん。そんなに慌ててどうしたの?」
「あっ、お姉さん! こんばんは」
僕が走ってお店の中に入ると、店員のお姉さんに声を掛けられました。僕はこのお店を毎日の様に利用しているので、店員さんも僕の顔を覚えているみたいです。……最初は万引きすると思われて、凄い監視されていましたけど……
「お姉さん、ペットコーナーは何処ですか?」
「珍しいわね、動物でも飼ったの?」
「はい、生後3ヶ月の子猫です……知り合いに頼まれて引き取りました」
「そう……案内してあげるから付いていらっしゃい」
……嘘を吐きましたが、多分気付かれていると思います。このお姉さんは僕の事情を知っていますから……
「ここがペットコーナーよ」
「お姉さん、ありがとう!」
早速僕は猫用のミルクとシャンプー、ドライフードを手に取って、注意書きを良く読んでからカゴに入れました。後、ペット用の洗剤と陶器で出来た餌皿も落とさない様に注意しながらカゴに入れます。
「あら、随分詳しいわね」
「はい、ちゃんと調べてきましたから」
「優斗ちゃんは偉いわねぇ」
頭を撫でてもらいました。ちょっと恥ずかしいけど嬉しいです。
「ミュウが待っているので僕もう行きます」
「あっ! 優斗ちゃん、ちょっと待って」
レジに行こうとしたらお姉さんに呼び止められました。何かを選んでいる様ですが……
「……ええっと、ああこれが良いわ。はい、優斗ちゃん。子猫ちゃんにつけてあげて」
そう言って、お姉さんが僕に渡してくれた物はチェック柄ピンク色の首輪でした。
「わぁ〜! これ可愛いですね♪ お姉さんありがとう」
「ふふっ♪ 喜んでくれて嬉しいわ。これはお姉さんからのプレゼントよ」
お姉さんは僕の手にそっと500円玉を握らせてくれました。……お姉さんの体温がほんのり残っていて、あったかいです。
「それじゃあ子猫ちゃんに宜しくね」
「はい! ありがとうございました〜」
……お姉さんに手を振って、その場を離れた僕は重要な事を思い出しました。
「……僕の分、買ってないや……」
ミュウの事に気を取られて、すっかり忘れていました。不思議なもので、一度意識してしまったらお腹がグ〜グ〜なって来ました。……簡単な料理なら、自分で作れるのですが、今日はお弁当を買って帰る事にしましょう。
「う〜ん、これで良いや」
……僕は適当にお弁当を見繕って、お店を後にしました……
…………
「ミュウ、ただいま〜」
「みゅっ、みゅっ、みゅう〜♪」
僕が帰って来ると、ミュウが走って出迎えてくれました。律儀な猫です。
「ご飯買って来たよ〜」
「みゅう♪」
台所に行って餌皿を軽く水洗いしてから、ドライフードをお皿に入れました。子猫は一度にたくさんの量を食べられないみたいなので、少な目にしました。
……もしも食べられない様だったら、子猫用のミルクを与えてあげるつもりです。
「さあミュウ。お食べ」
「みゅう!」
元気良く鳴いた後、お皿に近づいてくんくんと匂いを嗅いでぱくぱくっと食べ始めました。僕はドキドキしながらその様子を眺めます。
「どう? 食べられそうかな? ミルクでふやかした方が良いかな?」
「うみゃ〜う♪」
「えっ、美味しいって? それは良かった〜♪」
ドライフードをがつがつと食べるミュウに安心した僕は、冷蔵庫からミネラルウォーターを出しました。
「え〜と……これは軟水だから大丈夫かな。……浄水器付いてないから水道水をあげるのもちょっとね〜」
さっきインターネットで調べた時に見たのですが、硬水に含まれているマグネシウムは猫に良くないらしいです。
僕はもう1つの餌皿にミネラルウォーターを注いで、餌の横に置きました。
「ミュウ、お水ここに置いとくから喉が渇いたら飲んでね」
「みゅうみゅう♪」
「さて、僕もご飯食べよう……」
僕はお弁当を電子レンジで温めて、食卓に着きました。
お弁当の中身は僕の大好きなハンバーグとエビフライです。お肉の良い香りが食欲を掻き立てます。
「う〜ん、美味しそう。それじゃあ、いただきま〜す。……もぐもぐ……んっ?」
ハンバーグを口に運んだところでミュウの視線を感じました。
「なんだいミュウ? ……もしかしてハンバーグ食べたいの? ダメダメ、ミュウが食べたらお腹壊しちゃうよ?」
「みゅっ!? みゅみゅみゅっ、みゅっ、みゅう!」
「……違う、ただ見ていただけだって? あはは、僕には凄い食べたそうに見えたけど?」
「みゅうみゅうみゅう〜!」
「ごめんごめん、謝るからそんなに怒らないでよ〜♪」
……僕はミュウと一緒に楽しい夕食の時間を過ごしました……
最後まで読んで下さって有難う御座いました。
気になったところやおかしな点などありましたらご指摘をお願いします。
それでは、次回も皆様に喜んでもらえる様に執筆頑張ります!