セピアの街と骨董品
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳ございません。
あとがきお気をつけて。
セピアの匂いが吸いたくて、夕焼けの街を訪れました。此処は昼であろうと、夜であろうと、橙の光が灯る街。とっても素敵な黄昏の街。
私は上機嫌でその商店街を練り歩きます。どうやら今日は特別な日のようです。軒を連ねる瓦屋根に混じって、蚤の市が開催されてました。並ぶ壺、西洋人形、仏像。何年も時代を積み重ねて来た骨董品が、ちょこんと座って此方を見ています。
古きものに興味は無いのか、と聞かれれば私はこう答えるでしょう。『興味しかありません。寧ろ部屋中埋めつくして、毎日愛でたいくらいです』と。
……ですがまぁ、お金の掛かる趣味なのです。購入の代金も、毎日の手入れも、尋常ではない労力が掛かります。一介の小娘が手を出して良い趣味では……残念ながらないのです。だから大変失礼ながら、博物館にお邪魔して、その欲求を満たす毎日です。
そんな時代が交差した道成を、ふらりと歩いていた時のことです。ある一つの物品を発見致しました。小さな蝶の模型。羽根の模様一つ一つに、大小様々な歯車が埋め込まれて居ます。そして色彩はこの空気を凝縮したようなセピア色。私は思わず足を止めて凝視してしまいます。
「それに興味があるのかい? 嬢ちゃん」
「はっ……。はい。すみません」
思わず顔を上げると、店主様と思しき方が此方をじっと見詰めていました。外見年齢、凡そ二十歳前半。丸眼鏡から覗く思慮深い眼光は、まだ若いながらも、彼がこの道の玄人である事を示しています。
思わず固まる私に、彼は僅かに口角を上げて、そっと摘み上げました。この夕暮れの光に翳す様に、手首をねじって回転させると、すっと此方に差し出します。
「安くしとくよ。五百円。要らないなら別の機会にでも。どうだい?」
「買います」
思わず即答しました。此処まで精巧な物を、破格の値段で取引出来るまたとない機会です。私は財布から黙って五百円を取り出すと、そっと店主様の掌に載せました。変わりに彼からは蝶の小物を受け取ります。
手に取って見つめて分かったこと。本当に精巧。一つの硬貨で買えるような代物ではありません。本当に宜しいのでしょうか?
「ん、今は君の元に行きたがってたからね。出来ればタダであげたかったけど、此方も商売だ。お金は戴いたよ。手放す時が来るその時まで、大切に愛でてくれ」
「……有難う御座います……!!」
戴いた蝶々をそっと胸に抱え込むと、セピアの香りが胸いっぱいに広がります。あぁ、本当に素敵な夕暮れの街。
こんな店主居たら通います。(断言)
タメ語なのは、人外さんだったら楽しいから。
あとお嬢さん、嬢ちゃん呼びが、訳あって好きだから。(推しのお陰)
セピアの街って書いてありますが、現実にあります。
モデルとなった所は名前からしてドストライクです。
他にも極彩色、若草等々、ぼかして書くと思います。