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新撰組 折々の記

近藤勇と犬、土方歳三の懸念

作者: 湯好き御幸
掲載日:2026/01/02

「近藤!何を考えている!」怒声が響き渡る。声を発したのは、土方歳三

瞳は鋭く、冷徹そのもの

近藤は無言で立ち尽くしていた。


「お前、総司が犬の毛に触れると咳が止まらなくなる

獣の毛が合わない体質だと知っているだろう

それなのに、犬をどうするつもりだ!」

近藤の腕の中、小さな犬が尾を振っている

毛の色は白、目は大きい



「犬を捨ててこい。」

土方歳三のその一言に、近藤勇は呆然と立ち尽くした。


あまりにも冷徹で、あまりにも無情な言葉だった。

だが、その目は一切揺るがない。



「……何だと?」近藤は低い声で言った。

その声には、怒りが滲んでいる


土方歳三は、厳しく腕を組み、じっと近藤を見据えた。


 「可愛いとか、そう言う話しじゃねえ、

そいつ 凶器だぞ、 部下の命を危険に晒す」


静かな声でそう言った土方を、近藤は睨みつけた。


「それはお前の考えだろう!」


思わず声が荒くなる。


「俺に言わせれば、命を守るためにできることは他にもある。

だがな、犬を捨てろと言われて、そんな命令に従えるか!

あれも命だ。家族だろう!」


土方歳三は眉をひそめただけで、感情を表に出さなかった。


「……そんな一匹に悩んでいる場合じゃない」


「だからって!」

近藤は拳を握りしめる。


「総司は大事だ。確かに身体は弱い。

だが、咳が出るくらいだろう。

それに、あの犬も家族だ!

どんな理由があっても、家族を捨てるなんてできるか!」


「家族か」


土方は一歩踏み込む。


「総司は命取りになりかねない。

それでもか?」


近藤の胸で子犬は、クンクンと声をあげる

彼は深く息を吸い、その感情を押し込める。


犬は、ただの犬だと思うかもしれない。

だが——。


しばしの沈黙の後、土方は短く言った。


「……お前の気持ちは分かる。

だが、ここは新撰組だ。

感情だけで動くわけにはいかない」


そのとき。


「で、何の話です?」


振り向けば、沖田総司が立っていた。

いつものように、無邪気な笑みを浮かべて。


「総司……」

近藤は言葉を失う。


「大丈夫ですよ。犬くらい」

沖田は軽く肩をすくめる。


「飼わせてあげてください、土方さん。

犬なんて、どこにでもいますし。

新撰組に一匹くらいいても、いいでしょう?」


土方が口を開きかけるのを制して、沖田は続けた。


「それに、犬がいて救われることも多いって聞きます。

特に……こういう仕事をしていると」


少しだけ間を置いて、穏やかに笑う。


「犬の世話係、僕を外してくれれば十分です。

僕はもう子供じゃないし、自分の身は守れますから」


その言葉に、近藤の胸が締めつけられた。


土方は黙って二人を見つめ、やがて低い声で言う。


「……分かった。

だが、総司が苦しむようなことはさせない。

それが、俺の役目だ」


近藤は、ようやく息を吐いた。


その夜、犬は屯所の裏手に繋がれた。


総司の部屋からは、少し離れた場所だ。



「これでいいだろ」


土方はそう言って背を向けた。

近藤は何も言わず、犬の頭を一度だけ撫でた。

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