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最果ての隠者  作者: 眠れる森のおっさん
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学校の隠者

その後もオオカミを狩るレベル上げを続けていた。

魔力が上がったことでファイヤーボールを連発できるようになり、連発することでファイヤーボールの威力が上がる。

レベルが上がることで能力を割り振り、さらに連発できるようになるといった循環で、狩りの効率が上がっていった。

レベルが上がって分かったことだが、他のRPGの例にもれず、敵とのレベル差が少ないほど経験値が上がってくる。

オオカミを狩ってレベルが上がるほど、貰える経験値が高くなっていき、これもレベル上げ効率を高めた。

その間、城門から出てくるプレイヤーキャラはいたものの、出た瞬間にオオカミに狙われ倒されていた。

どうやらプレイヤーキャラに釣られてオオカミやイノシシがだんだんと城門に近づいて行ったようで、城門の前で獲物となるプレイヤーを待っているような状況になった。

城門から出ようとしたところに大量のオオカミがいる状況のせいか、城門から出てくるプレイヤーキャラは次第と減っていった。

早いうちに城門から出ていてよかったと思う反面、城の中には戻れなくなったことへの不安もあった。

ある程度レベルが上がれば普通に通り抜けられるだろうか。


レベルが上がるうちに新しい魔法も使えるようになった。

ファイヤーボールが単体攻撃ということもあり、範囲攻撃ができる魔法フレイムバーストを覚えた。

自分を中心に周囲に炎を起こし敵にダメージを与える。

あと、どうしても逃げなければいけない時のために、ヘイストも覚えた。

移動速度だけではなく、行動全体のスピードアップが可能だった。

精神統一やファイヤーボールの連射速度も上がる。

木から降りていないので、移動速度がどれくらい上がっているかは分からないが、手の動きは早送りのようになり、ファイヤーボールはマシンガンのように打てるようになった。


目覚まし時計が鳴る。

普段はこの音で目を覚ますが、今日は一睡もせずにこの時間を迎えたことを知る。

「これゲームしてると時間が分からなくなるな。気を付けよう。」

システムタブから、ログアウトを選ぶ。

幸い、木の上でもログアウトはできるらしい。


VRゴーグルを取り一息つく。

階下に降りていき、母親が作ってくれた朝食をとる。

目の前に座っている母親が俺の顔を見て小言が飛んでくる。

「あんた、目の下クマができてるわよ?夜更かししたんじゃない?ゲームばっかり熱を入れちゃって。勉強もそれぐらいしてくれればいいのに。」

勉強をしていたかもしれないじゃないかと思いつつも、いそいそと朝食を終え、学校へと向かう。

外に出たとき太陽のまぶしさに目がくらむ。

やはり徹夜の後の太陽は学校へ行く気持ちをへし折りに来ていると思う。

サービス開始が木曜日でよかった。

この金曜日を抜ければ土日があるし、それを糧に一日だけ我慢すればいいのだから。

俺はいつもより重く感じる体を引きずるように学校へ向かった。


学校に着いて、自分の教室の自分のイスに座る。

体が重い。そして朝イチから眠気がすごい。

担任の朝礼の言葉も、1時間目の古文の授業も、眠りの魔法をかけられているのかと思うほどに眠い。

ありがたいのは、教室の後方廊下寄りの机であること、そして目の前が巨体の芦屋という男で、俺が眠っているのを隠してくれることだ。

授業中も休み時間もイビキにだけは気を付けながら、ひたすら睡眠をとる。


休み時間にうつらうつらしている時AQの話題が聞こえてきて耳をそばだてる。

レベルが30になったとか、レベル50の人を見たとか、誰々とフレンド登録したとかギルドを設立したみたいな話題が周りから聞こえてくる。

そういえば俺のレベルはどれくらいだっただろう。レベル上げに夢中になりすぎて、いざどこまで上がったかは思い出せなかった。

まぁ、この辺りの話は他のプレイヤーと関わらずにソロ活動する俺にとっては関係なかったが、王城の北の山はヤバいといった話や、マップの見方の話は今後の冒険の参考になると思って聞いておいた。

