１ これが私と相棒の出会い
先にも述べたが、私には薄っすらと前世の記憶があった。大した人生ではなくて、それでも安定はしていて不満も無かった。そんな私が何で転生したのか分からない。
新しい人生はハードで、私は孤児だった。両親から捨てられたのか、はぐれたのか誘拐されたのかも知らない。だから私は自分の正確な年齢も分からなくて、およそ十八歳としている。
私が居る王国は一年中、夏のような気候で、森の奥で暮らす女性狩猟民族に私は育てられて。気候のせいもあって、誰もが水着のような服装で、今も私はビキニアーマーで生活している。
十五歳の時、森の奥で暮らす事に飽きた私は武者修行の旅を始めて、王国のあちこちを歩き廻った。中世ヨーロッパ風というのか、ファンタジー世界の剣術道場を荒らし回って。負けた事は無くて、身長は前世の単位で一八〇センチを越えた。
私には異種族の血が混じっているのかも知れない。ボディビルダーのような筋骨隆々の体で、勝ち続けた私が悟ったのは、女の身では武芸者として認められないという現実だった。
有名になれば、いつか両親が名乗り出てくれる。そう思っていた私の挫折である。気を腐らせた私は酒場で呑んだくれていた。この世界では十代から飲酒ができる。今の相棒が声を掛けてきたのは、つい最近の事だった。
「相席して、いいかしら？」
「……好きにしろよ」
テーブル席で一人、呑んでいた私に、恐れ気もなく女が近づいて着席した。年齢は分からなくて、今も知らない。魔法使いという奴は魔力で若さを維持できるらしい。だから正確な年齢に意味は無いのだろう、自分の年齢も知らない私が相手の年を尋ねるのもおかしい。
「急に声を掛けて、ごめんなさいね。何だか貴女が、可愛らしい顔で座ってたから」
そう言われて、何と答えたかは酔っていて覚えてない。後から考えると、これは私を気遣った表現だったのだろう。きっと私は寂しそうな表情で居たのだ。
その翌日以降も、同じように私は彼女から話しかけられては、相席を申し込まれて。私は拒まなくて、会うたびに『胸が大きいなぁ、コイツ』と思っていた。ローブの上からでも分かるほどの膨らみで、身長は一七〇センチ程度。黒の長髪は真っ直ぐに肩を越えて伸びて、私の金髪である癖毛とは対照的だ。
いつしか私は、彼女から誘われて冒険者ギルドに登録していた。巨乳の魔法使いは私の相棒となって、二人で小さな依頼を引き受け、解決しては謝礼を折半。酒場で私はビールっぽい飲み物、相棒はワインで乾杯。そのまま酒場の二階にある宿屋で、部屋を取って同じベッドで眠る。寝起きを共にできる存在が居る、という状態は悪くなかった。
「何で、あたしを相棒に選んだんだ」と尋ねると、「理由を挙げれば色々よ、男と組むのは面倒だったし。一番、一緒に居たいと思える存在が貴女だったの。相棒って、そういうものでしょ？」
曖昧な説明だ。上手い事を言って人を利用してるだけじゃないのかと私は疑って、それでもいいから傍に居続けてほしいとも思い続けていた。
