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7

 ──死。


 その言葉が頭を過った瞬間だった。


 ドスンっと衝撃が襲った。石畳に叩き付けられる。息が苦しい……というより息が出来ない。


「がはっ!」


 肺に空気を送り込もうと、必死に喘ぐ。


「はあっ、はあっ、はあっ」


 ようやく呼吸が落ち着いた。何が起きたんだ?辺りを見渡すと──骸骨が目の前にいた。


「うあぁぁ───っ!」


 思わず悲鳴を上げた俺の耳元をヒュンと何かが走り抜ける!


「えっ?」


 呆けた俺の頭部目掛けて、骸骨が剣を振り下ろした所だった。


 危機一髪でかわしたらしい。ほっと安堵する暇もない。


 鬼火を灯した眼窩が、暗闇で浮かび上がった。ゆらゆらと動く青紫の炎に合わせて長剣がゆっくり振り上げられる。


 白刃が頭上でギラリと輝き──


「ひっ!」


 殺される!反射的に後退った。足が縺れる。尻餅をついた。


 くそっ!動けよ!早く動け!このままじゃ殺されるぞ!? しかし俺の思いとは裏腹に身体は動いてくれない。


 もう駄目だ……諦観の念に囚われ、半ば無意識に目を瞑ったその時だ。


 ──ギィイィン!!


 うおっ眩しい!硬い物同士がぶつかる音と光が弾け、閉じた瞼を白く染め上げた。


「!?」


 何が起こった!?恐る恐る目を開く。するといつの間にか俺を庇うように、少女が立っていた。頭上では、刃と刃が銀の十字を描き、


「邪魔です!下がって」


 少女が苛立たしげに声を張る。


 助かった?なんで?どうして?頭に疑問符を浮かべたまま、転がるように、少女の横をすり抜ける。間髪入れず、振り返った。少女の背中越しに、暗闇に浮かぶ青紫の鬼火が見える。


 ってか、なんであの化け物と女が斬り結んでるんだ?


 もしかして助けてくれた……のか?


 ……ってかヤバいぞっ!斬り結ぶ刃が骸骨によって徐々に押し込まれ──


 アレの動力は分からんが、女の細腕だ。無理もない。助けるか?でも……


 逡巡する間もない。少女は、押し込まれる力に逆らわず、自ら後方へ跳ぶ。不意に遮る力がなくなり、ブンっと剣が風を切った。骸骨はたたらを踏む。


 目の前で少女が髪をふわりと広げ、石畳に着地する。少女の黒髪が、翼を閉じるように背中を零れ落ちた。


 軽やかで美しい。不覚にも思ってしまった。


 ってそんな場合じゃねえ!体勢を立て直すと、再び骸骨が迫る。鬼気迫る勢いだ。剣を頭上高くに振り上げた。剣先が鈍い光を放つ。


 斬られる!その痛みを想像して、思わず拳にぐっと力が入ってしまう。逃げろ!と叫ぼうとした瞬間。


「──開札オープンスペードの六番:【積木崩つみきくずし】」


 謎の言葉と共に、少女の体が自然と動いていた。


 仄かな燐光に包まれながら、一歩下がる。斬り込む骸骨をふわりと体を開き躱した。同時に剣先をくるりと回す。剣の背側を骸骨の剣の軌道へ斜めにスッと差出した。


 ──ギィイィン!


 硬質な金属音に火花がぱっと飛び散る。衝撃を吸収するや否や、剣に背側に沿って骸骨の剣が滑って行く。間髪入れず、外側へ押し出すように、剣を大きく弾いた。


 上手い!受け流され、剣は石畳に叩きつけられた。めり込む勢いだ。甲高い金属音に空しく火花を散らす。勢い余って骸骨野郎は前のめりだ。体勢を崩してる。


 今だ!俺の心の声が聞こえたように、


「りああぁ!」


 少女は気勢を上げた。腕を頭上でくるりと回しながら、右足を引く。体が開いた。半身だ。


 流れるように、少女は腰を捻りながら、右足で石畳を蹴った。突進力に回転力そして腕力が剣に乗る。


 流星のように、銀光が斜めに降り注ぎ、


「ルオォォーン!」


 骸骨野郎が断末魔を奏でた。左肩から右腰まで分断される。一瞬遅れて、ずれながら崩れ落ちた。


 すげえ威力だ。体を粉砕され、骨がバラバラにぶち撒けられた。石畳を転がる。乾いた音を辺りに響かせた。谺する反響音がドンドン小さくなっていく。

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