家に帰ってAQをプレイするときに試してみよう。


一日中うつらうつらしながら過ごしたが、特に教師からは注意されることはなかった。

芦屋の巨体に感謝しなければなるまい。いつもは黒板が見えないだとか不満ばかり持っていたこともこの際に謝っておこう。

さぁ、家に帰ってAQの続きでもやろう。

しかし、今日も一日、一言も発することがなかった。

一日中突っ伏して寝ていただけで、誰も声をかけようともしないし、こちらから声をかけようとも思わない。

どうにも人と会話するということが苦手だ。

相手の顔色をうかがい、相手に合わせた話題で、特に役に立つわけでもない会話という行動が、不必要に感じている。

そういう性格だからか、学校内では隠者の如く存在感なく、誰にも気づかれないように口を閉ざして、ただそこに座っている。

勉強も体育も平均。モブ中のモブといった存在である。

ただ一つありがたいことは、そんな他人を排除するような生活を送っている俺でも、イジメのようなことには巻き込まれていないことである。

比較的穏やかなクラスメイトに恵まれた。

そんなことを考えながら帰路につく。


今日はどれぐらいレベルを上げようか。

あのオオカミやイノシシの適正レベルはいくらぐらいだろうか。

クラスメイトの会話から王城の北側に行くのは後回しにしよう。

そもそも俺は王城のどの方角に出たんだろうか。家に帰ってマップを見なくては。

せっかく眠い体を引きずって面白くもない学校に一日座っていたんだ。

手に入れた情報は使ってみよう。


家に帰って、宿題を終わらせる。

この宿題というノルマさえこなしておけば、学校の成績は並として生きていける。

そして、友達のいない俺にとっては、宿題を写させてもらう相手がいないため、自力でやらなければならない。

AQはもう一つの世界で生活をしているようで時間を忘れるゲームだということが分かった。

義務は早い段階で果たしておいたほうがいい。

母親の作ってくれた夕食を食べ、シャワーを浴びる。

学校で十分に睡眠もとった。明日の朝食に起きれるように、普段は平日しかかけていない目覚ましを土日にもセットする。

万全の状態だ。


AQを起動する。

前回木の上でログアウトしたが、ログイン時も木の上だろうか。

それともどこか近くの町に戻されるのだろうか。町に戻されたらあの城門は、今日もくぐれるかな。

いや、もっと怖いのはあの場所で木から降りている場合だ。

近くにオオカミやイノシシがいたらすぐにやられてしまう。

デスペナルティはどうなるんだろうか。


ゲーム画面が表示されるまでの間にいろいろ考えを巡らせたが、杞憂に終わった。

ログアウトした場所、青々とした木の葉が目の前に現れる。

木の上からの再開だった。

俺はほっと胸をなでおろす。


幸い、まだこの付近を狩場にしている冒険者はいない。


そういえば、マップを見てみよう。

えっと・・・このボタンか・・・。画面いっぱいにマップが表示される。

マップで急に前が見えなくなり、俺はバランスを崩して一瞬木から落ちそうになった。

あぶない。これは戦闘中に間違って開かないようにしないと。

俺はマップを閉じて、背中を木にもたれかけ、バランスをとってから改めてマップを開いた。

マップはほとんど雲のようなものがかかっており、全体像は見えなかった。

これは自分が行ったところがマッピングされるようになっているのか。

じゃあ俺はどこにいるんだ?この赤いピンが立ってるところか。

その場所の下には王城と同じ形の建物が書かれている。

なるほど。俺は王城の上にいるのか。

ということは北か。なんとなく嫌な予感はしていたが、ヤバいと噂されていた王城の北に出ていた。

そりゃあ敵も強いはずだ。

だがありがたいことに、木の上からのファイヤーボール連発でオオカミは狩れる。

適正レベルがどれくらいかわからないが、いましばらくはここで狩りを続けても問題ないだろう。

俺はマップを閉じて一つ深呼吸をする。

木から落ちないように体制を整えて、オオカミに照準を合わせる。


さぁ、今日もレベル上げを始めよう。


続く

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